地域共生を熱く語る男たち〜「地域でともに暮らす」を紐解くvol.1 イベントレポート(暫定版)
こんにちは!
支援者つながるカフェです。
「地域でともに暮らす」というテーマを掲げ、あらゆる角度から地域共生社会の課題や可能性を掘り下げようと、2024年7月20日、ゲストを交えたトークイベントの第1弾を開催しました。
今回はそのイベントレポートとなります。
レポートといっても、参加した人の個人的な感性やワクワクに触れた内容をまとめたものです。
地域でともに暮らす
開始とともに、支援者つながるカフェ共同代表の宮間より、こんな思いが共有されました。
まさにこの問いに、イベント企画への思いを込められています。
人の暮らしには地域という基盤があり、暮らしを営むには、自身の力を信じ人の協力を得ながら豊かにしていく。それは福祉だけの話に留まらないはず。
この企画では、地域共生社会=地域でともに暮らすと意味付けし、それを紐解いていくことを目指していきます。
紐解くとは、その漠然として抽象的なその概念的である”地域共生社会”を、ゲストや参加者との対話を通じた学びや気づきからキーワードをアーカイブしていきます。そして帰納法的にキーワードを重ねていくことで、より一人ひとりが地域共生を暮らしの中で感じられるようにしていきたいと考えています。
vol.1の今回は、地域共生を熱く語る男たちと題して、
厚労省で地域共生社会をまさにど真ん中で取り組む、社会・援護局地域福祉課地域共生社会推進室 支援推進官の犬丸とものりさん。
千葉県松戸市で地域共生をキーワードに実践を重ねている、一般社団法人Mi-Project 理事長の松村だいち。
二人の話を手掛かりに、参加者皆さんとのトークセッションを進めていきました。
支援者つながるカフェについては、下記noteにその立ち上げストーリーをまとめていますので、そちらぜひご覧ください!
”自分によし、相手によし、世間によし、未来によし”
冒頭では、犬丸さんより厚労省が掲げる地域共生社会とはどのような背景があって、なぜこれからの社会に地域共生が必要なのか?その前提から理解を深めていきました。
背景として、まず挙がるのが人口減少。特に田舎が顕著。
街をどうしたら持続可能な形で生きのびさせていけるのかが大きなテーマの一つ。
そして二つ目が、個人を取り巻く状況の変化(一人暮らし、個人化、非正規雇用の増加など)。家に帰れば誰かと「おかえり」を交わし合ったり、愚痴を言い合えた。つまりそれぞれの環境の中で自分をエンパワーメントしてくれるところがあったが、それがない人が増えているのが実状。
さらに2040年。就職氷河期世代が高齢化を迎える。どういう状態になるのかを考えると今から出来ることはないのか?
生き方の多様化、生きやすくなった時代ではあるが、そこにうまく適応できなかったり繋がれない人もいるのが現状、これからどうしていったらいいのか?
そんな社会背景があるのが地域共生社会とイメージしてほしい。
**
地域において繋がりを育むことで社会的孤立や社会的排除、制度の狭間にも対応できる、暮らし全体を見渡して本人が選択する生き方を追求し応援していくことが大切。
本人の目線に立つとやれることがいっぱい。制度で出来ることは少し。
さらに縦割りを超えて暮らしの向上と地域の活性化も一緒に出来たらよい。ハンディ(広い意味でのハンディ)のある方も役割を持って参加できる社会を作ることが誰にとっても暮らしやすい社会に繋がる。
そこから出てきたのが地域共生社会という考え方。
つまり、「自分にもよし、相手にもよし、世間によし、未来によし」これが地域共生社会であり、寛容な社会とも言える。
**
ここで事例を紹介。
「街に豆腐屋がなくなってしまう!」
廃業した豆腐屋さんを事業承継した人々がいる。その人たちは、ある側面からすれば配慮を必要とする人々。
だけど、彼らの目線に立てばやれることはたくさんある。
つい支援者があれもこれもやりたくなってしまうが、そこを色々な方が社会参加して社会の一員として生きていく事を作っていくのが大切。
それに何が足りないのかはみんなで考えていく。
障害手帳を持っている方々が豆腐屋をやれば「作業所」になる。
健常者が豆腐屋をやれば「事業」になる。
なぜここに違いが起きてしまうのか?
「”福祉”ではなく”事業”としてみてほしい」ご本人たちはそう言ってました。
地域共生は、もともと「地方創生」と「共生支援」。これらを統合しうる(両側面を持つ)概念。
この概念において、社会経済にも本人たちが”ぼちぼち”関わることが大事。
**
誰もが自分を表現できる場を
ここからは松戸市でも地域共生社会の実現を目指している(一社)Mi-Project理事長の松村が登壇。
Mi-Projectのビジョンは「つながりを通じて、人が輝き、人に優しくなれる街」。
病気や障害などの側面があってもその人が輝ける瞬間を大事にしたい。
地域には本当に色々な人がいる。自分の想像を超えるような人もいる前提で寛容な気持ちを持てるようなきっかけを作る、そんな思いが込められている。
活動の中で特に大事にしているコンセプト。
それが「誰もが自分を表現できる場を育むこと」
楽しい・嬉しい気持ち、これやりたい!あれやってみたいという好奇心、
現在進行形の悩み、過去に傷ついた経験がありそのわだかまりを心にしまっているなど、さまざまな感情を表出する行為=「表現」した時に、それを受け止めようとする姿勢やコミュニケーションを大切にしたいと考えている。
そのコミュニケーションの重なりが「場」となっていく。
そんな場を育んでいくために、つながりの強弱や陰陽の側面も意識している。場に来る方はそれぞれ繋がりを求めている度合いが違うし、求める繋がりにも選択肢がある。あらゆる選択肢を持たせたいとグラデーションを作る場づくりを展開している。
**
場のオーナー
本日紹介する活動は、まつど暮らしの保健室と鉄塔の下の倉庫。
まつど暮らしの保健室のある場面で、子ども食堂に多数出入りしている人や近隣の騒音で家にいるのがしんどい人、膝が痛い人が参加し、お互いに最初は警戒していて町では決して関わることはないような人同士でも、ここでは何となく仲良くなっている。不思議な関係性やコミュニケーションが生まれている。なぜこういった「不思議」が生まれるのか。
福祉や医療専門職のスタッフでよくあるのが、”ちゃんと”対応しなきゃと思うこと。正しい考えだし、間違っていないがそういった姿勢だと場自体が堅くなり、参加者も固くなってしまうことが多くなる。
スタッフに専門職としての側面があったとても、一人の参加者のような楽しむ気持ちで参加することでその場の雰囲気が変わる。
どんなことをする場なのか、どんな対応をするのか、よりも、
リーダーやスタッフ自身の在り方が場をつくるイメージを持っている。いわば人が場をつくる。
これを、「場のオーナー」として場づくりにおいて意識している。
**
暮らしのDIY
鉄塔の下の倉庫では、「暮らしのDIY」をコンセプトにしている。コロナ禍で始まったこの取り組みは、松村と大家さんの偶然の出会いがきっかけだった。使っていない空き倉庫を何か始めたい人やものづくりしたい人に貸したいという相談を大家さんから受け、1年ほどかけて不動産の協力を得ながら賃貸の可能性を模索したが、難しかった。
「だったら自分たちでやればいい!」
暮らしを自分たちが作る、場も自分たちで作る、暮らしのDIYはそんな思いをそのまま込めている。
一番最初に何をしたか。
大家さんから、コロナ禍で体力が落ちてしまったおばあちゃんたちが多く、中には通っていた体操教室に行けなくなってしまった方もいる。体力が落ち気味の人でも参加できる体操教室はできないか?という相談を受けた。
松村がたまたま理学療法士だったため、二つ返事でやりましょうとフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)予防を目指した名もない体操教室を始めることになった。体操は口コミで参加者が増えて、現在も継続している。
**
コロナ禍で起きた問題。そのうちに一つに、ワクチン接種の予約をインターネットでしなければならないという状況に混乱した多くの高齢者の存在があった。
スマホが使えないから予約もできないと嘆く方に対して、当時大学生の子と「これだ!」とスマホ相談会の構想を練った。
スマホを使いこなす若者や現役世代と高齢者をつなぐ取り組みは、「携帯ショップには予約しないといけない」「相談に行ってもいつの間に解決されてしまって結局自分で対応できるようになれない」などの声もあり、多くの方に足を運んでいただいた。
相談の内容から趣味や関心の話にも展開し、豊かなコミュニケーションが生まれたのも印象的だった。相談だけでなくお話目的で通う方も多くなった。
一方、スマホ相談を対応する学生や20代〜60代と幅広いボランティアスタッフに関わっていただけ、彼らにとっても地域活動に参加するきっかけになり、そして誰かに感謝される体験になった。まつど暮らしの保健室の参加者だった方が教える役割を担ったり、中には休職中だったがボランティアで自信をつけ、再就職したという方もいた。まさに自己肯定感につながる体験になっているのだろうと感じる活動になっている。
**
奥様に連れられスマホ相談に参加した男性の方は、相談を通じて倉庫の取り組みに関心を寄せ、まつど暮らしの保健室にも参加。そこで日曜大工やものづくりが特技だとお話ししてくれた。そのお話しから、鉄塔の下の倉庫にまだなかった看板を作ってくれないかと無茶な相談をしたところ、翌日には看板の設計図が出来上がり、丁度端材があったこともあり、翌週には看板を完成させてしまった。なんという仕事の速さで驚きと感謝を伝えると、結局掲示板の補修までしていただいた。
本人にとっては意図してない相談の場への参加だったかもしれないが、そこから特技を誰かや何かに役立つ経験につながった。
”高齢者の社会参加”だけに留まらず、場の運営にも貢献し、専属大工のような役割を見出した結果になった。
**
本当はやりたいと思っていることは?
活動を進めていく中で、「介護福祉を学ぶ高校生が地域に住む高齢者の生活課題に対してサポートしたい」という話をいただいた。
困っている事をサポートすることは、福祉を学ぶ学生にとって課題解決を学べるが、もっと広い視点で自立支援を学ぶ機会にすることはできないか?と考え、まずは地域で暮らす高齢者の方々の話を伺う機会を設けた。
「今どんな生活をしていますか?」
「これまではどんな仕事をしていたのですか?」
「何に困っていますか?」
ここまでの質問は、医療・福祉・介護の現場でよく聞かれる質問だろう。
それで終わらず最後に、「本当はやりたいと思っていることは?」という質問をしてもらった。
その一言から、高校生も盛り上がり、”やりたいことを叶える”ための議論や準備が始まった。そして正味2ヶ月で開催が実現。
高校生のサポートもあり、開始した駄菓子屋。
遊びにきた子どもの一人がこんな言葉をかけてくれた。
この言葉で、おばぁちゃんたちは「子どもたちのために駄菓子屋をやろう!」と奮起。現在は、毎週一回おばぁちゃんただけで開店するようになった。子供達の口コミが瞬く間に広がり、自転車がたくさん止まるほどの繁盛店になった。
すると、子どもたちも自分たちでチケットをデザインしたり、遊びの企画をしてくれるようになった。
駄菓子ばぁひまわりと名付け始まった駄菓子屋は、高齢者の”やりたい”という自己実現を高校生がサポートすることがきっかけとなり、地域の子どもたちの声から高齢者の役割が責任感に昇華し、今では子どもたちとともにつくる場に展開した。
この相乗効果や循環が結果として、地域共生のような空間につながったのではと感じる。
**
創造的・協同的な地域づくり
地域づくりはあくまで住民によるもの活動である。
その地域づくりに対して、自治体だけ、福祉だけという単発の取り組みでは限界が来ているように感じる。
「あれとこれを混ぜたら面白いかも」こんな意外性を楽しむ発想が創造的であり、その発想を形にするため協同的になり、可能性を広げ、想像を超えていくのだと思う。
シンプルに地域を楽しんでいく、地域の皆さんで工夫しながら地域を面白がりながら暮らしを考えていくことが大切で皆さんと共有して面白がって行きたい。
*****
一人の目線に立ち、環境を整えていく
再びマイクは犬丸さんへ。犬丸さんご自身は元々や滋賀県は守山市役所の職員です。守山市での実践を語っていただきました。
最初はそもそも「地域共生社会とはどうしていったらいいんだろう」から始まっている。そこで地域の様々な方が集まって飲み会をした。
この飲み会を、「三方よし研修会」を名付け、2019年からスタート。
出入り自由、飲み物持参、お酒もOK、食べ物1000円以内で、会場費を集めながら場所を転々としながら、続けていったことで今までお互いに横の繋がりがない事が分かった。
「福祉のことをもっと早く知っておけばよかった」と街づくり会社の人の声もあり、見えていなかった資源を繋がっていった。
自分の世界しか知らない。視点をどう変えていくということに気づいたことが大きい。
次にみんなが集まり自由にできる「居場所」づくりをスタートさせた。
2年くらいかけていろんな方が出入りしながら話し合いを重ね、『cafe Ink MORIYAMA』を作っていくことになったがお金もないし場所もない。
空き家を考えるがどこも貸してくれない。差別的なことをいう方もいた。
ようやく空き散髪屋さんを利用することになり、空き家対策補助金申請をすることに。しかし地方創生がテーマじゃないからダメだとNoが出る。
県庁に乗りこみ理解してもらい、準備を進めることができた。
若手の左官屋さんたちが仕事の合間に手伝ってくれる。少しずつ共感しあい輪が広がっていく。
点でやっていたことが繋がり面的な動きになっていった。
開店に向け、引きこもり当事者に働いてもらうために、公共施設のキッチンを使って調理実習をした。その積み重ねで本人が変わっていく様子を感じられた。
開店後は、不登校の子どもが運営する駄菓子屋、保育教室、子ども食堂、子育てママの手作りパン屋など発展していった。いずれも対話のきっかけから面で繋がっていった。まさに、”ぼちぼちなつながり”が生んだ発展。
人は変わる可能性があり、いろんな力があるのを周りが勝手に狭めている。一人ひとりの目線に立ち、環境を整えていくことが大事ではないか。
cafe Ink MORIYAMAの取り組みから、地域共生社会の実現を目指す事業(重層的支援体制整備事業)の一環で、福祉だけのものではなく皆が話す機会として、『ぼちぼち会議』を開始。
例えば「不登校の子に何かできないか」というテーマに対して、学校、市職員、不登校問題に関心にある民間団体代表やカフェ経営者、そして当事者本人が参加。”1日デイキャンプ教室”を開催することができ、当事者も楽しめ、保護者も感動し涙するほどの企画になった。
ぼちぼち会議では、市職員のナラティブも共有し、自分たちが動くのではなく、いろんな人とぼちぼち繋がって力を借りていく。気づけばチームになり、とりあえずやってみるが、できるようになっていく。
ただ形を作るのではなく、どう実践の場をつくっていくか。
暮らしは自分たちでつくっていくしかない。
*****
犬丸さんと松村さんによる熱い語りを経て、参加者の皆さんには、気になったキーワードや気づきをアウトプットしてもらいました。
その後は、参加者を交えたフリートーキングへ。
「自分も楽しんでやっていきたい」
「立ち飲み屋計画やるぞ!」
「相手の興味関心はどこにあるのか、を知る」
「支援者が支えるではなく、お互いに支え合うことを大切にしたい」
「生きづらさを抱える子どもたちも地域共生に関わるきっかけを考えていきたい」
「活動をやり続けることが大切、楽しいから続けられる」
「駄菓子屋をやりたい!」
こんな思いを共有することができました。
完成したグラレコがこちら。
ゆだねること
イベント終了後。。。
支援者つながるカフェとして、”地域でともに暮らす”を紐解くvol.1で集まった付箋を下記のように整理してみました。
<ラップアップ>
「出会いや偶然をキャッチし、創造して、人を巻き込む。活動がスタートしたらゆだねる」というコーディネートを学びました。手放せなかったり、自分が前に出てしまう支援者がいる一方で、犬丸さんや松村さんは地域共生の視点で関わっているからできることなのだな、と感服しました。
ゆだねることがチームを自立させ、創造を高め相互の信頼につながり、活動がイノベーションされるのではないでしょうか。
vol.1のイベントレポートをお届けました。ここまでお読みいただきありがとうございます。いかがでしたでしょうか?
私たちの「地域とともに暮らす」を紐解く探求は始まったばかりです。
2024年8月31日vol.2を予定しています。
またレポートにしていきます。乞うご期待!