気候変動に「共創」からアプローチ~副業で目指すこと~
こんにちは。
5月から新たにTSUKURUに参画したDaiです。
普段は民間シンクタンクに勤務しており、今回は副業として参画することになりました。
私のTSUKURU参画までの経緯は、インターン生の池田さんがインタビュー記事を作成してくださったので、よろしかったら是非ご一読ください。
今回は、上記インタビューの補足として、私が、
シンクタンク業務で感じた日本の環境政策の課題と「共創」の可能性についてご紹介します。
1.環境政策の基本は「規制」
日本の環境政策の基本的なアプローチは、「規制」です。
規制によるアプローチは、日本で最初の環境問題である公害問題から続いています。
昭和 31(1956)年に公式認定された水俣病は、化学工場からの排水に含まれるメチル水銀が原因でした。
そこで、事業者に有機水銀の使用制限や適正処理を義務付けることで改善を図りました。
また、1960年代から深刻化した大気汚染は、自動車の排気ガスが主な原因でした。
そこで、事業者に製造する自動車の排気ガスに厳しい規制をかけて改善を図りました。
そして、現在、これらはいずれも一定の成果が認められています。
2.規制がうまく機能した理由
なぜ規制によるアプローチがうまくいったのでしょうか?
この文脈における「規制」とは、環境に仇をなす悪い”何か”を取り締まることです。
いいかえれば、必ず被害者と加害者が存在します。
公害問題は「地域環境問題」のひとつとされています。
問題の範囲が地域で限定されるため、被害者と加害者を特定しやすいところが特徴です。
被害者と加害者が特定しやすい場合、規制は非常によく機能します。
社会からも被害者救済の大義名分を得やすく、取り締まる対象も一部の事業者ですむなので、行政の立場からすれば非常にやりやすいのです。
こういった成功体験を積み重ねてきたためか、日本の環境政策は「規制」にやや偏ってきた印象があります。
3.規制だけでは解決できない気候変動問題
平成の時代に入ってから問題視されるようになったのが、気候変動問題をはじめとする地球規模の環境問題(地球環境問題)です。
ここで質問です。
気候変動問題の被害者と加害者は誰でしょうか?
・・・
パッと思いつくのは、被害者は赤道直下の島嶼国、加害者は先進国でしょうか。
では、私達先進国に住む人々に、加害者の意識はありますか?
少なくとも、私は実感がありません。
知識として、自分の生活で排出された温室効果ガスが温暖化につながり、海水面の上昇につながっているということは、理解しています。
でも、それを責められることもなければ、自ら罪の意識を感じる機会もありません。
地球環境問題の特徴は、被害者と加害者が特定できない点です。
これは、
・私たちは皆、被害者であり加害者である
・因果関係が複雑で被害者と加害者の双方が影響を認識できない
などが原因だと考えられます。
被害者と加害者が特定できない場合、誰を規制したら誰が救われるのか不明瞭なため、規制によるアプローチが取りづらいのです。
4.規制による気候変動政策の成果
初期の気候変動政策は「取り締まれるところからやろう」というものでした。
すなわち、政府が言いやすい相手(大企業)に努力義務を課すことです。
”努力”義務なので、罰則はありません。
それでも、このような規制によるアプローチは、すでに一定の成果を上げています。
オイルショックを契機に制定された省エネ法は、気候変動対策の側面ももつようになり、事業者にはこれまで以上に省エネ促進に努めました。
結果、日本は世界でトップレベルのエネルギー効率を誇るまでになりました。
各国のエネルギー効率の比較(出典-1)
自動車や家電の性能向上も同様です。メーカーに対して、製品にその年の最高レベルの省エネ基準(トップランナー基準)を設けることで、メーカーは継続的に効率向上に取り組んできました。
乗用車の燃費の推移(出典-2)
結果、リーマンショックの影響を受けた時期を除いて増加傾向だった温室効果ガス排出量は、2013年度以降減少に転じています。
日本における温室効果ガス排出量の推移(出典-3)
他にもたくさんの努力があって、ようやく、その成果がみえてきたところではないでしょうか。
5.政策の現場で流れる手詰まり感
一方、目標に目を向けると、まだまだ取り組みが不足しているといわざるを得ません。
直近の日本の温室効果ガス排出削減目標は、パリ協定で提出した約束草案の「2030年度まで30%削減(2013度比)」です。
しかし、気温上昇の影響を最小限に抑える(1.5℃目標)には、2050年度までに排出量を正味ゼロにする必要があるとさえ言われています。
1.5℃目標に向けた日本の温室効果ガス排出量削減シナリオ(出典-4)
私はシンクタンク業務でさまざまな事業者にヒアリングしてきましたが、どの事業者も真剣に努力義務に向き合っていると感じました。
実際、その成果も出ています。しかし、それでもまだ足りない。
事業者だけでできることは、もはや少なくなってきているのです。
そんな中、政策の現場では、
「何か面白い事例はありませんか?」
とか
「イノベーションの促進を」
などといった、まだ見ぬ何かに期待する声をよく聞くようになりました。
事業者だけでなく、政策立案者も、手詰まりになりつつあるのです。
6.共創というアプローチ
このように、従来の規制によるアプローチが有効な領域は少なくなってきました。
そのため、今後、気候変動問題解決に向けては、規制以外のアプローチも本気で考える必要があります。
では、どうするか。
私は、「共創」というアプローチに活路がないかと考えています。
先ほど述べたように、気候変動問題は被害者と加害者が特定できません。
これは、言い換えれば、誰も当事者意識がないということです。
逆に、当事者意識を持った人が増えれば、自ずと従来の規制的アプローチの効果も高まります。
そうすると、これまでコンセンサスが取れずに実践できなかった対策も、実現できる可能性が出てくると考えます。
当事者意識を生み出すには、当事者になるしかありません。
被害者と加害者になれないなら、解決者になればよいのです。
(※簡単に言うな、という突込みは我慢してくださいm(_ _;)m )
それが「共創」です。
私は、
できるだけ多くの方と
気候変動問題について「共創」することで
当事者意識を持った人が増え
ゆくゆくは解決につながっていく
そんな活動を進めていきたいです。
そのために、「共創」につながる共感を集めるべく、事業開発の道を志し、
本業以外でも「共創」の機会を求めてTSUKURUへのジョインを決意しました。
相当青臭いことを言っていることは自覚しています。
でも、自分の感じた課題に素直に向き合わず、斜に構えて評論家になるよりは、遥かに面白い人生だと、私は思います。
もし、TSUKURUでの「共創」にご興味のある方がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。
私自身、皆さまと何らかの形で一緒できる機会を楽しみにしております。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
[出典]
1:資源エネルギー庁(2015)「海外の省エネの進捗状況等について」
2:全国地球温暖化防止活動推進センターホームページ(2020年5月20日閲覧)
3:全国地球温暖化防止活動推進センターホームページ(2020年5月20日閲覧)
4:増井利彦(2019)「2℃目標、1.5℃目標の実現のために」国立環境研究所(2020年5月20日閲覧)
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この記事を書いたのは
Dai
副業としてTSUKURUにジョインした32歳
関心のあるテーマは気候変動問題
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