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03

煮物の亡霊が見えるようになったのは三日前のことだった。
コンビニのおでんを食べていたら部屋に大根やらこんにゃくが一つ、また一つと浮かんでいた。
実害はないが、触れたらどうなるかわからないため避けながら歩いている。イライラ棒みたいでストレスがすごい。腹いせのようにこんにゃくの前で見せつけるようにムシャムシャとおでんを貪り食ったら、食ったぶんだけ浮かぶ数が増えた。霊媒師に相談しても「なにせ煮物の霊は前例がないので…」となにやらお経を唱えてそそくさと出ていってしまった。手元には5000円のお守りだけ残った。
そんな折自宅でくつろいでいると、玄関からガチャガチャ!と鍵の音がした。合鍵を渡している人なんていない。サッと血の気が引いた。ガチャン!と扉が開き、黒尽くめの男が侵入してきた。声も出ず固まる私を見て、男は懐から包丁を取り出した。

その時、部屋中に浮かんでいた煮物が動いた!
物凄い勢いで男に突進していく。大根、こんにゃく、玉子、昆布、ひら天、焼きちくわ、きんぴらの三角揚げ、豆腐揚げボール。風を切り疾走する具材が次々と男にぶつかる。

「なに、おでん?…ッゴブァ」

おでんにボコボコにされた男が気絶した。ようやく我に返り警察を呼ぶ。即到着した警察に男は引きづられていった。
後日聞くところによると押し入り強盗で、前から狙われていたらしい。なぜ助けてくれたのかはわからないが、おでんは今も私の部屋にいて、毎日イライラ棒みたいに避けている。

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