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この幸せなホームランを、球場で

昨夜神宮球場での会話

「今日55号出ないかなー」
「なんで?」
「やっぱり背番号の数だけ見てみたいじゃん」

大学時代の同級生と神宮で野球を見るということを今年は頻繁に行っている
2022年9月13日もそんな日
マジックが点灯して、いよいよ優勝目前 、残り試合16

彼女は仕事終わり、20時過ぎに到着予定
湿度は80%あるんじゃないかと思う中、私は19時に間に合った
こんなに蒸した夜にはビールでしょうと必死に売り子さんを探し、見つけたその時…

村上宗隆選手の54号ホームランが飛び出した
最近、球場に行ってもなかなかホームランが追えない
なぜなら球場には野球だけではない誘惑がたくさんあったりする
はぁ
試合内容だけではなく、雰囲気も楽しんでいるからしょうがない
鞄から傘を取り出し、先につば九郎もつけてビールを置いて傘を振る
これがヤクルトの応援の醍醐味

村上宗隆選手はヤクルトスワローズのスタメンとして入団2年目の2019年開幕戦から出場、4番としてその年の5月から打席に立ち続けている
チームは2022年、交流戦から首位となり、守備の固さや打線の爆発など、いいところ満載で、私は京セラドーム、横浜スタジアム、東京ドームにも訪れ、月1で球場へ足を運んだ

交流戦頃からか村上選手のホームランが注目されるようになった
ある時はサヨナラ満塁ホームラン、ある時は5打席連続ホームラン、今期は12本も1試合に2本以上ホームランを打っている
ペナントレースも終盤に差し掛かり、村上選手の記録が大きく話題に上がる

いつか解説の方が「例えチームが負けても村上のホームランを見れば、満足して帰れる」と言っていた
村上選手としてはそんなことは望んでいないかもしれないけど、観客としては確実にその気持ちはある
負けてもホームランが見られれば
なぜ、こんなに村上選手のホームランは人を魅力するのか

彼が打席に入ると球場がグッと静まりかえる
応援歌はラッパのソロから始まり、10秒ほどのイントロのあと、手拍子・太鼓が始まる
短調のちょっと日本っぽいメロディ
手を叩くことでめっちゃ応援してる感がある
多くの観客が、「打ってくれるんじゃないか」と期待をこめ、打席を見つめる
それは、ホームもビジターも関係なく

あの瞬間、球場に静かさが訪れる
売り子の声も、楽しく歓談している声も
球場にいる全員が息を飲み、彼に視線を送る

そんな中で期待に応えてくれる
のし掛かる重圧なんか気にしていないと思わせるくらいの
堂々と
いつも同じようなたたずまいで

応援歌をかきけすようなバットのボールをミートした音が聞こえると、観客の歓声があふれる
ここまでくると、ホームもビジターも関係なく

その日も同じだった
終盤戦に差し掛かり、記録もかかっているとなおさら
そして、来ている人の半分は村上選手を見に来ているのではないかと思うほどの

きっと彼はそんな視線を感じないほどに、目の前の一球に集中し、打席に立っているのだろう

打つ前の球場の静けさと

打った時のバットにボールが当たった音と

スタンドに入っていくボールを目で追いながら徐々に大きくなる歓声と

入った時にはもうすごいという言葉しか出ない

入った瞬間にバックボードに出た表示を、友人は手を震わせて撮っていた
願っていた55号を目の前で見ることができたのだ

チームは負けてしまったのに、偉業を成し遂げている村上宗隆選手に勇気をもらってる
そしてまた彼は言うだろう
記録を更新しているが、これはまだ途中であるということ
日本人で最多本塁打ではない
プロ野球で最多本塁打を

その日の解説
真中満さんと高木豊さんも
「今日見られて幸せですよ」と言っていた

打ってくれるだろうと期待したことにこんなに応えてくれる選手はいるのだろうか

ファンじゃなくても、1度は体験して欲しいと思う

この幸せなホームランを
球場で

#ヤクルト
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#スワローズ

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