釜で米を炊く
最近の仕事は釜戸で米を炊くこと。
多分、会社辞めてから身につけたスキルの中では一番。(履歴書に書けないかな…)
まず炭に火をつけるところから。
よく旅館で見かけるカエンという青い燃料に着火して、その火を炭に移していく。
これがなかなか時間がかかる。
そしてちゃんと芯まで熱くならないと米炊きの途中で火が弱くなってしまう。
特に湿度の高い梅雨は大変、団扇でひたすらあおぐ。
乾燥している冬はやりやすい。
次に水。
米の分量はお客様の人数によって変わるが、水の調整は目分量。
指の関節で量を計って微調整する。
水の分量を間違えると美味しくならない。
こちらも季節によって若干違う、新米は要注意。
炭を焚いて、水の準備をして。
いよいよ釜を乗せる。
乗せた後も火の調整は続く。
別に放っておいても炊けるけれども、
焦げ目がつかなかったり、火が弱くなって米がべちゃっとしたり。
湯気が上がってきて、上手くいけば吹きこぼれる、吹きこぼれれば一安心。
あとは音を聞きながら蒸らしに入るタイミングをはかる。お焦げを作らないといけないから、お焦げのできる音も聞き逃さない。
私の師匠は匂いでも判断していたが、まだそのレベルまでは至っていない。
蒸らしも季節によって時間を変える。
最後蓋を開ける時はいつも緊張する。
そしてしゃもじを入れた瞬間に今日の出来がわかる。
釜戸で炊いた米は美味い、成功した時は段違いに美味い。炊飯器やガス釜ではとても敵わない。
お客様にお焦げの乗ったご飯を出すと、
ほとんどの方はニッコリしてくれる。
料理はほぼ板前さんが作っているけれども、
ご飯だけは自分で炊いている。
やっぱり自分で作ったもので喜んでもらえるのは嬉しい。
電気もガスも使わない伝統的な技術。
時間も手間も恐ろしくかかる。
合理化を推進していく現代に逆行する業。
でも未だに現代の技術を上回るのは何故なんだろう。
手間暇かけることの大事さを教えてくれる釜戸と米に感謝しつつ、今日も釜戸とにらめっこする。
つの
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