クマの住処で働く③山でクマにあったら
連日のようにニュースでクマによる事故を目にするようになっている最近。
このシリーズも話も安易に書けないなぁとも思ったのですが、
こういう時だからこそ、クマのことを取り上げて
関心を持ってもらうことも意味があるのかもしれない、ということで引き続き。
前回の記事はこちらから↓
ここで書くのは大雪山におけるクマの話であって、
最近の人里に出てくるクマの話とは事情が異なることはご承知おきください。
人里に出てくるクマは山に住むクマと異なり、
人を恐れない異常個体です。
(このまま人馴れが進めば、近いうちに異常ではなく「通常」になるかもしれませんが…)
人里のクマについては以下の本が参考になりますのでよろしければ↓
それでは今回はヒグマセンターでお伝えしていた実際に山でクマに会ったら
山でクマに出会ったらとにかく落ち着いて行動することが基本です。
なかなかその恐怖感から落ち着いて行動するのも難しいとは思うのですが、
慌てて行動するとかえってクマがびっくりして、襲われる可能性が高くなります。
クマも基本的には人間に会いたくないんです。
慌てた際にしがちなNG行為2点↓
走って逃げる→ ×
クマは背を向けたり、素早く動くものに注意がいき追いかけてくるので、
背を向けて逃げるのはやめましょう。
そしてクマは時速50〜60kmくらいで走ることができます。人が走って逃げ切ることはほぼ不可能です。
大きな声を出す→×△
大雪山のヒグマセンターにおいては、
クマを見ても大きな声を上げることはNGとしていました。
とりわけ突発的な遭遇においては、
人のみならず、クマもびっくりしています。
そこにさらに相手が大声を上げることで、
クマにストレスがかかって、
防衛本能から攻撃にうつる可能性が高くなるからです。
ただし、こちらに対して明らかに興味を示して近寄ってきている、あるいは捕食目的の場合は声をあげて威嚇する効果があることもあります。
大雪山においてはヒグマによる死亡事故が1949年の事故以降起きていないことから、
人間を捕食対象として考えているクマは
ほとんどいないと思われます。
そのため基本は声を上げないように、と伝えています。
それから山でも街でも、
同様に危険な行為が
子グマに近づく
子グマの近くには必ず母グマがいると言われています。
クマは母性の象徴とも言われるほど、
子ども思いです。
(ちなみに父グマは子グマと行動はしません)
子グマの近くに母グマがいない、
ということはほとんどありません。
子グマは警戒心が薄いため人間に近づいてくることもあります。
その場合は子どもを守るために母グマが攻撃してくることが多いです。
ヒグマセンターで聞く話でも、
登山者がヒグマから威嚇されたケースでは
母グマから威嚇されたものがほとんど。
子グマはとても可愛いのですが、出会ってしまった際は速やかに距離をとるようにしましょう。
どううしても子グマが見たい方は全国の動物園やクマ牧場に行くか、旭山動物園のすなすけの動画をおたのしみください。
続いてクマと私たちの距離によっても対処は異なります。
100mくらい離れていれば様子を見ながら離れます。
クマが近づいてきた時、
こちらに気がついていない場合については音を出してクマに気づいてもらうことも必要です。
山にいるほとんどのクマは人に会いたくはありませんので、
人の接近に気がついたら離れるか、
そもそも人がいる登山道には姿を現さないのがほとんどです。
距離が近い場合、50mを切るような場合では
最初にあげたように落ち着いてゆっくりクマとの距離を取るようにします。
クマも人間に会ってびっくりしています。
今回も記事の末尾に、
知床財団で長年ヒグマの研究をされている方の
ページのリンクを貼りました。
その中でクマに穏やかに話しながら後ろに下がる、
とあります。
嘘でしょ、と思うかもしれませんが、
実はクマに話しかけるという行動は、
北アルプスの奥地で長年猟師をしていた方も行っていたようです。
私自身経験しているわけではありませんが、
クマの行動を見聞きしていると
有効なのだろうと思います。
クマは人間を見つけたらすぐに襲ってくるような猛獣ではありませんし、
犬以上に賢いと言われる動物です。
盲目的に「怖い!」と恐れるのではなく、
クマの臆病な性格を知った上で、
今どのように感じているかな、
と想像できる余裕があると、
クマに対して過度に恐れることはなくなるのではないかと思います。
↓最後に知床財団の研究者によるクマに出会ったら