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カッコいい英作文のコツ #2 : 名詞化

前回、information flow(文章・情報の流れ)について書きました。
information flowはacademic writingだけでなく、普通のライティングでも使えるコツだという話をしました。


今回は、
academic writing独特のコツを1つお伝えしたいと思います。


名詞化(nominalization)を使おう

名詞化とは、
その名の通り、動詞や形容詞など、
他の品詞を名詞に変えることです。
例えば、
move(動詞)を名詞にするとmoving、
あるいはmotionとなります。
他には、
easy(形容詞)→ease、
frequently(副詞)→frequency
などがあります。

この名詞化と呼ばれるものが
academic writingでは多く使われます。
そして使われる時のポイントが2つあります。 

ポイント1:主語になる(そして日本語に訳すと変になる)

よく「英語の主語は無生物主語を好む」
とか聞いたことありませんか?
簡単にいうとそれです。
日本語の影響で、
日本人はだいたい主語を人にしがち
(「〜である、がある、存在する」の主語を除く)
ですが、
academic writingでは
主語を人にすることは少なく
(ありますが、それは目的がある場合のみ)、
基本的には
無理やり感のある主語になります。
しかし、
それがカッコよく見えるんです。

例として、
私が実際に書いた文を紹介します。
大学院の受験書類に
statement of purposeというものがあるのですが、
その文章の中で
私のそれまでの経験を書く必要がありました。
普通に書けば、

(ア)
I have taught English at junior high school and high school for six years. Although I enjoyed teaching my students, I was striving to improve my teaching skills. Eventually, I decided to pursue a Master's degree in TESOL in order to learn more effective teaching methods.  (49 words)

となったかと思います。
ですが、一応大学院は
academic writingが要求されるので、
僕が書いたのは下のような感じです
(説明用に多少いじっています)。

(イ)
My six-year experience of teaching English to junior and high school students taught me both the joy of teaching and the need to develop my teaching skills. My search for better teaching methods eventually led me to decide to pursue a Master's degree in TESOL.  (46 words)

どうでしょう?
結構academicに、
カッコよく感じませんか?
そう感じる理由は名詞化です
(だけではないですが)。
(ア)の文章では全ての主語が
"I" です(ダメではないんですけど)。
一方で(イ)の文章では、
(ア)の"have taught"「教えた経験がある」
という動詞句が"experience of teaching"
というふうに名詞化されて
主語となっています。
また(ア)の
"to learn more effective teaching methods"
という不定詞句が
"My search for better teaching methods"
という主語に変わっています。
さらに、主語にはなっていませんが、
(ア)の”enjoyed teaching"
という動詞句も
"joy of teaching"
という名詞句になっています。

「ん? experienceとsearchはどこから出てきた?」
とか色々疑問を持たれる方も
いるかもしれませんが、
ここで大切なので、
(ア)の主語が全て"I"なのに対して、
(イ)の主語はすべて無生物主語だということです。
そして、
それらの主語は名詞化されている
(どうやってそうなったのかとは
また別の機会に)
という事です。

この主語の違いが
普通の英語(everyday language)との違いで、
(イ)の文章をカッコよく(academicに)感じさせる
要因の一つになっています。

感覚の良い方は
もう勘づかれているかと思いますが、
(イ)の文章をacademicに感じさせる要素は、
名詞化した語を主語にするだけではありません。
そのもう一つの要素がポイント2です。

ポイント2:情報を詰め込む

(ア)と(イ)のそれぞれの文の主語の長さに
注目してみてください。

再掲
(ア)I have taught English at junior high school and high school for six years. Although I enjoyed teaching my students, I was striving to improve my teaching skills. Eventually, I decided to pursue a Master's degree in TESOL in order to learn more effective teaching methods.  (49 words)

(イ)
My six-year experience of teaching English to junior and high school students taught me both the joy of teaching and the need to develop my teaching skills. My search for better teaching methods eventually led me to decide to pursue a Master's degree in TESOL.  (46 words)

(ア)のそれぞれの文の主語は
すべて "I" で1語です。
一方、(イ)の最初の文の主語は、
"My six-year experience of teaching English to junior and high school students"で、
13語もあります。
2つ目の文の主語は、
"My search for better teaching methods"で、
6語です。

このようにacademic writingでは、
主語が(そして目的語も)
長くなる特徴があります。
その時に、
名詞化された語はそれ単体だけでなく、
情報を詰め込むために、
その語の前と後ろに他の語句をくっつけます。
前にくっつく語句として良くあるのは、
冠詞や、数量詞、形容詞、副詞で、
よく後ろにくっつくのは、
前置詞句や副詞句です。

例でいうと、
(イ)の"experience of teaching"の前には
"My"(冠詞)と
six-year(説明が面倒なので形容詞としましょう)
がくっついています。
後ろには"English"(teachingの目的語)と
"to junior and high school students"(前置詞句)がくっついています。
同じように、
"My search"も後ろに
前置詞句の"for better teaching methods"
がくっついています。

面白いことに、
こうやって主語や目的語は長くなるのですが、
実は文章全体としては短くなる
((ア)は49語で(イ)は46語)
のがacademic writing、
カッコいい英文の特徴です。

何はともあれ、
できるだけ簡潔に書いたつもりですが、
多分情報過多になっていると思うので、
以下に覚えていてほしいことをまとめます。

今回のまとめ

academicな、カッコいい英語
を書くために(必要なコツ)は

  1. 名詞化を使うべし

  2. 名詞化した語(句)を主語に使うべし

  3. 他の語もくっつけて主語に情報を詰め込むべし

今回の内容を読んで、
名詞化するコツとか、
他の語句をくっつけるコツとか、
なぜ情報を詰め込むのかとか、
どういう時に"I"を使って良いのかとか、
色々疑問が出てきた方、
良い感覚をお持ちですね。
しかしながら、
これらはそれぞれ別の機会に話します。

academic writingはコツが多数にあって、
それらが複雑に影響しあっているので、
1つの記事で説明するのはほぼ不可能です。
無理やり書いたとしても、
長すぎて誰も読まなくなると思いますし。
そしてさらに、それらのコツを
「いつ使うか」、
「何の目的で使うか」、
「誰を対象に使うか」など、
状況判断する力も必要になってきますので、
その話も少しずつ、
各所に散りばめることで、
反復してお伝えできたらなと思っています。

では、
次の記事を楽しみにしていただけたら
嬉しいです。
ちょっとでも皆さんの
academic writing上達の一助
になれれば幸いです。


続編


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