THE SECONDが呼び寄せた"雷禅の仲間たち"
【作家ツムラのお笑い"知らんけど"論考】
先日、結成16年以上の漫才賞レース
『THE SECOND』の対戦トーナメントが
発表となり、いよいよ大会は本格的な
熱を帯び始める。
さて、ここで考えたいのは、
"どこまでが狙いか、どこまで計算の上だったのか"
という事。
◆
タイトルに込められた意義、
(おそらく)"セカンドチャンス"
の「SECOND」は、当初の企画と
多少ズレ始めたメンバーのはずも、
こちらが功を奏し、かつて見た事のない
大会となり始めている。
つまり、"16年以上"が示す
近年Mで悔いを残した戦士たちだけでなく、
「久しぶりに、もう一度あのバチバチの
中へ」
「置き忘れた何かを取り戻す」
「SECOND」というよりは「AGAIN」
「NOSTALGIA」といった面々が
戦場に舞い戻っている。
この状況、私は
我々世代のバイブル
「幽遊白書」の終盤、
魔界統一トーナメントに、命尽きた雷禅の
かつての仲間たちが、
「オレたちも参加するぞ」と
やって来たあの展開に似ていると感じた。
「ミドルの1番決めるんだろ?
だったら、オレたちも混ぜてくれよ。」
な面子。
◆◆
言ってしまえば、もはや、この大会は
「ミドル-1」。
こちらを、製作側はどこまで意図したのか、
すべて意図し、計算の上の結果だとしたら、
これは凄い。という話。
もしかして、狙い通りだったのか…?
と疑う素材のひとつが、この大会が
1対1のトーナメント、という点である。
◆◆
この大会が、従来の賞レースのような
対戦ルールであれば、
○回戦落ち・決勝○位
といった、ある種明確な順位がつき、
確固たる地位、地盤のある
プロからすれば非常にデメリットも多い。
トーナメントにもその面はあるにはあるが、
タイマンであるが故、
"○○に負けた"の印象が強く、
勝ち負けが比較的爽やかである。
お笑いはあくまで"皆が面白い"。
ギスギスしたものではなく
「お前やっぱつええなぁ!」
「いやお前こそ!」
と草っ原で喧嘩を終えて寝そべっている
夕暮れ…のような、少年マンガさながらの
新しい賞レースになっているのが、
ベテランが参加しやすくなっている
所以なのであろうか。
だとしたら、この展開は計算の上で
成り立っている。
◆◆◆
また、現在のメディアが迎える
「レトロブーム」。
かつての"お笑いキッズ"たちが
「オンバト」「旧M-1」等々を懐古し、
再び楽しめる賞レース…として
当時のゴールデンメンバーたちが
ガチンコで殴り合う番組は
今、非常に求められているコンテンツであろう。
そういう意味で「THE SECOND」とは、
テレビを諦めない
40代以降の視聴者側にとっても、
「2度目の青春」なのかもしれない。
◆◆◆◆
さて、盛り上がりの仕掛けが
分かったところで、
ここで気になるのが、
トーナメント以降の審査ルールだ。
公式には未だ発表はなく、
私も全く耳にしていないが、
ここは非常に重要なポイントである。
抽選配信でも言及があったように、
対戦相手が分かっている、というのは
他の賞レースと違い、かなり
戦い方が変わってくる。
客票が加味されるのか…
先攻・後攻はあのトーナメント表順で
進められるのか…
まさに、ポイントの取り方・戦略は
スポーツ、格闘技。
もちろん、お笑いに「作戦」など
野暮なファクターだが、
勝ち負けがあるのなら考慮するのも必然。
ただ、個人的な考えを言うと、
審査に関しては、できるだけ
フラットに戦えるものであってほしい
と願う。
この大会は、勝ち負けがモノを言う
大会にはなってほしくない。
好カードを一戦一戦愉しみたい。
そして、最後には
誰かが「夢」を掴んでいる、が理想だ。
◆◆◆◆◆
甲子園に近い、と評されているが、
そういう意味では
僕の感覚ではK-1に近いかな。
ファンからしたら、ベストバウトは決勝
ではなかったもんな。
とにかく、審査も結果も納得のいくものになって、
来年もまた、猛者から隠れた名手まで
幅広く揃う大会になるとしたら、
M-1とはまた違った興が乗る
素晴らしい賞レースが誕生するはずだ。
期待を持って、続報を待つとしよう。