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海苔弁とわたし

 この年末年始、 帰省中は毎晩日本酒を
呑んでいたら(ビールも呑んだけどさ)
東京に戻ってからも日本酒が呑みたくて
カップ酒を買うようになった。
別に一升瓶あればあったでコップに注いで
呑んでしまえると思うけど、なんかねぇ。
あの飲み切りカップ酒が良いんだな。
まぁ、呑んだ量が分かるというのもある。

 ちなみに父は昨夏の退院後は
日本酒コップ1杯を守っていると
豪語しているが……。

 彼は一升瓶の谷川岳をコップに注ぐと
表面張力なみなみ注ぎ
「これじゃ(こぼれるから)運べない」だの
下手な芝居をしてその場でするする呑む。
そして減った分をまた注ぎ足してから
そろりそろり、と居間へ運ぶ。
本人はあの1杯は1合だと言い張るが
そのコップは1合強あると思われる
(私が水で量ってみれば良いんだけど)
結論としてたぶん、呑む量はたいして
変わっていない。
しかししかし、私は酒をコップで呑む、という
スタイルに反対はしない。
これまでおちょこやらぐい呑みやら
色んなのを買って実際に使ってみたけれど。
ちょこっとをちょびっとずつ呑むのが煩わしい。
コップからほんの少し口に含ませて、
味わいながら…
器は大きいけれどちびちび飲むのが好きだ。
何も考えずにぼんやり、も良し。
短歌やエッセイの言葉をあれこれ考えるも良し。
くりまんじゅう先輩のように眉間にシワを寄せて「かぁ〜」とか声を発するも良し。

 ある金曜日の夕方、ちょっと遅かったから
夕飯がてら呑んで帰ろうかと思ったけれど。
この寒の入りの頃、1人で呑んで気分良くして
帰って部屋が寒いことほど、不憫なことはない。(飲み会は別として)
それなら部屋をあたためつつ家呑みだ!
赤羽に向かう電車の中で着いたら何を買おうか、
と思案していた時……。

もしかして海苔弁って
私の好きなものばかり乗ってる?
よし!ぬっ。あっ…。でも
飲むとき、炭水化物だめじゃん。
私の規則に違反している。しかも今夜は
日本酒でしょ。コメコメやん!
焼きそばパン食べるのと同じくらい背徳感が
ある。。。でもなー、
もう私の頭にはちくわの磯辺揚げと
白身魚フライが鎮座していて動こうとしない。
もういいや!
で、今夜はテーブルに海苔弁とカップ酒だ。
まず、ちょっとご飯食べたい…。
お箸を入れるとカツン。
すぐ弁当箱の底にぶつかった。私が部活帰りの
腹っぺらしなら怒るかもしれないけど
酒のアテだから少なめで良かった。
おそらく湯気のあった頃の、あったかいご飯に
乗せたであろう海苔がしなしな。
敷き詰められたご飯粒に馴染んでいて
これが海苔弁ならではの海苔の味わいだ。
しかし、こういう海苔は前歯にくっつきやすいから歯のり、しないようにしないとね。
まぁ、1人なら気にすることないけど。
それからカップ酒をちびり、呑む。
今夜はハクツルの原酒だからなかなか濃ゆい。
喉をさーっと通り過ぎるんじゃなくて、
微かに余韻を残しつつ通りゆく感じ。
こういう時はご飯、いいかも。
ちくわの磯辺揚げと白身魚フライみたいな
こってり、したのが喉に残る余韻をごそっと
回収しているから、またクイッと呑めちゃう。

しかし、しかし。カロリーを気にするとねぇ…。
でもね、うしろめたさの「う」とうまいの「う」
はもともとひとつで、のれん分けしてるんだな。

 なんて「う」を覚えた私は先日、海苔弁を
作ってみた(ほぼ出来合いのものだけど)
ちくわは分厚いのを買って丁寧に一本揚げだ!と
磯辺揚げに。きんぴらごぼうはセブンイレブン
のもの。赤いウインナーはタコさんにした。
白身魚フライがですね…。近所のお肉屋さんで
90円で買えるのに。
その日は買えなくて、スーパーにも無くて…
しかし、何故かファミマの冷凍食品にはあって
(おかずプレート)でも4ひゃくいくら…。
一瞬、これならほっともっ…。
が頭をよぎったけれど。首を振ってむかし、
何故か買ったけど使わなくなった
曲げわっぱにあつあつのご飯をよそい、
かつお節をまぶしたら
ちろちろお醤油をかけて、さて海苔の登場。
とにかくご飯が見えないくらい隙間は
海苔をちぎって敷き詰めて、おかずを乗せて完成。そしてこの日は加賀鳶を燗にして胃に流した。
はぁ、胃からじわじわ四肢へとあったまってゆく。肴はあぶったイカでもいいけど、
お酒は父も好む熱燗の熱いのがいい。
よし。次は海苔弁いちのや、行ってみるぞ。

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