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読むシナリオ 『 サイコ・サイコ・サイコ 』

〇 寂れた雑居ビル

 ベテラン刑事が3人の容疑者を連れて、
 階段を上がって来る。
 後ろから付いて来る若い警官。

 古びた扉を開けると、骨董品屋の倉庫。
 乱雑に並んだ骨董品の奥で初老の店主が
 木彫りの人形を磨いている。

店主「(おもむろに顔を上げ) 久しぶりだな」
刑事「アンタの世話にはなりたくないがな」
店主「こっちだって世話したい訳じゃない」

 刑事、机に札束の入った封筒を置く。
 「!?」となる若い警官。
 店主、封筒に一瞥をくれて

店主「その3人が容疑者か」
刑事「ああ、しかし全員アリバイがある」

 手錠をはめられた3人の男たち。
 店主、ほぼ一瞥もくれずに

店主「一番右だ。だが、直接手を下してない」
刑事「動機は?」

 店主、頬杖をついて男の胸元を見つめ

店主「ない・・・サイコだ」

 刑事、深くため息をつき、若い警官に

刑事「おい、2人の手錠を外せ。釈放だ」
警官「いや、しかし・・・」
刑事「こいつは能力者だ。
   見立てを外したことはない」

 警官、店主を見る。店主、頷く。
 警官、戸惑いながらも2人の手錠を外す。

刑事「悪かったな。行っていいぞ」

 2人、真犯人を睨みつけるように見る。
 据わった目で、睨み返す真犯人。
 3人を引き離すように警官が間に入り、
 行けと促す。出ていく2人。

刑事「(真犯人に) おい殺人鬼、
   取調室に戻るぞ。覚悟しとけ」

 据わった目で、刑事を見つめる真犯人。
 その目を睨み返す刑事。

店主「アンタの手に負える相手じゃない。
   そいつはサイコだ」
刑事「それがどうした。サイコだろうが
   何だろうが、俺が死刑台に送ってやる」
店主「目だ」
刑事「目?」
店主「そいつは、目で他人に暗示を与え、
   人を殺させる」

 と、表で叫び声。警官が窓に駆け寄ると、
 眼下で、今しがた釈放した2人が通行人を
 殺傷している。

 警官が表に飛び出そうとした瞬間、
 刑事が拳銃を抜き、店主の額を撃ち抜く。

警官「えっ?!!!」

 血を流して倒れている店主。
 銃口に残る煙を茫然と眺めている刑事。
 状況が理解できず、立ち尽くしている警官。

真犯人「お巡りさん、何してるんですか?
    殺人事件ですよ」

 警官、ハッと我に返り、戸惑いながらも、
 刑事の手から拳銃を取り、手錠をかける。

警官「午後4時28分、現行犯逮捕」

 警官の額から汗が噴き出す。

警官M「何もかもがおかしい」

 街の人たちを殺傷し続けている2人。

警官M「だけど、この時確信した」

 絶命している店主。

警官M「本当の悪は裁けないんだと―—」

 真犯人、静かに視線を上げカメラ目線に。
 フッと笑う。ブラックアウト。

        - E N D -
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【作者注】真夜中に突然、カオスな話を思いついたので書き殴ってみました。映像化の予定はありません (笑)

法廷では、店主を撃った刑事や、不可解な証言をする警官がサイコパス扱いになり、容疑者2人は精神異常者にされるのでしょう。彼らをそこに追い立てた真犯人は裁かれないままに―—。

【参考記事】from PRESIDENT Online「経営者、記者、警察官のサイコパス度が高いワケ」

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