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【002】脚本を劇的に進化させる3つの「見直し」ポイントとは?
物語はパッションだ! 俺が描きたいこと、伝えたいこと、面白いことを無我夢中で書くんだ。
—— と思ってらっしゃる方、結構多いと思います。その精神、嫌いじゃない。いや、むしろ好きw
でも、夜中に泣きながら書き上げた感動超大作が、昼下がりに、シラフで読み返してみると
「なんだこれ、イケてない・・」
ってこと、ありませんか?
今日は、そんな時に、脚本の何を「 見 直 す 」か?というお話。
① 2大ミッションを明確に
誰かに「この物語の<ミッション>は何ですか?」と聞かれた時に、何と答えますか?
例えば、「桃太郎」のミッションは
鬼を退治して村人を救うこと ですよね。
でも、思い出してみて下さい。「桃太郎」の話を読んで、感動にむせび泣いたことはありますか? 胸が熱くなって、奮い立ったことはありますか?
僕はないです。何故でしょう? それは、
「鬼退治」= 物理的なミッション
だからです。
もちろん、ハードルの高い「物理的なミッション」は、エキサイティングな物語作りに必須なのですが・・
感動の核となるのは、もう1つのミッション
「精神的なミッション」なんです。
例えば「STAR WARS」なら
【物理的なミッション】帝国軍と悪の親玉ダースベイダーをやっつける
【精神的なミッション】暗黒面に堕ちた父を超えて、一人前のジェダイの騎士になる
ですよね。(だいぶ簡略化しちゃってますが・・)
ワクワク、ドキドキするのは、物理的ミッション ですが、心を動かすのは、主人公の精神的なミッション なんです。
さて、そこで、最初の質問をもう一度。
あなたが書いた物語の、
①物理的なミッション ②精神的なミッション
は何ですか?
それがモロに描かれていなくても良い場合もあります。でも、書き手の中で<2大ミッション>が明確に なっていないと、モヤっとした話になっちゃうんですよね。
② そのシーンのミッションは何か?
物語が目指す、大きなミッションが明確になったら、次に各シーンを見ていきましょう。
こんがらがった脚本によくあるのは、1シーンにあれもこれも詰め込み過ぎ ていて、今この瞬間、何を見せたいのか、どこに向かってるのかが分からなくなるパターンです。
それぞれの「シーンのミッション」を
1回整理してみましょう。
簡単な例だと、前半のシーンなら「主人公の置かれてる状況を示す」「敵の存在を売る」というミッションなんかがありますよね。
1シーン 1ミッション。または、シーンの前半と後半で、別ミッションに移行するぐらいが限界。短時間に、重要ファクターを沢山詰め込んでも、お客さんは色んなことを一遍には覚えられません。
複雑になってくるのは、中盤以降。
サブキャラが登場したり、事件が起こったり、アクションがあったり、恋に落ちたり、様々なシーンが出てくると思いますが、その「シーンのミッション」を説明できますか?
「シーンのミッション」があやふやだと、
場の設定や台詞がブレます。
不必要なタイミングで、突然名言を発してしまったり、意味のない出来事を勃発させてしまったり――。それらが 物語のノイズ になっていることが多々あります。
脚本を見直していて、「シーンのミッション」を見失ったらまず、今、主人公はどんな状況にあるのか?を考えましょう。
例えば、主人公は何かに迷っている。とすると、その主人公が会話をしているサブキャラの 役割は何なのか?
主人公の葛藤を高める役割なのか、背中を押す役割なのか、考え直させる役割なのか? サブキャラの役割 = シーンのミッション だったりしますよね。
まあ、サブキャラの役割って、だいたい「STOP」か「GO」か「STAY」なんですが。それを、あんまり分かりやすく見せちゃうと、安い話になっちゃうのでお気をつけて (笑)
シーンの始まりと終わりで、何が変化したか? を検証するのも、「シーンのミッション」を発見する手がかりかもしれません。
情熱と勢いで「うぉりやぁあぁぁ~!」と書いた脚本なら、その時、自分の中からそのシーンが出てきたのには、何かしら意味があるはず。
一見不要に見えるシーンでも「何故、自分はこのシーンを書いたのか?」を問いかけて、自分の深層心理を探ってみるのも重要です。
案外そこに、左脳で(=論理的に) 気づいていなかった「大ミッション」が隠されている場合もあります。ただの不要なシーン なことも多いですけどね (笑)
③-1 シーンをシークエンスに
ここまでは、そこそこ脚本を学んできた方なら「そんなの知ってるよ」という話かもしれません。本題はここから。
シーンを シークエンス別に、ノード化 しましょう。ノードというのは、IT用語なのですがイメージにするとこんな感じ⇩
実は、これができないと、単線な話は作れるのですが、複雑に入り組んだ大作や、話が多岐に渡る連ドラなんかは書けません。
何十巻もある原作から、エピソードを抽出して脚本化する時なんかにも、避けては通れないプロセスですね。
難しそうに見えるかもしれませんが、やることは簡単。まず、各シーンの関連性を結び付けて、シークエンスに します。
②で シーンのミッション が整理できていれば、
迷わないですよね?
すると、いくつかのシーンは、ある 1つのシーンに帰結する ことが見えてきます。
核となるシーン の周りに、そのシーンが最大効果を発揮するための、引き立て、裏付け、プロセスシーンが紐づいていることが分かります。
その固まりが、シークエンス です。
名シーンと言われるシーンも、実は1シーンだけで成り立ってるのではなく、複数シーンで成り立つ「シークエンス」が見事に帰結しているシーン が名シーンなんですよね。
偶然知り合った男女に、いきなり船の舳先でラブラブになって両手を広げられても「ハァ?」じゃないですか。笑 (ex. タイタニック)
この段階で、シーンがシークエンスにならない。核になるシーンがない・弱い。とか、どこにも紐づかない「はぐれシーン」が見つかったり、シークエンス同士の結びつきがバラバラ だったりしたら、ラッキーです。
そこが、修正すべきポイント です。
③-2 シークエンスに「イシュー」を
物語を織りなすシークエンス (シーンの固まり) が整理できたら、その シークエンスの「イシュー」(主張) を考えましょう。
イシューとは、作者である自分が
「何を表したいのか?」です。
例えば、あなたが「ダークナイト」の脚本を書くとしたら、ジョーカー シークエンス を描く、あなたのモチベーション は何なのか?
もしも「権力者が作り上げた秩序は、本当に市民のための秩序なのか?」という「秩序への懐疑」が、そのシークエンスにおける「俺のイシューだ!」とすると、シークエンスを構成するシーンは、その「イシュー」に向かって描かれていますか?
強くて明確な「1シークエンス、1イシュー」があると、物語のパワーも高まります。
自分の中で、相反する葛藤を、別々のシークエンスに振り分けるのも良いかもしれません。
自分には大それた主張なんてない、という人もいるかもしれません。でも、大それてなくたっていいんです。例えば、
「信号は守らなければならない」という 倫理感にしばられる自分 と、「明らかに車が来てないのに、なぜ信号を待たなければいけないのか?」と 疑問を持つ自分 っているじゃないですか?(笑)
社会的な倫理感と、相反する個人的な感覚。これを増幅させれば、壮大な物語のイシューにも昇華できます。極端な例ですが (笑)
逆に、言いたい事が明確にあり過ぎる人は、気を付けて下さい。
原理原則としては、あなたの表現したい「イシュー」を、そのまま台詞にしてはいけません。主張を声高に叫びたければ、言論雑誌にでも投稿すればいいんです。
そのもの ズバリなことを言わずに、如何に表現の中に「イシュー」を込めるか?
「イシュー」を限定しすぎてしまうと、間口は確実に狭まります。作者の「イシュー」が何なのかはお客さんの想像に委ねましょう。
ミッションやイシューを、自分の中で 明確にした上で、見えすぎないように「馴染ませる」のも、書き手の腕ですよね。
パッションで書いた脚本の、ミッションを検証し、自分の「イシュー」≒ モチベーションを探る。のが、僕的にはお薦めな、脚本の見直し方法かな?と思ってます。
正解は1つではないので、ご参考までに。