「息子にダサいと言われた日」の話
私は清掃のお仕事をしている。
動きやすく、汚れて良い服を着てはいるが、ある程度小綺麗な見た目になるよう心がけている。
上はジャージ、下はデニム。靴はスニーカー。
とてもカジュアルな格好だけど、可愛い物を身にまとっている方が気分が良いからだ。
それにふと寄ったお店で(例えそれがスーパーとかでも)、自分の姿を鏡で見た時に
(うっ……ガッカリだ)
と凹むのは切ない。
故に私は日々、「ある程度、小綺麗に」を心がける。
しかし、そんなある日。
私の祖母のお葬式の日の事だ。
喪服に身を包み、
「出発するよー」
と息子を呼んだ。すると、しばらく私を見つめ
「何かお母さん……今日ダサいよ?」
「やっぱ?実は私もそう思ってた!」
着替えて鏡の前に立ち、自分の全身を見た時に
(うぉっ、くそダセぇ!)
と思った所であった。
(何でじゃろ?……しゅっとした感じが全く無いよな?全体的にもっさりして……まあ、取り敢えず黒い服着とけばいっかー……葬式じゃしな)
気を取り直して……と思った矢先に言われたので、疑問が確信に変わった。
息子のそう言った感覚はなかなかの物で、服を選ぶ時に
「これとこれ、どっちがいいかな?」
と聞くと
「こっちはカッコいい系、こっちはカワイイ系。お母さんはカッコいい方が似合うんじゃない?気分変えるならカワイイのもいいかもね」
と保育園の時にアドバイスされて、仰天した。
そんな息子にダサい認定されては、もうどうしょうもない。
今日、私は、ダサい!悲しい!
時間は迫っているし、どこかお店に寄って喪服を選ぶ事も出来ない。
もう逃げも隠れも出来やしない。
(はっはっは。お葬式が始まる前から、既にしんみりしたわ)
しめやかな気分が溢れんばかりであった。
しかし思うのだが、何故、女性の所謂フォーマルウェアというのはああいった雰囲気なのだろう。
喪服もそうだし、子供の入学式用のスーツとか……
(いっそお葬式の時にパンツスーツはどうかな?
チェーンソーマンのマキマさん……黒のパンツスーツに黒のネクタイ!めちゃくちゃカッコいい!あれなら素敵!)
と思い、調べてみると
「女性はワンピースやスカートが無難」
やっぱりね!
そうじゃろうな思ってたわ!
令和やぞ!?
あーあ。さよならマキマさん……
次の何某かの法事の時までに、多少なりと素敵な喪服に出会えますよう……