
ASIAN KUNG-FU GENERATION × Omoinotake@M_bit_Project 2025年1月13日(月祝) 渋谷 Spotify O-EAST 『M bit Live #3 』
ライブという空間は、人の心を映し出す鏡であり、歴史と未来を交差させる特別な場だ。
2025年のOmoinotake初ライブ、アジカンとの2マンという贅沢な幕開けは、そんな空間の特性を存分に体験させてくれるものだった。
ナビゲーターの竹中直人氏が「音楽ってまるで人生。生きていく、好きな曲が増えていく」と語りかけるようなナレーションが会場に響き渡り、幕を開けた夜。
Omoinotakeの最新曲『アイオライト』がライブのスタートを飾る。
正直言うと、私は初っ端に『幾億光年』を持ってくるべきだと思っていた。あの曲の圧倒的な知名度と力でまず掴んでから新曲、という流れが良いのでは?とオタクらしくセトリを妄想していたけれど、彼らが選んだのは違った。
『アイオライト』に始まり、『EVERBLUE』、『トロイメライ』――どれもOmoinotakeらしい世界観を丁寧に紡いでいく。もちろん『幾億光年』も後半でしっかり披露され、最後は『トニカ』で熱く締めくくられた。
ちなみにこの日のセトリはこちら。
01.アイオライト
02.EVERBLUE
03.トロイメライ ✍️レオさんハンドマイク
04.anmmolite ✍️レオさんハンドマイク・エモさん シンベ
05.ラストノート ✍️エモさんシンベ
06.ブラックアウト(アジカンカバー)
07.幾億光年
08.心音
09.蕾
10.トニカ
このセトリに、私は思う。
「自分たちの音楽を一番好きになってもらうにはどうしたらいいか」――レオさんがいつかインタビュー記事で語っていた言葉が浮かぶ。
きっとこの日も、ファンだけでなく、アジカンを目当てに来た人々にも、自分たちの音楽を届けることを第一に考えていたのだろう。そう思うと、曲順の意図がじんわりと胸に染みた。
ライブ後にセトリを忘れないように急いでスマホにメモしていると、隣りの男性から「すみません、失礼ですけど、それさっきのOmoinotakeのセトリですか?」と声をかられた。
「あ、はいそうです」
「Omoinotakeすごく良かったです。そのセトリ教えてもらってもいいですか?」
「あ、もちろん。どうぞ」
そういうと男性は自分のスマホを取り出して私のスマホの画面を撮影した。
そのセトリを眺めながら、
「アジカンカバーって書いてるところ、『ブラックアウト』って曲です」
曲名をレオさんが言っていた気がするが、覚えておらず " アジカンカバー " と記していた箇所だ。
「『ブラックアウト』…教えてくれてありがとうございます!」
「いえ、こちらこそありがとうございます。僕は『渦幕』好きなんですけど、最後の曲良かったな。『トニカ』っていうんですね。プレイリスト作って聴きます」
「是非是非、今日やらなかった曲もめちゃいいんで」
「多分全部良さそうですね、どの曲も良かったです」
こんなに気に入っていただいて何とも嬉しい。
今日のセトリ大丈夫だったのかなぁ?とOmoinotakeの曲はどれでも好きな私は、アジカンファンは何をお気に召すのか分からなかったので、この男性の言葉にホッとした。
初めて聴いたアジカンは、会場の一体感が凄かった。
全員が真っ直ぐにアジカンの音楽が好きなんだなぁと体で感じた。
最後は皆と同じように私も手を挙げて音楽を感じた。
よく「自由に」と言ってくれるミュージシャンは多いけど、こういうオキマリのノリってとても大事だと私は思う。
数十年ぶりに行ったライブで変わってない定番があると「おかえり!」と歓迎されている気分になって嬉しくなる。
「いつでも、あなたのタイミングで、あなたが必要だと思った時に聴きに来て」
そう言ってもらってるみたいだ。
アジカンも20年だそうだから、定番のノリがあって、久し振りに足を運んだお客さんも一緒にあの頃を感じながら楽しめる。
最高だと思う。
Omoinotakeの定番はライブ後に必ず演奏する『トニカ』がそうだ。
『トニカ』には、メンバーとファンの間に築かれてきた独特のリズムや儀式のようなものがある。それは、ただの「演奏」ではなく、Omoinotakeというバンドが積み重ねてきた日々や、彼らを支えてきたファン一人ひとりの想いが重なり合う特別な瞬間だ。
最近は、レナちゃんに代わってサックスのサポートをしてくれる天太さんが加わったことで、その場の空気に少し変化が生まれた。天太さんがこれまでクラップしない箇所でクラップするように促す場面があり、私としては少し残念に思う部分もあった。
長年、Omoinotakeを支えてくれているパーカッションのぬましょうさんが「曲の緩急って大事なんだよね」と話していたことがある。この言葉が象徴するように、ファンにとってその「クラップしない静寂の瞬間」は、音楽の中で呼吸を整え、次の展開を待つための大切な間だった。それを意識的に守ってきた時間があるからこそ、その一瞬の空気の変化が、古参ファンにとっては少し引っかかるのかもしれない。
それでも、この変化をどう受け止めるかはファンそれぞれ。天太さんに合わせてクラップする新規のファンもいれば、あえてその静寂を守る古参のファンもいる。結果として、そのクラップの有無が、ファン同士の“歴史の深さ”を測る小さな基準になっているのは、なかなか興味深い現象だ。
私自身、Omoinotakeを応援してきた時間はまだ5年ほど。12年のキャリアを誇るバンドにとって、私は“新規”と呼ばれる存在かもしれない。
それでも、ステージ上から見ているOmoinotakeやぬましょうさんには、きっと古くから応援しているファンと、最近知ったファンの違いが一目で分かるのだろう。そこには、長い時間をかけて築かれた信頼や温かな記憶が詰まっているのだと思う。
だからこそ、私はこれからも天太さんに合わせてクラップをするつもりはない。広い会場になり、観客が増え、エモさんが今まで通りに一人ひとりの顔を見るのが難しくなったとしても、そのクラップをするかしないかの瞬間が私たちを見つけるひとつの目印になってほしい。
Omoinotakeの音楽に触れるたび、彼らと共有してきた小さな約束のような瞬間を、ずっと大切にしていきたいと思う。
最後のアンコールはアジカンとOmoinotake2組で、アジカンの『遥か彼方』をセッション。
レオさんの歌のうまさを改めて再認識した。こんなロックな曲も歌いこなせちゃうとは。その力強く心地のいい声に思わずサビで拳を振り上げていた。
舞台上手ではアジカンのベース山田さんと、Omoinotakeのエモさんが互いの顔を突き合わせながらセッション。これ以上ないくらいの笑顔のエモさんが印象的だった。私は見えなかったけれどドラムも2人でセッションをしていたらしい。
冒頭の竹中さんの言葉通り、好きな曲が増えていく人生は幸せだ。
この日もまた、新しい音楽との出会いが重なり、ライブが終わった後の道すがら、私は胸が少しだけ軽くなるのを感じた。
この夜の音楽も、私の人生にしっかりと刻まれた気がする。
📢"M bit Project"公式YouTubeチャンネルにて、1月24日18時より1週間限定でこの日のライブが無料公開されるそうです。
公開期間:1月24日(金)18:00~1月31日(金)23:59