見出し画像

地獄のナンパにご用心!【癒しを求めて別府旅③】

画像2

門に鬼、看板に鬼、庭に鬼、自販機も鬼、果ては休憩用のテーブルにも角がニョキっと。

画像2

鬼尽しのお出迎えである。
世にも恐ろしい異界の生き物なのだから少しは怖がってもいいのだが、いかんせんポップで賑やかな感じである。顔出しパネルも鬼に首根っこを掴まれた子どもたちが、どう考えても窮地に追い込まれているのにピースをしているのだ。だから私たちもふざけた顔で写真を撮りまくった。

と呑気なものだが、肝心の地獄を前にするとさすがにぞくっとする。

画像3

画像4

どろりと錆びた赤い池。
たちのぼる湯気はぬらりとやってきて、私たちの視界を埋めていく。
周囲の刺々しい植物がおどろおどろしさわ際立たせて、目を凝らせば鬼が今にも姿を現しそうな不気味さ。


むん、と立ち込める臭いは、いわゆる温泉の〝腐った卵の匂い〟ともまた違い、ほんのりと鉄臭い。それもそのはず、酸化鉄や酸化マグネシウムなどが反応して赤くなるそうな。自然の力でこれだけ強烈な色が出るとは。


池の周りを歩いてみると、立入禁止の札を発見。
血を思わす赤と力強い筆跡がおっかない。
とビビったのも一瞬。
硬貨を入れたら出てくるタイプの御神籤を見つけ、軽い気持ちで引いたのは吉。
あれ、赤ってなんか縁起いいやん。


浮かれ気分で足湯も堪能。
こちらのお湯は赤くないのだが、爪先を浸しただけで飛び上がるほど熱い。辛抱強くちゃぷちゃぷしていると、浸かったところだけみるみる赤くなってくる。
なるほど、こっちが赤くなるってことね。
「見て、ここでくっきり色違うわ」
「私の方が赤いですよー」
と三人互いに脚を見せ合い、無意味な自慢大会を繰り広げていると、「すいません」とカタコトで声を掛けられる。

「この温泉って泳げますか?」
隣に座っていた男子学生が半笑いで聞いてくる。周りの仲間たちもにやにや。

「泳いでみたらどうですか?」と78度の灼熱温泉を前に意地悪な返答をしかけたが、後輩が「ダメだよー!熱い!」と優しく教えてあげる。どうやらタイから来た留学生らしい。

「ダメ?」と無邪気に池を指差す。もしかして普通に話しかけただけなのかな?と油断したそのとき、おもむろにズボンのポケットに手を。
「番号教えて」とスマホの準備。
やっぱりナンパじゃないか!


気を取り直して、お隣「龍巻地獄」へ。

画像5

一見、普通の滝壺。
薄い青緑色の穏やかな水面を覗き込んでいると、「次の噴出は20分後です」と案内がある。

ここは間欠泉となっていて、約40分に一回お湯がが吹き出す。この間隔の短さは世界でも珍しいそう。

と聞いても全く下調べをしていないので、そもそもイメージが湧いてこない。気長にジェラートを食べて待っていると、時間を調べてきたちゃんとした人たちが続々集まってくる。池を囲むように観客席が設置されているのだが、そこがいっぱいに。アナウンスによる説明の後、不意にプシューッと音が。

画像6

瞬く間に蒸気とともにお湯が噴き上がる。
岩を突き破らんばかりの勢いに観客はみんな呆気に取られ、しばらくぼおっと見つめる。
その間にも噴き出す量はどんどん増える。

公園の噴水みたいだが温度はなんと100度超え!見るからに熱そうな血の池地獄より熱い。岩で噴出を抑えているが、それがなければ隣の建物より高く飛ぶらしい。文明なしにそんな力が眠っているなんて、やっぱり自然って偉大だ。

シュバババッと噴き上がるお湯を見ているうちに好奇心もむくむく湧いてくる。誰からともなく近寄って記念撮影会の始まりだ。顔に飛沫。轟音で友達の声も聞こえない。だけど、濡れると人って楽しくなるんだな。みんな口を開けて豪快に笑っていた。

これにて地獄めぐりの第一陣は制覇。もうひとつのエリアへはバスで向かう。バス停に並んで待っていると、道の向かいに先ほどのナンパ青年たちが。三人揃って見ないフリ!


地獄も恋も、沸点は高めでお願いします!


画像7

画像8

いいなと思ったら応援しよう!

都村つむぐ
頂いたサポートは書籍代に充てさせていただき、今後の発信で還元いたします。