【レポート】わらぐつをつくる技術を継承しよう2023~草履・わらじ・雪ぐつづくり~
藁(わら)で編み上げた草履や雪ぐつなどの民具。失われつつあるその藁細工の技術を継承しようと、師匠である俊一さんから技術を継承する連続講座を、2021年にスタートしました。この記事では、3年目となる2023年度に行われた連続講座の様子をお届けします。
2023.4.16 第1回:草履をつくろう
「わらぐつをつくる技術を継承しよう2023」の初回講座を遠野ふるさと村で開催しました。生活の道具から信仰に至るまで、昔から様々な場面で使われる藁。その藁を使って草履、草鞋(わらじ)、雪沓(ゆきぐつ)をつくる技術を習おうというものです。講師は、毎日炭焼きの仕事に行くためにわらぐつを編んでいた93歳の佐々木俊一さん。相変わらず元気です!
技術継承が目的のため、これまで受講した方に継続参加いただきながら、毎年新規で習いたい人を迎えています。
今年度新たに参加される5名の方々は遠いところでなんと愛知県からいらっしゃいました!
習得目標である藁の雪ぐつを見て「靴下は履いたんですか?」という質問に対して「これは裸足で履いたんだよ、ごんど(わらくず)を詰めて履いたんだ。ちっとも寒ぐねんだ。不思議なもんだよ藁って」と俊一さん。
昨日はまず、すべての基本となる草履作りを習いました。初めての手の使い方に苦戦しながらも、教えあって形にしていきました。曲り家で賑やかに過ごす時間もこの講座の醍醐味です。
2023.6.18 第2回:草履をつくろう②
わらぐつづくり技術継承講座、2023年度第2回目を開催しました。全ての基本となる草履を最後まで仕上げることが出来ました!皆さんの第一号が完成。
2年目、3年目の方も、わらぐつを遂に完成させる等、皆さんの笑顔がはじける1日でした。
天気も良く、心地の良い風が通り抜ける曲り家。そんなロケーションで手を動かしつつ、おしゃべりしながら過ごす時間が、皆さんの毎回の楽しみにもなっているようです。
2023.7.16 任意参加の練習日&馬の里へ馬用わらじを納品に
わらぐつ技術継承の会、奇数月の第3日曜日は任意参加の練習日です。
今日は藁打ち機や木槌を使って藁の下準備から始めました。藁打ち機は湿気が多いと藁が巻き付いてしまうようです。道具のクセを知ってうまく使う、というのも大事ですね。
隣ではふるさと村にある唐箕(とうみ)を使って小麦の唐箕がけをしており、昔の道具についても学ぶ機会となりました。終日あいにく雨でしたが、しっとりした空気に雨音、ツバメの声、唐箕がけの音など、いろんな音に包まれた空間で過ごしました。
終わった後は依頼のもと作ってみた馬わらじを履いてもらいに馬の里へ。前足にぴったりはまって、感動でした!冬に滑らないように履いて使ってもらう予定です。
2023.8.20 第3回 縄ない&しめ縄づくり
わらぐつづくり技術継承講座、2023年度第3回目を開催しました。
8月は師匠の俊一さんの誕生月ということで、皆でお祝いをしました。長生きしてね!(ハッピーバースデーの歌を俊一さんも手を叩いて一緒に歌ってたのがかわいかった)
次回からは雪ぐつづくりになるため、おさらいしたり手の使い方を確認しながら皆草履を作りました。
日差しが強く暑い中でしたが、その分ふるさと村の緑は濃く鮮やか。その景色を視界に入れながら和気あいあいと過ごした1日となりました。
2023.10.16 第4回 わらの雪ぐつづくり①
わらぐつづくり技術継承講座、2023年度第4回目を開催しました。
今回から甲と足首を覆う雪ぐつづくりに突入!難しさに混乱しながら、少しづつ確認して進めました。時間が過ぎるのがあっという間に感じましたね。
肌寒くなりましたが曲り家の扉を開けて行っていたので、外国人の方の見学も多く、皆さん興味津々に見ていかれました。
2023.12.17 第5回 わらの雪ぐつづくり②
わらぐつづくり技術継承講座、2023年度第5回目を開催しました。
前回から始まった雪ぐつづくり!外は冬本番な天気でしたが意外と曲り家の座敷はあたたかく、今回もワイワイとにぎやかに開催しました。
手順をおさらいしながら、1期生・2期生・3期生が教え合い少しずつ少しずつ完成に向かって進んでいっています。2月に間に合うか・・!?
そして今日はなんと、北上の相去鬼剣舞保存会の方々が来てくれました。実はこれまで長らく岩手の郷土芸能の足元を支えていたゴム製のわらじの製造が中止になったことで、別のわらじを探していらっしゃいました。そんな折にわらぐつ技術継承の会と今回ご縁が生まれたのです。
私達が作っているのは藁製なので、耐久性がゴムに比べて劣り、滑りやすいです。そのためゴム製の機能を持ちつつ、製作可能なわらじを開発しなければなりません。試作品をお渡し済みでしたが、踊っているところを見てほしいということで、講座の日に合わせてお越しいただきました!
意外と履き心地が良いと踊った方から足元の感想をいただき、交流しました。
足元が気になるのはもちろんなのですが、今回曲り家の中で目の前で舞を披露いただき、その迫力にとても感動しました!ありがとうございました!
2024.1.21 任意参加の練習日&ゴールデンカムイを観に行こう
今日はわらぐつづくりの講座、任意参加の練習日でした。が、早めに切り上げて、先日公開された映画『ゴールデンカムイ』を観に行ってきました!
実はこちらの作品に、わらぐつの制作協力をさせていただきました。町で人々が行き交うシーンでわらぐつが使われております。
足元に注目して映画を観たのは初めてでしたが、登場したときは皆で「あっ!」と嬉しくなりました。
エンドロールに「岩手県遠野市 わらぐつ技術継承の会」のクレジットをいれていただいております。
映画自体とても面白かったです!装飾美術に至るまでアイヌ文化へのリスペクトを感じました。
俊一さんは『ラストサムライ』以来の映画館。励みになるね、と笑顔でした。皆さんもぜひ映画館でお楽しみください!
2024.2.18 第6回 わらの雪ぐつづくり③
年度の締めくくり!わらぐつづくり技術継承講座の第6回目を開催しました。
雪の上で履くのを楽しみしていた2月の最終回ですが、異例の暖かさで春のような陽気。戸を開けておしゃべりを楽しみながら、雪ぐつづくりを習いました。
俊一さんの「ふぐして(解して)もう1回だね」の言葉にヒヤヒヤしたり笑いあったりしながら、時間いっぱい藁に触れました。
雪ぐつ完成の道のりは長く、進捗度はばらばらですが、習っていた人が教える側にまわったりと、技術は確実に皆さんに継がれています。
参加者の声
まとめとこれから
技術継承の講座を初めて丸3年が経ち、俊一さんの弟子は25名になりました!俊一さんも「自分が作ったんだっけ?」と見間違うほど上手に作ることができる継承者が育ってきました。
2023年は、映画の小道具としていくつかの作品にわらぐつを提供したり、郷土芸能団体に納品したりした1年でした。ご相談が多かったので、お弟子さんたちにも作っていただきました。実際に人に履いてもらうものを作るとなると一層神経を使いますが、そうしてこそ、技術が自分の手に身についていきます。
一方、継承における課題もたくさん感じた1年でした。
まずは藁の調達。以前もち藁をいただいた農家さんは来年は高齢でもち米のはせがけはやめる予定とのこと。年々藁の調達は難しくなっています。
また、郷土芸能団体の足元を支えてきた「ゴムわらじ」の生産終了。
これにより、ゴムわらじを使っていた鬼剣舞やさんさ踊り、しし踊り団体は次の形を模索中のようです。藁のわらじ、ゴムわらじのそれぞれの良さを生かしたような新たな形をつくれないかと、今動いているところです。
このように見えてきた課題もありますが、映画に名前が載るなど、活動が発展した1年でもありました。俊一さんを囲みながら仲間と集まることが楽しみになっていますので、来年度も継続して行っていきたいと思います。
俊一さんが『シニアズ』というフリーペーパーに取材されました!
わらぐつのご購入はTONOMADEから
わらぐつはこちらからご購入いただけます。草履、わらじ、ツマゴなどもご相談ください。代金の一部が技術継承活動に充てられます。
2024年度の連続講座について
わらぐつをつくる技術を継承する講座を来年度も開催します。新規受講者も6名ほど募集いたします!
これまで3年間「つくる大学」で行ってきましたが、会場としていた「遠野ふるさと村」が主体となり、村の正式な連続講座として開催することとなりました。約3年前、うちでは体制的にできないから、と相談されてつくる大学で始めた講座が、今正式に遠野ふるさと村の講座になります。
ふるさと村には田んぼもありますしわら打ち機もあります。米づくり、稲わらの確保、冬の手仕事と、山里の暮らし体験施設を舞台に豊かな循環を作ることができるんじゃないかと改めてワクワクです。
運営は引き続き多田が担当します。ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。
2022年度(2年目)のレポート記事
2021年度(1年目)のレポート記事
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