訪日タイ人観光客トレンドレポート2024
日本のインバウンド市場において、今、タイ市場の潜在力に注目が集まっています。
2024年の訪日観光客数は、過去最高となる1,777万7,200人を記録し、インバウンドが大きく回復しています。(※1)特に、ASEAN6カ国からの観光客は前年同期比で増加しており、その中でもタイからの観光客が61万8,300人と最多となっています。これは、ASEAN6カ国全体の訪日客数の12.1%を占める数字で、タイ市場の成長が著しいことを示しています。
そこで本記事ではタイ市場に注目し、「タイ人が日本を訪れる理由」や「最新トレンド」「旅行者動向」について迫ります。
インタビュイーには、ツナガルでインバウンドPRのプロデュースを担当する、タイ人メンバーのサーイをむかえ、タイネイティブならではの視点でポイントを解説してもらいます!
(※1)出典:日本政府観光局(JNTO)2024年1~6月訪日外国人客数
話を聞く人
プロデューサー/篠原パッチャリダー
通称サーイ。生まれも育ちもタイ・バンコクのタイ人ネイティブ。
幼少より日本の漫画やアニメの影響を受け、オリジナルを日本語で理解したいと思うようになる。大学では日本語を専攻。在学中にバンコクで行われた国際旅行博のスタッフを経験したことをきっかけに、日本でインバウンドプロモーションに携わりたいという思いが芽生え、ツナガルに入社。
現在は、タイ人ネイティブメンバーとしてタイ向けインバウンドPRのプロデュースを担当している。
タイ人にとっての日本旅行とは?
2013年の訪日観光ビザ免除や2024年の直行便の増便で、タイ人にとって日本は「近くて行きやすい」はもちろん、「ご飯が美味しい」「四季折々の自然がある」といった利点から「思い出作り」や「レジャー」が叶えられる旅先です。
日本は「治安がいい」という理由から、初めて海外旅行をするタイ人の旅先として選ばれやすく、安心安全に観光ができる場所と認知されています。
また、リピーターには「日本 = Comfort Zone」、つまり心地の良い第二の故郷のような存在と回答する人もいるほどの人気を誇っています。
タイ人の訪日観光動向
現在の訪日タイ人旅行者の動向を見てみましょう。
・訪日目的
食、温泉、自然景観
タイ人に人気の日本食は旅のテーマのひとつ。おいしくてインスタ映えする料理が好まれます。
温泉は大浴場よりも風呂付き個室や貸し切り風呂で家族ゆっくり過ごすことを求める人が多いです。
自然景観では、タイには少ない山や渓谷、季節の変化を感じる紅葉や桜が人気です。
・来訪時期
春→ 大型連休
秋→ 学校の長期休み
冬→ 雪やスノーアクティビティへの興味関心
4月は連休、10月には日本の夏休みにあたる学生の長期休みがあるため、家族旅行の場合は子どもの休み時期を狙って旅行するのが主流です。
一方で、祝日は旅行費用が高騰してしまうため、有給休暇をためておき、時期をずらして旅行する人も最近では少なくありません。
また、雪が降らないタイに暮らすタイ人には雪へのあこがれも強くあり、冬に来日したいというニーズも高いです。
・滞在期間
FIT(個人旅行) → 7〜13日間
団体→5〜7日間
日本の複数都市を周遊する目的のある人やリピーターが1週間以上で滞在することが多い傾向。タイ人の観光ビザ免除は14日間までのため、滞在は最大2週間以内となっています。
・旅行形態(FITと団体の割合)
FIT(個人旅行)→ 80%以上
団体→ 15%
個人旅行が多い理由として、SNSやインフルエンサーの発信情報から個人単位での情報収集が容易にできるようになったこと、また、コロナ後に増便された格安LCCの影響で個人旅行にチャレンジする人が多くなり、団体旅行より自由に動けるため個人旅行が一般的になったと考えられます。
・都道府県別訪問率
東京都、千葉、大阪府、京都府、山梨県
タイ人に人気の観光スポットである寺院やテーマパークを擁する都市に人気が集っています。効率的に人気観光地を巡ることができるゴールデンルート周遊も根強い人気があります。
・同行者
家族、友人
タイ人は家族を大事にする文化をもつことも手伝って、旅行は家族と一緒に行くのが一般的です。2家族と祖父母など親戚ぐるみで同行する場合も。
友人との旅行はLCC航空券を使って3日間の滞在で遊べるような近場を目的地とする傾向があります。
日本旅行におけるタイ人ならではのこだわり
ここでは、タイ人観光客の旅行時のこだわりや行動の特徴をご紹介します。
こだわり1:計画的な行動
滞在中の数日で東京と大阪を満喫するためのスケジュール調整、旅費や時間のかからない移動ルートの確保など、タイムパフォーマンス、コストパフォーマンスを重視した計画的な行動を指向しています。
こだわり2:体験価値を重視
自分にとって経験価値のあるものに対してお金を惜しまない傾向に。 人生に一度の高級レストランや高級旅館など、サービスを利用した経験から得られる感動や満足感に重きが置かれています。
こだわり3:思い出になる写真をとる
家族旅行や友人との旅行が多いため写真撮影は外せません。そのため写真映えするようなスポット、たとえばテーマパークや、祖父母と同行した旅行の場合は「花」や「景勝地」が好まれます。
コロナ前後で変化した訪日タイ人旅行者動向
訪日タイ人旅行者の動向には、コロナ前後でいくつかの大きな変化が見られます。詳しく見ていきましょう。
変化1 訪日時期の変化
コロナ前:連休や長期休暇を利用した旅行が中心。
コロナ後:季節や祝日などの休日にこだわらず、旅行者自身が行きたい時に出かけるようになりました。背景としてポストコロナの影響で人混みを避けるようになったことがあげられます。
変化2 消費額、費目の変化
コロナ前:格安LCC航空券利用も影響し、団体ツアー単価および個人旅行の消費額は抑えめ。観光消費額の費目は宿泊費、飲食費、買物代が主。
コロナ後:航空券とホテル料金自体は高騰しているものの、日本の円安や物価安も影響して、タイ人旅行者の観光消費額は上昇傾向に。リベンジ消費の影響を受け、いままでできなかった買い物やレストランでの食事に対しての消費が高まっています。モノ消費への行動がいったん落ちつけば、関心がモノから体験にシフトしていき、今後は「コト消費」が増えていくだろうと考えられます。
変化3 滞在日数の変化
コロナ前:5日~1週間ほどの滞在期間が主流。
コロナ後:1週間~14日まで長く滞在して観光したい人が増えています。
変化4 訪問先地域の変化
コロナ前:北海道、東京、大阪、福岡などゴールデンルートがメイン。地方への旅行は興味あるものの、情報が少なく、注目度がまだ低い。
コロナ後:自治体のPRや在日インフルエンサーの発信によって地方観光が注目されはじめており、地方を観光したい人が増えています。
変化5 情報収集先の変化
コロナ前:インフルエンサーやメディアからの情報収集が一般的。
コロナ後:実際に訪れた人のリアルタイム情報や、入国手順や複雑な手続きを解説するような詳細な情報が求められるようになっています。媒体としてはタイ人が友人との近況報告の場として利用しているFacebookがよく活用されています。Googleの口コミやOTA(Online Travel Agent、実店舗を持たない旅行会社)の口コミなどと異なり、広告による良い口コミだけではなく、実際に訪れた「タイ人」の意見が見れる、意見交換ができる場として人気。Facebook内には日本旅行愛好家グループが誕生し、コミュニティ化しています。
タイ人×訪日旅行トレンドキーワード
新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に落ち着き、世界中で旅行が再開され始めた2023年。
コロナ禍から回復し、新たな価値観が台頭した2024年。
それぞれの年のトレンドキーワードを見ていきましょう。
2023年の旅行トレンドキーワード:「癒し」「リラックス」「ご褒美」
2023年までタイでは、コロナの影響による渡航制限やロックダウンに長く耐える期間が続いていました。海外旅行や渡航制限が緩和されたコロナ後は、これまで我慢してきた自分に対し、「リラックス」や「ご褒美」を動機とした旅行を求めるようになっています。旅行=「癒し」と言えるほど、旅行で贅沢することで自分にモチベーションづけをする人も少なくありません。
2024年の旅行トレンドキーワード:「ローカルな日本」
2024年に入ると、航空券や宿泊費が高騰しているにも関わらず、訪日するタイ人観光客数は伸長しています。
コロナ後の日本旅行は、東京や大阪など大都市への来訪がほとんど。リピーターで何度も日本を訪れたことのある人でも、久しぶりの再訪ではまず自分が訪れたことのある懐かしい場所を巡るというスタイルが多く見受けられます。
上半期で思い出溢れる日本を堪能した観光客は、次の旅先を探し出す動きに入っています。
2024年下半期は「みんなが知らない」「自分だけ知っている」「ローカルな日本」がキーワードになるでしょう。
タイネイティブ・サーイが見たタイ市場の今後
タイは今後、韓国や台湾、香港のように、訪日観光ヘビーリピーター市場になっていくだろうと予測しています。
タイとの相互観光ビザ免除が開始された中国など、競合となる旅先が増えつつあるものの、親日家の多いタイ人にとって、日本が特別な旅先であることに変わりなく、今後もますます訪日客は増えていくだろうと思われます。
タイ向けプロモーションの実績
ツナガルではインバウンド向けプロモーションを展開しています。
下記はタイ向けプロモーションの実績一覧です。
タイに向けた日本の観光促進を目的に、SNSを活用した観光地のプロモーション活動や、タイ人インフルエンサーとのコラボレーション、また自社旅行事業部と連携した旅行博の出展などを行っています。
以下の記事ではツナガルのインバウンドプロモーションや、インフルエンサーマーケティングについて詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
タイに向けた観光プロモーションをお考えの皆様へ
地域の魅力を世界に発信しませんか?
訪日タイ人観光客は、今後も増加傾向が続くと予想されます。地域の魅力を効果的に発信し、多様なニーズに応えることで、より多くのタイ人観光客を誘致することが期待されます。
ネイティブメンバーの在籍するツナガルでは、タイならではの文化や価値観を理解し、効果的なプロモーションをご提案します。
タイ人観光客を誘致したい、観光プロモーションをはじめたい地方自治体・DMOの皆様からのお問い合わせをお待ちしております。