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リスクを減らすためのクリアランス調査

 特許侵害訴訟に関するニュースは、その具体的内容は専門家以外には理解することが難しいにもかかわらず、注目を集めやすく、とても拡散されやすい傾向があります。訴訟が提起された段階で判決がまだ出ていない状況であっても、SNS等で被告側が完全に悪いかのように取り上げられ、炎上してしまう大きなリスクに注意が必要です。

 重要なのは、ビジネスを行う上で特許などの知財の侵害リスクを可能な限り減らすことです。この知財の侵害リスクを減らすための調査がクリアランス調査です。

 クリアランス調査とは、「他社の知財を確認して、自社のプロダクトやサービスが他社の知財を侵害していないかを確認する」調査であり、侵害防止調査、やFTO(Freedom to operate)調査とも呼ばれます。クリアランス調査の目的は、ビジネスを自由に展開するために邪魔になる他社の知財が無いか、リスクを把握することにあります。

 それでは、どのタイミングでクリアランス調査を行うべきでしょうか?クリアランス調査を行うタイミングが早すぎると、事業内容つまり、調査対象が変わってしまう可能性があるため、リリースするプロダクトやサービスがある程度固まってから行う必要があります。

 しかし、クリアランス調査を先送りにしすぎ、事業の障害となる知財の発見が遅れてしまうと対応に窮することになりかねません。そこで、『転ばぬ先の杖』として、事業のコアとなる部分に関して、早期に予備的な調査を行っておき、大規模な投資をする前、大々的に広告を打つ前に、徹底的なクリアランス調査を行うといった、段階的な対応をとることが有効です。

 クリアランス調査を行うのは誰か?最近では、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)の機能も充実し、自分で調査を行うことも十分に可能です。しかし、特許に関するクリアランス調査は、先行技術調査とは異なり、権利書面として特許公報を読む必要があります。具体的には、クレームで定義される権利範囲、つまり、発明の技術的範囲を理解した上で、自社のプロダクトやサービスと対比することで権利範囲に含まれるか否かを判断する必要があります。

 近い発明の有無を確認する先行技術調査に対し、クリアランス調査は、自社のサービス等に関する想定される権利を全て漏れなく見つける必要があります。このとき、自社のサービスやビジネスモデル等を理解し、存在し得る特許権を想定して、検索式を作成することが求められますが、技術分類毎に付与される特許分類やキーワードの選定等、調査手法に関しても高度な知識が必要となります。

 また、発明の技術的範囲の理解と属否の判断については、弁理士など専門家の知識が必要となります。したがって、社内に適切な人材がいない場合、代理人の特許事務所や専門の調査会社や外注を行うことが必要となります。このとき、自社のサービス等を正確に理解してもらうことが必要不可欠です。

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