ブライス・デスナー 2台のピアノのための協奏曲(日本初演)
2024.6.22(土)14:00開演
2024.6.23(日)14:00開演
ともに東京芸術劇場コンサートホールにて
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
ピアノ:角野隼斗、フランチェスコ・トリスターノ
コンサートマスター:長原幸太
読売日本交響楽団
行ってきました、東京公演。池袋芸術劇場2日間。
公演が発表された時、演目もその作曲者も生で聴いた事はなく、指揮者のヴァイグレさんも初めまして。知っているのは角野さんとトリスターノさん(2022年の芸劇での2台ピアノコンサートは聴けていた)、読響さん(私は2022年10月のラフ2いわき公演と2023年3月の秋田inFを聴きに行けている)でもそれだけで直感、行く価値大いにありと思いチケット確保した。東京day2だけ行こうと思ってたけど(最新が最高ですからね!ましてや2台ピアノ、オケとのコンチェルト、公演重ねるほどに調子をあげていくであろう…)day1もまだ空きがある…day2の第1ピアノ側(たぶん角野さんこっちだ)の2階中央下手側の席は確保した、でも第2ピアノ側からも見たいよね…2階右サイドの1列目がポツンと空いている…あー指が指がねーポチッとな(笑)。
予習は4-6月のチャイコフスキーピアノ協奏曲第1番のツアー(佐渡裕さん&新日フィルさん)、6月中旬のPenthouse Tapestry Tourが終わった後。ブライス・デスナーの2台のピアノのための協奏曲はラベック姉妹の演奏しか音源が探せず。ただ、NHK-FMさんのベスト・オブ・クラシックの放送(4/26)で、同曲のライブ演奏(チェコフィル2023.8.30ルーマニアブカレストにて)の放送がナイスタイミングであり、録音したその音源とCD化された音源を聴いていた。それ以外の3曲はApple Music Classical で適当に見つけた音源をプレイリストに入れて1週間前から聴きました。
ワーグナー:トリスタンとイゾルデから前奏曲と愛の死
ロミオとジュリエットと並ぶ許されざる恋の物語とプログラムにある。物語の詳細は割愛するが、この愛の物語に先立って演奏される前奏曲と、ラストシーンでイゾルデが絶叫する愛の死はしばしばつなげて演奏され、オーケストラのレパートリーに定着していると。
この曲は弦楽器の曲と言っていいほど、最初から最後まで弦のうねりに身を任せ、心で感じる音楽だった。出だしのチェロとコントラバス(8台も入ってた!)でもう一瞬にして非日常。ヴァイグレMoは指揮棒を持ちつつも両手でまぁるく大きく円を描く様な指揮。それでいて意思表示が的確というか、締めるとこは締める、出すところは出す、オケの音より一瞬早く次々と指示を繰り出すので見ていて「次はどう来る?そうなるのかー」とワクワクしてしまう。主旋律より下支えのパートを促す場面も多々あり自分的に好感度アップ!それからオーボエのソロが素晴らしくて魅入ってしまった。金子亜未さんかな?(荒木さんじゃなかったような)ブラボーでした!!!(パンフレットにオケメンバー全員お写真入りでお名前あるの嬉しい。)コールアングレも美しかったです。
愛の死のクライマックスはラフマニノフばりにどんどん音程も音量も上がり、バイオリンパートは全体でひとつの生き物のように思えて、それを束ねるマエストロが神がかっててかっこよくて…うるってしまいました(2日目)。そうだよ、これが読響だ。読響最強の弦部隊!一斉に音出す時の呼吸音まで聴こえる読響さん…
終演後、マエストロ十数秒腕を下ろさず会場一体、無音の余韻を楽しみました。いい思い出。
1曲目から素晴らしくて盛大な拍手。マエストロ、カーテンコールを受け、メイン奏者の紹介もしつつ応える。奏者に最大の賛辞を送る、いいですね!
その後前方弦の方の一部がスッと立って退場。下手側から2台のピアノを搬入。ここで角野さん、トリスターノさん上手からマイクを持って入場。自分の自己紹介。ブライス・デスナーについて、アメリカのロックバンドのギター奏者でもあり、クラシックなんだけどそれにとどまらない響きやリズムを堪能して下さい、と。この曲を友人であり偉大なピアニストであるフランチェスコ・トリスターノと演奏させて頂きます。トリスターノさん「コンニチハ、トキョウ」と。フランスの詩人ボードレールの言葉「美しいものは奇妙である」この曲もそうだし、人生もその様なものだと。トリスターノさんが英語でお話しされ角野さんが訳してくれました。(6/22はアナウンサー顔負けの進行で「何その落ち着きもはや巨匠じゃん」ってなったけど、6/23はトリさんを遮る場所を間違えたのか妙な間があり「僕の訳がつたなくて…伝わったかなすいません」ってトリさんの顔見て笑って…かわいいホッとした。かてぃーん♡)
一旦2人で下手へ捌け、オケのチューニングの後マエストロとともに再登場。それぞれのピアノ(第1:角野、第2:トリスターノ)にスタンバイ。角野さんはスタインウェイ(だよね?ロゴの確認してないけど)トリスターノさんはYAMAHA。楽譜は角野さんiPadをピアノ内部に、トリスターノさんは楽譜立てに紙の楽譜を立てて。
マエストロがトリスターノさん、角野さんと用意はいいかい?って感じに順にアイコンタクト。
ブライス・デスナー:2台のピアノのための協奏曲
第1楽章
2枚の木片のバシッっと同時にピアノ入り楽曲スタート。出だしからエンジン全開、難しいと思うけど決まってたー!ラボで言ってた美しい(でもちょっと聴き馴染みのない)ハーモニーを角野さんが奏でると「斬」って感じでトリスターノさんがリリースカットピアノの様に低音で遮る。お?!そうくる?この2人面白!!!「斬」の後にチェロがギギギギギーって!視覚情報も相まって音源では分からないセッションの面白さがありますね!その後のギア上がって疾走していく部分は、さすが音ゲーマー、拍感出しつつインテンポで颯爽と駆け抜ける。かっこいいんだわ。木管の鳥のさえずり、金管の太陽の光、弦の流れる風。そこに2人のピアニストが奏でる水の流れ反射光。まとまりで感じるとほんと映像が浮かんできていやいやこの曲素晴らしいなぁと感心してしまう…。1楽章のはじめの同音連打はかてぃんさん、片手で高橋名人ばりに打ってたよ(笑)。読響さんの合わせもバッチリで迫力がある。弦管打楽器の6連符も決まったー!!目と耳であちこち追い回しているうちにあっという間に終わってしまった、第1楽章…
第2楽章、第3楽章
神秘的な出だし、第1の角野さんの真骨頂。高音のクリスタルな音色でキラキラと静寂を奏でていく。お顔の見えるday1、1音1音魂込めて大切に弾いてる感じでした。トライアングルも入ってのセッションのところ本当に美しかった〜(泣)。曲調変化の後半の入り、弾き姿(視覚)で気持ちの入り方が分かるの楽しすぎる。打楽器の木琴&マリンバ?2台でシンクロしてピアノに合いの手入れていくのうますぎでしょ読響さん…だんだん鼓動が速くなり全体の音圧上がったところでそのまま3楽章へ。もう、楽しい楽しい。入りのピアノ、「あんころもち食べたい、草もち食べたい、食べたい、食べたい…」って聴こえてしまうの私(笑)。冗談はさておき、弦が刻む中、2台のピアノが低音でアクセント入れつつメロディをのびのび聴かせるこの部分は、風の谷のナウシカの劇中歌「メーヴェとコルベットの戦い」を思い浮かべちゃいます。デスナーさんもきっと久石譲さんの音楽に、宮崎アニメ作品に、影響を受けているに違いない。ハノン思わせるスケールもバシッとね!(ショスタコの協奏曲3楽章もやってたねーハノン)。出た!高速同音連打!!(角野さん)。もうお2人打楽器奏者と化し完全に楽しんでましたね、オケとのセッション!!!角野さん、ときおりトリスターノさんの事見るんだけど、獲物を狙うかの様な鋭い眼光ですごい集中してたー(参考動画はこちら→菊池さんとのmadness笑)。2人が正面から見えるday2の画角では、角野さんは背筋ピーンで足の動きもさほどなく、トリスターノさんは背中丸めて長いおみ足で拍取って自由。見た目対照的だったのにセッションはガッツリ呼応してて凄かったなー!こういう曲、角野さんは出番が終わるとサッと腕を引く(引っ込める)よね。素早くて(隼くて)かっこいいよねー。「ダメダメよ、ダメダメダメよ、ダメダメよ」に聴こえるとこ(4分前後のところ)なんかも(笑)、オケとのかけ合いバッチリでした。中間のカデンツァ、1日目はかてぃんさんが下行系のエモいメロディ(音源とは違う)奏でてたと思ったんだけど、2日目はトリスターノさんがメインで弾いてた?!かてぃんさんはキラキラ装飾してたよね?聴いた場所が違うので違って聴こえただけかしら?誰か教えて〜。ピアノのトリルからラストに向かってアゲていく。変拍子の場所?ピアノと木琴(1台)の合わせの音がなんとも幻想的というか浮遊感。どんな拍子よ?って指揮者のヴァイグレさん見たけどなんて事なくサラーっと振ってらして…(驚)。ポリリズムのとこクラリネット効いてたブラボー!最後の鐘はトリスターノさんがYAMAHAピアノで突き抜けた音を鳴らして「おおぉ〜!!!」ってなった。フィナーレは全員が渾身のフォルテでゾクゾクー(両日ともこの部分で鳥肌が立ってしまった)…でフィニッシュ!Woo!!!って声出たよ。凄かったーーー。
何度もカーテンコール。トリスターノさん角野さん側に移動して肩組んで。2日目はヴァイグレさんも加わって3人で肩組んで。大阪と合わせて3公演、演奏も絆も深まったでしょうね!3回ほど出入りした後、2人によるソリストアンコール!(ヴァイグレさんは2ndバイオリンの空き椅子にちょこんと座られました)
曲は大阪含めて3公演とも同じ曲。リチャード・ロドニー・ベネット作、「4つの小品組曲」より第4曲フィナーレ。なんかお2人のためにある様な曲よねこれ。テンポ速めでグルーヴ効かせてノリノリ。トリスターノさん楽譜のめくりが激しい(笑)サントリーホールではテープで止めてあったので落ちなかったけど。ホールがジャズバー。ラスト前静かになって、かてぃんさんトリスターノさん見てにこりとアイコンタクト。楽しそー!!!あっという間のアンコール。お2人の2台ピアノ、また観たいな聴きたいなー!超人気者の2人だけど是非ともまたお願いします。あ、11/16にAsphalt無声映画2台ピアノatルクセンブルク、また演るんでしたっけ?それも観たいなぁ。いつか日本でも…(願)。
15分休憩
東京day1デスナー初見後の自分のPostです!
ウェーバー:歌劇〈オリアンテ〉序曲
予習で初見した時からスッと入ってきて聴きやすい曲。華やかで跳ねるリズム、気分上がる。ヴァイグレさんどんなかなぁ〜って楽しみにしてたんだけど、指揮台に登るや否やタクトを振り下ろすものだから、びっくりー!いや、ティンパニの人偉いよ笑。そして爆速!笑笑笑。2日目の方がより速い気がしました。第2主題のバイオリンの歌いは本当にうっとり。ウェーバーは1786〜1826ドイツのロマン派オペラの様式を確立した作曲家、とある。今日の4曲の中では1番古い曲なのね!(1823年ウィーン初演)ヴァイグレさん、お得意曲なのかなぁ?とにかく始終楽しい曲でした。
ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容
ウェーバーのどの主題の変容なのかわかってませんが、一つ前のウェーバーの曲を思うと、ウェーバーのキャッチーさはありつつも何かちょっとひねくれてて聴きにくい、でもなんかクセになる。そんな作曲家さん…初めましてのヒンデミット。特に第2楽章が私には印象的でした。東洋風の主題って書いてあるけど、途中金管が奏でるブルージーなメロディはアメリカ的。ヒンデミットは20世紀前半のドイツを代表する作曲家。ナチスの政権下で作品の演奏が禁じられ1940年にアメリカに亡命。この曲は作曲1940〜43年、初演が1944年1月NYというから納得です。角野さん大阪公演前日にラボ配信して、デスナーは自分からの提案って言ってた。まずデスナーありきでそこに繋がるヒンデミット。ドイツ〜アメリカの音楽史がコンセプトなのかな、この公演。なかなか粋だと思いました。3楽章のフルートブラボーでしたし4楽章は跳ねるリズムがさっきのウェーバーに類似。最後は金管が華やかにフィナーレを彩って、スターウォーズっぽさもあったりして迫力の演奏でした!いや〜後半も凄かった!聴き馴染みのない毛色の違う4曲をガッツリ聴かせてくれた読響さんMo.ヴァイグレさんあっぱれでしたー!!!
カーテンコールでマエストロ、すごく丁寧に楽器奏者さんを紹介。最後、弦の格パート2人づつと握手。ヴァイグレさん、なんかとってもいい人だ。好印象!長ーく拍手して、オケアンコールはなかったけれど大満足の公演でした!!!
ところで私、2日連続で千葉市-池袋(片道1時間半)を通ってしまった訳です。全く同じプログラム、同じ演者を同じホールで同じ時刻で聴くのは初めて。席は違ったのですがいい経験でした。
day1は2階上手サイドのA席。ステージに近くて演者の呼吸や熱を感じやすかった。特に指揮者の動きやコンサートマスターの長原さんが良く見えたので楽しかった。
day2は2階中央下手側S席。全体がよく見え、音のバランスがいい。管楽器、打楽器もよく見え、今回の演目聴くにはとてもよかった。ステージからは遠くなってしまうので、お手元、お顔を拝見するには双眼鏡が必要。
それぞれに一長一短はあるのだが、意外にもピアノの音はday1のサイドA席の方が聴こえたかもしれない。ステージに近いのとピアノ蓋の関係で右手(上手)の方に音が飛ぶからか。正面はオケの音が前にストレートに飛んでくるので正面だとかき消されやすいのか…。あと、聴き手のコンディションってのも多分にあるよね。熱い4曲でしたがday1は1曲目(ワーグナー)で、day2は4曲目ヒンデミットの第3楽章で眠くなってしまい…。面目ない。2時間、集中力がもたない私って…。
なので席の場所で楽曲の印象が変わる。講演後いろんな感想が流れてくるけど、その場所で聴いたその人の感想でそれぞれが真実であり、自分の印象と違うこともあり得るという事を学んだいい機会でした。
知らない音楽、作曲家ばかりの演目。音楽の知識もなくnote書くのもはばかられたが、なかなかに楽しい公演だったので、自分勝手につらつらと書いてみた。角野さんについていくといろんな世界、音楽を体験できて本当に楽しい。感謝です。
そうそう、直前ラボ(メンバー限定動画)で「デスナーでも演れば?」と久石譲さんに言われて聴いてみてハマった。機会があればこの2台ピアノの協奏曲やりたいって思ってた、ってかてぃんさん言ってたね。このレポート書いている時には、角野さんの本格的な劇伴作品、ちな監督のアニメーション作品「ファーストライン」の公開、と同時にサウンドトラックが世界中に公開されて……。千と千尋の神隠しでおそらく最初に劇伴というものに興味を持った角野さんが、YouTubeで千と千尋のピアノ演奏を公開して、ついには劇伴のお仕事のチャンスが来て、ミニマルミュージックの手法も用いて角野さんらしい音楽を生み出した事に感激。音楽の、人との、すべての出会いが、奏でる演奏、作る音楽につながってゆくんだね。また1つ、新たな扉が開いた感じ。この先どんな世界が待っているのか…ますます目が離せませんね!