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第2章 7.仮想事例:機能性表示食品

 機能性表示食品を題材として、侵害予防調査の仮想事例を示す(※1)。 

 この機能性表示食品は、「手元のピント調節力を助ける機能」に、「ぼやけを緩和し、はっきり見るチカラを助ける機能」と「光の刺激から目を守るとされる黄斑部の色素を増やす機能」が確認されているとする。

  機能性関与成分は、ルテイン、アスタキサンチン、シアニジン-3-グルコシド、DHAを含有する(※シアニジン-3-グルコシドはビルベリーエキス、黒大豆種皮エキス由来)である。

 表示される原材料名は、以下の通りであり、剤型はソフトカプセル剤である。

 食用油脂、DHA含有精製魚油、アスタキサンチン含有ヘマトコッカス藻エキス、黒大豆種皮エキス、ビルベリーエキス/加工デンプン、グリセリン、ゲル化剤(カラギナン)、ミツロウ、ルテイン・ゼアキサンチン含有マリーゴールド色素、酒石酸、リン酸ナトリウム、酸化防止剤(ビタミンE)

  まず、懸案となる特許権として、どんな権利の存在を想定するであろうか。有効成分と機能性表示(用途)、有効成分同士の組み合わせ、有効成分とその他成分の組み合わせ、その他成分同士の組み合わせ、剤型、用法・用量、製造方法、パッケージ(包装材料)など、下調べや経験に基づけば、様々な権利が想定され得る。 

 なお、調査の背景や、製品等の詳細はケースバイケースであるため、以下に示す検索式等はあくまでも一例に過ぎない点に留意されたい(敢えて、検索式に改良・修正の余地を残してあるので検討を頂きたい)。

 ここでは、各成分の重要度を高いものから順に成分A、成分B、成分Cとした(図2.10)。成分Aは、機能性表示に係る有効成分であり、必須の成分である。特に、ルテインは最重要の成分である。成分Bは、特徴的なソフトカプセル剤という剤型を採用しており、カプセル内容物と有効成分の安定化に関する成分である。成分Cは、その他成分とした。

 検索式の作成においては、例えば、有効成分のうち2成分の組み合わせや、有効成分と他の成分の組み合わせ、他の成分の組み合わせ等から、コストや背景事情などを考慮して必用に応じて用途や剤型で絞り込みを行う。

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図2.10 機能性表示食品の事例

 予備検索やシソーラス辞典の活用により、各成分の特許分類を抽出し、同義語・類義語も検討する(図2.11)。

 なお、化学物質については、上位概念・下位概念として、骨格や官能基(芳香族とベンゼン環、エタノールとアルコール、アミノ基など)、用途・機能(酸化防止剤、界面活性剤など)があり、上位概念のキーワードを用いると網羅性は上がるが(再現率の向上)、ノイズは増えてしまう(適合率の低下)。

 上位概念とするか下位概念とするかは、何がどのレベルで公知であるか、自由実施技術や技術常識などを考慮して判断を行う。

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図2.11 検索式の一例

  検索式①では、各有効成分の用途、各成分を含有するソフトカプセル剤であるサプリメント、最重要のルテイン・ゼアキサンチン含有マリーゴールド色素に関する分類と用途、植物抽出物の用途及び剤型、ルテイン以外の有効成分の用途など、各小集合を作成している。

 検索式②では、有効成分の組み合わせに着目して絞り込んだ上で、用途で限定をして、各小集合を作成している。

 検索でヒットした文献には、用途に関する基本特許である特許3778509号(眼の調節機能障害改善剤)(※2)や、特許6419620号などが含まれている。

 検索式は、リスクとコストに応じて適宜設定されるため、絶対的な正解はない。どのような権利が想定し得て、どの程度のレベル感で調査を行うか、ヒアリング時に確認とすり合わせを行い、検索式を作成すればよい。

↓つづき

※1:参考として、以下の製品

※2:【請求項1】アスタキサンチン及び/又はそのエステルを有効成分として含有してなる眼の調節機能障害改善剤(但し、清肝明目作用を有する動物胆とアスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有するものは除く)。

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