ハリウッド式『三幕構成』を起承転結で説明してみた
『シド・フィールドの脚本術』が翻訳・出版されて以降、日本の一部ではストーリー創りの"最高経典"のように信仰されている『三幕構成』ですが、
発祥の地・ハリウッドでは、今や「いかに三幕構成から脱却するか?」が焦点になっています。『三幕構成』の効力が無くなった訳ではなく、『三幕構成』なんて朝飯前に出来て当たり前。
かけ算九九や方程式みたいなものなので、知らなきゃ話にならないけど、まんまやったんじゃ能がない。でも、ストーリーを組み立てていく上での「チェックポイント」「共通言語」としては有効。と言ったところでしょうか?
詳しく学びたい人はバイブル(※画像参照)を購入して頂くとして、ここではサクッと『三幕構成』のベースとなる概念を頭に入れてみましょう。
◆三幕構成=「起承転結」×「序破急」
まず、三幕構成は
1幕 「起」
2幕 「承」「転」
3幕 「結」
だと思って下さい。脚本を書こうとしていて、起承転結を知らない人はいないと思いますので、そこの説明は割愛しますね?
それぞれの幕でやるべきことは
1幕「起」 状況設定
2幕「承」 対立・葛藤
「転」 危機
3幕「結」 解決
です。「起承転結」の時間配分は1/4づつ。なので2幕は全体の1/2になります。何も難しくないですね (笑)
そして、それぞれの幕を更に3分割します。ここで使うのが「序破急」。シド・フィールド先生はもちろんそんなことは言ってませんが、日本語にするなら「序破急」なんです。
ザックリおさらいしておくと、能や浄瑠璃における「序破急」は
序:低速で静かに、緩やかに
破:拍子を加えて、面白く
急:もっと早く、急速に
それが転じて、ストーリー展開においては
序:物事の始まり(導入)
破:静けさを破り物事が展開していく(展開)
急:急速にクライマックスに向かっていく(結末)
という意味になります。たとえ1幕であっても、チンタラ、ダラダラ状況を説明していてはダメ!「序破急」でどんどん物語をスピードアップしていかなければいけないですし、
2幕に入ったら、一旦仕切り直して「序」からまたアクセルをふかして行く。みたいな緩急も必要だということです。
◆ミッドポイントとプロットポイントは「転」
三幕構成で最も重要なのは『プロットポイント』と『ミッドポイント』。これは日本語にすると「転」と「大転」です。
「起」から「承」に移るところに挟み込む1つ目の『転』を、プロットポイント1(PP1)と言います。別名、キーインシデント(KI)とも呼ばれる、物語が動き出すスタート地点ですね。
映画『タイタニック』で言うと、ジャックとローズの出会いでしょう。
そして2幕の中盤、起承転結でいうところの「転」に当たるところに物語最大の「大転換点」を配置する。これがミッドポイント(MP)です。
タイタニックで言うところの、氷山衝突ですね。ここから主人公たちはどんどん切羽詰まって危機に瀕していきます。
そして2幕から3幕、『転』から『結』に移行する部分に配置する、最後の『転』がプロットポイント2(PP2)。タイタニックだと、2人が海に飛び込むところでしょうか?
プロットポイントだのミッドポイントだの、何だか難しい理論のように言ってますが、要は3幕構成って、
起ー〈転〉ー承ー<大転>ー転ー<転>ー結
で、この〈転〉〈大転〉〈転〉に何を配置するかが物語の要だぜ!と言ってる訳です。
ポーカーに勝ってタイタニック号に乗り込んだジャックがPP1<ローズに出会う>ことでラブストーリーが始まり、タイタニック号がMP〈氷山にぶつかって浸水する〉ことで危機に瀕して、PP2〈海に投げ出される〉ところから結末に向かっていく。
ね、簡単でしょ?(笑)
ただ、三幕構成の概念自体を知らずにお話を作っていると、起から承に移行する時に物語の原動力となる〈転〉(=PP1)が弱かったり、平気でなかったりするんですよ。いや、マジでwwwwwww
脚本を推敲したり、打ち合わせの際に、この話のPP1はどこになるんだろう?遅くないか?ありきたりじゃないか?みたいなことを、三幕構成に照らし合わせながら検証してみるのは、特に初期には有効だと思います。
◆15のチェックポイント〈ビートシート〉
三幕構成の話を始めると、避けて通れないのが、三幕構成に更に細かいチェックポイントを設定したブレイク・スナイダーの〈ビートシート〉です。
これも、ちゃんと学びたければ、コーランのように崇められている経典集をご購入いただくとして・・・(※画像参照)
今回のザックリ解説に、15個の<ビート>=チェック項目を合体してみるとこんな感じになります。
例えば、ストーリー創りで最も行き詰まりやすく、中だるみしやすい2幕の前半=「承」の部分で、ブレイク・スナイダー先生は<⑧お楽しみ>というチェック項目を設けています。
これは何か?というと、最も分かりやすい例は、タイタニックで言うところの、あの、船の舳先で腕を広げたローズとジャックのラブラブMAXシーンです。
映画の中で一番美味しい、予告編で使われるようなカットはここに置け、とスナイダー先生は仰っております(笑)
<⑦ サブプロット>は、後々<⑩ 迫り来る悪い奴ら>で悪役を担うローズのフィアンセ、つまり主人公たちではなく敵側を描く=伏線を貼っておく、とかですね。
あれ?三幕構成って、2幕では対立・葛藤を描くんじゃなかったっけ?という疑問が湧くかもしれませんが。主人公たちって、対立・葛藤しながらも、何だかんだ言って一旦は上手く行くんですよ(笑)
<⑧お楽しみ>シーンなんかで上手く泳がせておきながら〈⑦サブプロット〉≒ 伏線 によって、近々到来する〈MP=大転換点〉で奈落の底に突き落とす準備を着々と進めておけよ?ってことです。
これも、ワークシート的に、最初からここにハメこもうとするよりは「なんか中盤が物足りないな・・・」と思った時に、ふと<ビートシート>を眺めてみると「そういえば、恋人の家庭事情を描いてなかった」とか「悪役のバックボーンを見せてなかった」とか、予告編で使えるような美味しいシーンやカットがないことに気づいたりとか・・・
もしもあなたが、プロデューサーなら「この辺がなんか物足りないんですよね~」の「この辺」や「なんか」を言語化するための手がかりとしては有効なツールになるのではないでしょうか?
まあ、三幕構成もビートシートも、知ってて当たり前。でも、依存し過ぎずにご活用頂けましたら幸いです。