食用リンゴを作らない! シードルに特化した「無摘果リンゴ」という新たなチャレンジが始まります
「奇跡のリンゴをつくりたい」自然栽培を貫くリンゴ農家の苦悩
リンゴの無農薬栽培といえば、映画『奇跡のリンゴ』(2013年)で注目された木村秋則さんを知っている方も少なくないだろう。
木村さんは1949年青森県岩木町(現弘前市)出身。農薬に過剰に反応する妻の影響で、1978年から無農薬のリンゴ栽培への試みを始めた。
しかしその道のりは長く、手作業で害虫を駆除するなど膨大な労力を費やしても小梅程度の実しかならず、10年近くにわたって収入のない状態が続いた。それでも諦めることなく試行錯誤を繰り返し、ついに完全無農薬の「奇跡のリンゴ」を実現した。
この出来事は、リンゴ農家に大きな衝撃を与えた。
岩手県遠野市にも、「奇跡のリンゴ」を作ろうと木村秋則さんのお弟子となって18年近く挑戦を続けてきた人物がいる。プロジェクトのキーパーソンとなる、佐々木悦雄さんである。
アレルギーや環境被害といった弊害のある、利益重視で農薬を散布するリンゴ栽培はやりたくなかったという悦雄さんは、2005年に木村秋則さんと巡り合い、農薬や肥料を使わない自然環境のなかで、リンゴの生命力を生かした「自然栽培」に魅了された。
しかしその道は険しく、自然栽培を始めた最初の3〜4年は、木が弱って枯れてしまったこともあるという。
リンゴを無農薬で栽培することの大きな課題のひとつに、「とにかく手間がかかる」ということがあげられる。農薬を使わない分、手間隙をかけて初めて成り立つのが、自然栽培なのである。
しかし悦雄さんの取り組みが次第に人々の関心を集め、2019年には、ドキュメンタリー映画『どこかに美しい村はないか』へも出演した。行き過ぎたテクノロジー文明に警鐘を鳴らそうとする主題のなかで、悦雄さんの自然栽培への挑戦が描かれた。
映画出演によって、応えきれないほどにリンゴの注文が増え、興味を持ってくれる人の多さに、嬉しい悲鳴をあげた。
しかし、これまで手間隙をかけて自然栽培を貫いていた悦雄さんも近年は自身の体力の低下を感じるようになり、2021年に体調を崩して2ヶ月入院した。それをきっかけに、これまでのようなリンゴ栽培方法に限界を感じ、やめる決断を迫られていた。
食用リンゴは作らない。「無農薬無摘果リンゴ」を、シードルに
悦雄さんがリンゴ栽培をやめるという話を耳にして、悦雄さんのリンゴを「無摘果」の状態でシードル(ハードサイダー)の原料として活用させてもらえないかと提案したのが、遠野でクラフトビールの製造・販売を手がける遠野醸造の元醸造長、太田睦さんだった。
「摘果(てきか)」とは、食用リンゴを栽培する過程で欠かせない、果実の間引きの作業のことだが、今回あえて食用リンゴを作らないという前提で、この摘果作業を最小限にすることにより、作業量を圧倒的に削減することが可能となるという、逆転の発想をした。
2017年に創業した遠野醸造は、ホップの産地として有名な遠野で、地域に根ざしてホップ産業を盛り上げようと設立。ビールを通して人生が豊かになること、オープンな醸造所として交流のなかから生まれるお店作りを経営理念に掲げている。
遠野や岩手ならではのビールを作りたいという想いで、生産者と直接コミュニケーションを取りながら、これまでも白樺のビールや生姜のビールなど、その土地の産物を生かした数々のビールを製造してきた。
東北にはリンゴが多いことから、創業以来、リンゴのシードル(ハードサイダー)にはずっとチャレンジしたいと思っていて、2019年からは毎年チャレンジしているという。
しかし、リンゴのシードルを作るうえで課題となるのは、原料となるリンゴの価格、加工費や酒税の高さから、トータルとしてコストバランスをとることが難しいということ。食用リンゴを買うとなると、採算が合わなくなるのが現状である。また、日本のリンゴは甘く、食用リンゴや加工用リンゴのジュースは、シードルにするには糖度が高すぎるという課題もあった。
リンゴ栽培をやめる農家は通常、リンゴの木を抜いてしまうことが多く、「木を抜かずに活用させて欲しい」と言うには、自分たちでメンテナンスをしたり農薬を散布する必要があるため、なかなか踏み切れずにいた。
そんななか、もともと交流の深かった悦雄さんが、リンゴ栽培をやめるけれど木を抜いてしまうのは忍びなくて、最低限のメンテナンスだけはしていく意向があることを知った。また、丁寧にリンゴを作ってきた悦雄さんのリンゴの美味しさを知っていただけに、悦雄さんのリンゴでシードルを作りたいという強い思いが芽生えたのだという。
遠野醸造では、クラフトビールの醸造所であるという特色を生かし、発泡酒免許の要件に則って、ホップを加えた「無摘果リンゴ」のシードルづくりを試みている。
遠野産「無農薬無摘果リンゴ」100%シードルを目指して
岩手県紫波町には、シードル(ハードサイダー)の醸造に特化したブルワリーがある。Green Neighbors Hard Ciderである。
もともとは盛岡でクラフトビール専門のビアバーをやっていたが、海外の原料ばかりで製造されたビールへの違和感から、100%その土地のもので作ることが可能なハードサイダーに絞って製造を始めた。
Green Neighbors Hard Ciderでは、摘果リンゴと食用リンゴのジュースを合わせる形でハードサイダーを製造してきた。今回の挑戦は、摘果せずに栽培した無摘果リンゴだけでつくってみる、という部分にある。ハードサイダーづくりへの飽くなきこだわりが、このプロジェクトと合致し、共同でプロジェクトを進めていくこととなった。
これまで使用してきた、食用リンゴの栽培過程で出る「摘果リンゴ」よりも熟成が進んだ、ハードサイダーのためだけの「無摘果リンゴ」なら、加工用リンゴを加えなくても充分な品質のハードサイダーができるのではないかと期待を膨らませている。
もしこのプロジェクトが成功したならば、後継者不足から次々と廃業を余儀なくされているリンゴ農家の力になれるのではないかというのも、今回このプロジェクトに参画した理由のひとつだという。
「無摘果」という前代未聞の栽培方法は、果たして成功するのか。
それぞれの醸造所で、どんなシードル(ハードサイダー)が生まれるのか
もし成功すれば、廃業を考えている全国のリンゴ農家やシードル醸造家に、意味ある貢献ができるかもしれない。
大きな可能性を信じた小さな試みが、静かに動き始めている。
リンゴ栽培から、シードル作り、ブランディングまで共にチャレンジする仲間になりませんか?
悦雄さんの甥にあたる佐々木大輔さんはこのプロジェクトを、ただ単に無摘果リンゴのシードル(ハードサイダー)を製造・販売するということに終わらない、「ユーザー参画型プロジェクト」として構築した。
その活動の土台になるのが、「Discord」と呼ばれるオンラインコミュニケーションサービスで集まった「TONO DAO」というコミュニティである。
もともとは「NextCommons DAO TONO」という、株式会社Next Commonsの経営に関するやりとりを行う場だったが、遠野に関わりのある人たちとの雑談のなかで新しいプロジェクトが生まれてほしいという思いから、名称を「TONO DAO」に変更し、遠野に関わりのある人なら誰でも入れるオープンな場としてリスタートした。
現在は遠野に住んでいない人も多く参加し、遠野に関心を持っている人たちの情報交換の場となっている。
今回このプロジェクトを進めるにあたって、遠野に関心のある人たちを巻き込んで共に進んでいくために、TONO DAOのコミュニティを活用しようと動き始めている。佐々木大輔さんは、「成果物の無摘果リンゴのシードルを楽しんでいただくのはもちろんのこと、その試行錯誤のプロセスを共に楽しんでいただきたい」と語る。
成功も失敗も、消費者の皆さんと共に味わいたい。
私たちと一緒に、リンゴ農家、シードル醸造家、オンラインコミュニティに新しい貢献をしてみませんか?
(撮影・ライティング ももばち企画 千葉桃)
参加方法
プロジェクトは、以下のようなロードマップで進行する予定です。
プロジェクトの参加券は、2月22日(水)の20時から一般発売されます。以下の購入方法をご確認ください。
購入方法
価格: 11,000円(税別)
販売開始時刻: 2023年2月22日8時
販売場所: [一般販売] Tono Hard Apple Cider
販売個数: 66個
販売内容: PolygonチェーンのNFT。商品(参加券)のお受け取りにはMetaMaskが必要です。こちらのヘルプをご参照ください
注意: すでに「Game of the Lotus 遠野幻蓮譚」のNFTをお持ちの方には、2月15日(水)の20時から先行販売を行います。詳細はTONO DAOのDiscordのアナウンスメントをご確認ください
NFTのユーティリティ
本プロジェクトのメンバーだけが入れるDiscordチャンネルの参加権
悦雄さんのリンゴづくりに参加したり教わったりできる権利
商品ブランドを決定するための投票権
完成したシードル6本がご自宅に郵送されてくる権利
Game of the Lotusのキャラクターの限定アイテムパックの入手権
三人のイラストレーターが描き下ろした新規イラスト(1NFTにつき1イラストをランダムに。事前に選ぶことはできません)
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