02
今日も寂しくひとり飲むか、とモツ煮込みの封を破ったらどこからか声がした。
「こんにちは」
「誰だ?どこから話しかけているんだ」
「ここですよ、ここ、ここ」
手元に目を落とすとなんとモツから声が聞こえる。俺は吃驚して袋を放り投げるところだった。
「なんでモツが喋ってるんだ」
「そらモツだって喋りますよ。豚だって喋るんですからモツになったって同じです」
「豚も喋らないぞ」
「あなた達は知能が低いからブウブウとしか聞こえないかも知れませんが喋っていますよ。政治の話だってします。今の首相は駄目ですねぇ、ちっとも国民の…」
「いやもういい、わかったから止めてくれ。そんなに喋られたら食いづらくなる」
「ちょっと!まさか食べるおつもりですか。折角言葉が通じたんですし、もっとお話しましょうよ」
「煮物の事情なんか知らん。俺は腹が減ってるんだ」
バクリと口に入れるとそれっきり煮物の声は聞こえなくなった。あれは夢だったのだろうか、とその日の出来事はいつしか忘れていった。
数光年先、宇宙船の中で生物が会話をしていた。
「次に着く星はどんなところだ」
「地球と言う星です。空気が綺麗で水がたくさんあります」
「どれどれ。おお、良いところだな。しかし随分小さいな。これで足りるのか?」
「小さいですが数はたくさんいるみたいです。我々二人の腹を満たすには十分でしょう」
そうして地球に降り立つと、二匹はあたりに散らばる住人をつまみ上げた。
「なかなか活きが良いじゃないか。どれ、いただきます」
「ちょっと待ってください、アナタ達はなんなんですか。まさか私を食べるおつもりですか」
「なんだ言葉が通じるのか。そうだ、俺たちは宇宙を旅しているB星人だ。ここには食事に来た」
「そんな、あんまりだ、折角言葉が通じたんですし、話し合いで解決しませんか」
「飯の事情なんか知らん。俺は腹が減ってるんだ」
そう言うとB星人は住人をバクリと食べてしまった。