「息子が自分の事を名前で呼ぶけども」の話
ウチの息子は小5だが、いまだに自分の事を名前で呼んでいる。
小1くらいまでは、誰の前でも名前で呼んでいたが、小2になった頃からか、友達の前では「オレ」というようになった。
(おー!何と、内と外の使い分けが出来るようになったか!成長!)
と感心しつつも、少し寂しいなあ、と思い、家族の前では名前で呼ぶのをそのままで良しとしている。
かく言う私も4歳の頃までは自分の事を名前で呼んでいた。
が、ある日。
近所の友達と遊んでいる時、
ふと自分の事を、名前で呼んだ際に
「自分の事名前で呼ぶの、赤ちゃんみたいー!」
と言われたのだ。
5歳の女の子に。
もうそれが、恥ずかしくて恥ずかしくて。
(赤ちゃんじゃないもん!もう絶対、自分の事、名前で呼ばん!!)
固く固く決意したのだった。
下に弟、妹がいたので、それからは自分の事を「お姉ちゃん」と呼ぶ事が多くなり、学校では「私」「ウチ」が標準となった。
時は流れて、30代前半。
ふと、友達と話している時に、自分の事を名前で呼ぶと、何だかくすぐったいような、楽しい気持ちになったので、それ以降、家族や仲の良い人の前では、名前で呼ぶのが当たり前になってしまった。
大人になっても、自分の事を名前で呼ぶ人の心理、みたいなのを調べると、
「幼い心理状態を持ち続けている」
「自分の事を特別視して欲しい願望がある」
とか、うん、まあ、そうじゃろうなー。
と納得するしかない物ばかりである。
物心ついたときからユミと呼ばれていたが本当は
「ユミエ」という名前がある。
「何故、ユミエと正式名称で呼ばないのか?」
と母達に聞くと、
「面倒くさいじゃろ」
と言われ、ドン引きした。
(“え”の一文字が面倒くさいなら、最初からつけなければ良かろう。そして、その一文字が面倒くさいなら、世の中のほぼ全ては君達にとって大層面倒くさいものであろうな)
と思ったが、言わなかった。
勿論、面倒くさくなったからだ。
せっかく素敵な名前を貰い受けたのに、呼んでもらえなかった何十年分の……愛しさと 切なさと 心強さとを埋め合わせしているのだ、自分で。
( ゚д゚)ハッ!
文章にすると悲壮感があるだろうか?
別にそんなでもないのだけれど。
ちなみに夫は自分の事を(私と息子の前限定で)かっちゃんと呼んだりもする。
全員が名前呼びをする、あまりちゃんとしてない家庭かもしれない。
外に出れば、時と場合に応じて呼称が変えられているので、まあ良しとしよう。
他人の名前呼びでイラッとする人がいたならば。
(あー、何かちょっぴり悲しい過去があったのかも……)
と思いを馳せると少しイラつきが薄まる事だろう。
そして、自分もそうだったから、何となく分かるのだが。
他人に対してイラッとする時、
「私はその行為をしたいけど、我慢してるのに、堂々とその行為をしているヤツはズルい!」
という本人すら無自覚の気持ちがこっそりあるのだと思っている。
怒りの内側にあるのは悲しみ、らしい。
何だか切ないな。