野球のドラマは表と裏、どちらにあるのかを考える日
倉本聰は言った
「我々の作るドラマの感動は、なぜスポーツが与える感動に勝てないのか」
2021年11月10日クライマックスシリーズ
ヤクルトスワローズ対読売ジャイアンツ
私はラッキーなことに、神宮球場で見ることができた
今シーズン初の観戦がファイナルステージ初戦
4勝したチームが日本シリーズに進める
18時プレイボール
私が球場に入れたのは40分後
その時点でスワローズ3点のリード
感染症対策もあり、超満員ではない球場の片隅で1人応援することになった
1人で見る野球は
いいプレイを仲間と一緒に喜ぶことはできないけど
何も考えずスーパー自由に見ることができる
1つのプレイに対して自由に感動することができたり、なぜそのプレイなのかと想像を巡らせたり
「隣に誰かいる」という無意識レベルの気遣いを気にすることが全くない
仲間と見るのは楽しい
けど
楽しいのは野球を見ながらだらだらしゃべること
なのかもしれない
野球には表と裏があり
ペナントレースを1位で通過したヤクルトは全て神宮球場のホームゲーム
ホームグラウンドであれば裏が攻撃
私はどちらかというと表のほうがワクワクしていた
甲子園で話題沸騰だった奥川投手が時を経てプロ野球の世界にいる
高卒2年目の投手に託す第1戦
高校時代の奥川選手は知らないけれど、球場で見た彼のピッチングは四球を出さない、打ち取ったり三振取ったり、投球がワンパターン化しない素晴らしいものだった
伸びのあるボールは野球を知らない人でも、一目見れば良さがわかるはず
打ち取ることは球種、狙うコースや打者の打つパターンも考えて投げてるのだと思っている
世の中が進化して
「このデータだからここに投げました」
なんて考え方まで見えるようになったらおもしろいかも
と思うけど、分からないことに思いを馳せて持論を展開していくほうがおもしろいかもしれない
満塁のピンチを迎え、頑張れと応援したくて自然と拍手している
それが観客も同じタイミングで拍手するもんだから、球場全体で応援している気分になる
「頑張れ、奥川!」
心の中の声が聞こえるようだった
その打者を見逃し三振でしとめたりすると、めちゃくちゃ嬉しくなる
これは生で見ているから味わえることな気がした
7回裏
奥川選手に打順が回ってくる
いつものパターンだと継投を見据えて、代打が送られる
私の席からは死角になりネクストバッターズサークルが見えなかった
だから球場に
奥川選手のテーマソング「宿命」が流れた瞬間
心が震えた
これで8回も投げるということ
もしかしたら完投するかもしれないという期待
打席に立ち、送りバントを決めた姿に野球選手としての心意気を感じた
大阪ではオリックスバッファローズの山本選手が完投&完封していた
そして、9回もマウンドに立った奥川選手はプロ初の完投&完封試合を決めた
球場では守備になるとトイレに行ったり、食べ物買いに行ったりする人がわりと多い
私はとてもじゃないけどピッチャーが投げているときに、席をたつことはできない
攻撃は一人
しかし、守備は九人
チーム全体を見ることができる
その人数も目を離せない要因かもしれない
いい守備は確実にいい攻撃につながる
こんなに一球一球投げるたびにドキドキして、祈っていると身がもたないのはたしか
私の野球の山場は確実に守備にある
「我々の作るドラマの感動は、なぜスポーツが与える感動に勝てないのか」
野球ではしばしば予期しないことが起こる
蓋を開けてみないと分からないこともある
関わっている人たちの思いが交錯することがある
誰が犠牲フライには距離が足りないフライで塩見選手がホームに走り出すことを予測していたのだろう
誰が奥川選手がプロ初完封をすると予測していたのだろう
投げられるかもと思っている奥川選手
投げさせてもいいかもと考える高津監督や伊藤ピッチングコーチ
早く奥川選手を降ろしたいと思っているジャイアンツベンチ
スポーツの感動について考えたけど、はっきりと言えないことがいいことかもしれない
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