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第2章 5.侵害予防調査の考え方

 侵害予防調査では、将来起こり得る特許権等の侵害訴訟を想定する。

 具体的には、仮想的な被告である自社の「実施行為」と、仮想的な原告である権利者(出願人)が保有する「権利範囲」を想定する(図2.4)。

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図2.4 侵害のリスクと適切な調査範囲の設定

(1)リスクの事前想定

 まず、リスクを想定する。どのような観点でいかなる権利が存在し得るのか、又は存在しないのかについて、技術常識・技術の流れに基づいて、存続期間や存在し得る特許権等の権利範囲・プレイヤーを想定する。

 このとき、事前に想定していないリスクを偶然カバーするような結果は得られない点に留意が必要となる。

 想定していないリスクについて検索式に反映することは不可能であり、想定していない権利が母集団に含まれること基本的にはない。

 なお、リスクとなり得る権利を偶然発見できたとしても、他の権利の存在を正確に把握したことにはならず、調査の「信頼性」は担保されない


(2)自社の「実施行為」の特定

 次に、自社の「実施行為」を特定する。ある程度の具体性をもって自社の実施行為の特定をしない限り、リスクとなり得る他社の「権利範囲」を想定することはできない。

 他社の「権利範囲」を想定できないということは、調査対象が定まらないことに他ならない。

 調査対象が定まらなければ、意味のある検索式を作成することができないため、侵害予防調査を行うことは不可能となる。

 このとき、自由実施技術を把握した上で、何を実施しないのか、何を調査対象としないのかも併せて明確にすることが重要となる。

(3)他社の「権利範囲」の想定

 発明の技術的範囲は抽象的に記載されているが、いかなる権利範囲が存在し得るのかを想定して検索式を作成する必要がある。

 想定しない権利範囲を網羅的にカバーすることは不可能である。

 このとき、予備検索を行い、技術の流れや技術水準・技術常識を把握し、いかなる技術水準の権利が、どの年代に存在し得るのか、大局的に理解をすることも重要である。

(4)検索式の作成とスクリーニング 

 そして、特定した自社の「実施行為」を含み得る(内包し得る)、想定した「権利範囲」を、漏れなく網羅的であることを意識して(再現率重視)、検索式に反映(翻訳)する。

 スクリーニングに際しては、侵害を主張する権利者の立場で請求項を読むことが有効である。決して、自社に都合の良いように文言を解釈してはならない。
 また、公開公報や未移行のPCT出願など、権利として確定していないものは、経過をウォッチングする必要があり、定期的に調査をアップデートするようにする。

↓つづき


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