「これは端的に言って〇〇〇〇ですね」の話
大学を卒業して証券会社に就職した。
一班のメンバー。
私
同期の相田(女子/カワイイ)
一個上の沢木先輩(男子/カワイイ)
30過ぎの若山係長が直属の上司(男子)
(名前は仮名)
その係長だが。
背は高く、優しいし、面白い……。
しかし、
(こいつ……何か笑顔がな……違和感あると言うか、胡散臭いと言うか)
心の中でこう思っていた。
彼女がいるらしいと聞いて、
「彼女、あんま、趣味良くないよな?」
「元部下らしいよ」
「マジか……」
ある日。
相田と係長の会話が聞こえた。
「何の本ですか?」
「読んで見る?」
「はい!」
私も加わる。
「へー、係長。本読まれたりするんですね」
「貸そうか?」
「面白いんですか?」
「うん、まあね」
「じゃ、借ります」
カバーがされているその本を何も考えず受け取った。
その時の私はまだ何も知らなかったのだ……
(団鬼六?誰だそれ?)
読み進むうち、私は啞然とする……
(エロいヤツじゃねーか!!あのクソがよ!)
(20年前の私は……まだカリッカリに尖っており、割と男性の上司に噛みつ……ストレートに意見を言っていた。お口もお少しお悪かった。今は丁寧な言葉も使えるよ)
月曜日。
係長が話しかけてくる。
「本、読んだ?」
「……。はい」
「どうだった?」
「……。端的に言ってセクハラですね」
「えぇっ?そうなん?」
「ええ、残念ですが……少し嫌だなって思いました……」
こちらがエロい小説と了承の上なら良いのだ。
こちらがそれと知らないのに貸した、というのが問題なのではと、私は思う。
遅れて、相田が出社。
係長は砕けない。
「相田君、本どうだった?」
「いや〜、あれはちょっと……セクハラっぽくないですか?」
「相田君もそう思うん?」
「そうですね……」
私も援護射撃。
「そもそも、そんな本を会社の机の中に置いとかないで下さいよ」
「はい、ごめんなさい……」
「次やったら怒りますよ」
それからしばらくして。
体調不良で会社を休んだ私。
電話がかかって来た。
係長だ。
(え……何?何か……イヤじゃな……)
「……ハイ」
「ちょっと下見て!」
「はい?下?」
「ベランダ出て、下見て!」
当時、私はマンションの7階に住んでいた。
言われた通り、ベランダに出て、下を見ると……
「おーい、おはよー!」
「うーわ!何やってるんですか!!」
「営業の途中に通りがかったから!」
かかりちょうがあらわれた!
どうする?
たたかう
にげる
どうぐ
まほう
……。
たたかう
「係長!」
「はーい」
「マジでやめて下さい!」
「会社休んでたから……」
「いや、そうだとして、家に来るとか、マジでストーカーですよ!」
「えー?」
「マジで、本当申し訳ないけど、ちょっと気持ち悪いです!!」
「マジで?」
「マジです!本当、やってる事ヤバいですよ!ホンマにしない方が良いですよ!」
かかりちょうはにげだした。
その数日後。
相田が会社を休んだ。
お昼の休憩時間に相田から電話がかかってきた。
「ちょっと聞いてよ!」
「何?どした?」
「さっき、家に係長が来てさー!」
「まじで!?」
「こないだ自宅突撃の話聞いとったから、うわ!マジで来たわって」
「どー対処したん?」
「マジで、どうしようかと思ったけど……大丈夫なんで帰って下さいって言って」
「素直に帰った?」
「うん、少し話したら、まあすんなり」
「良かった〜」
3個ほど上の橋本先輩にこの話をすると。
「えー、撃退したんやー。凄いなあ!」
「どういう意味ですか?」
「今まで私が見てきた女の子達は、ああいう事されると、キュンとなって、弱ってるとこつけ込まれて、家にあげたりしてまうんやなぁ」
「え……アレで?係長に?」
「うん。だから、最近の子やなあって思うわぁ」
当時から、キュンの沸点の低さに定評のあるつくね。
そんな私でも
「アレで……キュンと……。なりませんよ。なっちゃダメなキュンでしょ……」
「ウチの会社、拘束時間長いから、体もしんどいし、判断能力も、鈍くなんねんなぁ……」
「橋本先輩は?大丈夫だったんです?」
「私は……防御線はるのめちゃ得意やねん」
「かっこえぇなー」
結論
体が弱ると心も弱くなる
故に
さあ!レッツ睡眠!!
(寝落ちしたあなた)
「あら、寝ちゃったのね……」
ふぁさっ。
(毛布をかけてあげる優しい私)
どう?キュンとしたじゃろうか?