【創作BL】ある浮気男の言い分【doll番外編】
(※イラストの無断転載・利用禁止)
⚠️こちらの作品は本編の番外編です。本編はこちら。(浮気攻め要素あり)
⚠️一部性的描写を含みます。18歳未満の方は閲覧・購入をお控え下さいますようお願い致します。
試合開始
あおは寂しい時にじっと俺を見上げる。抱きしめて欲しい時も。
家を出る瞬間、それがありありと伝わってきたもんだから、ロクにあおの顔も見ずに逃げる様に出発した。かき抱いてしまえば俺は離れられない。
最後に焼きついたのは寂しさと不安が今にもこぼれ落ちそうな瞳。思い出しては心が打ち震える。心底俺は頼られてるんだと実感したから。
待ってろ、あお。アイツは俺が何とかしてやる。
俺が家を出ていくと同時にその試合は始まった。
対戦相手は翼。その武器は、罪悪感など微塵もなく他人の心をズタズタに切り裂く、悪魔の爪。
『the game』
俺はその日、さっそく翼を呼び出した。
待ち合わせ場所は、翼の家の近くの喫茶店。
座席で待つ間、翼対策を思い出していた。
俺がこれからやるべきことは『最初こそ葵を守
ろうとしていたものの、翼の色香に落ちてしまい最終的には寝返る浮気男』の振り。
そのためには・・とあれこれ考えていたところで、時間通り翼は現れた。
翼がダッフルコートを脱いだ下は、カーディガンに水色のとろみのある素材のワイシャツ。第二ボタンまでゆるゆるに開けられてて、白い素肌がチラチラと覗いていた。
お互い適当にコーヒーだの紅茶だの注文を済ます。
店員が去ったタイミングで、俺は前置きはせずに切り出した。
「・・お前なあ、葵に変なちょっかい出すの辞めろ。あと俺を寝取るって正気か」
片方だけ頬杖をついて、軽く睨みつけた。
「そうだよ。亮くんみたいなタイプが好きって前に言ったじゃん」
相変わらずコイツはこうして堂々と嘘をつく。
「葵が可愛くて好きなんじゃねえのかよ、ええ?」
「可愛いとカッコいいは違うじゃん。それに抱きたいと抱かれたいも別の感情でしょ?
・・亮くんになら押し倒されても良いし」
そう言いながら翼は、机の上に出していたもう片方の俺の手の甲をつと撫でた。浮き出た血管に沿って。
「・・じゃあ2人と良い感じになったらどうすんだよお前」
動揺して話を逸らしてる風。
「どっちともすれば良くない?気持ち良いことなら大好きだし。・・亮くんもそうでしょ?男のコなら、皆」
翼は自分の人差し指の先を噛んで舐めて見せた。チラリと赤い舌が覗いた。スッと伏せた目の睫毛の長いことと言ったら。・・これでベッドに誘い込まれた奴は何人いんだろうな。
色香を作るのが上手い翼。やっぱりタイプじゃないなと実感した。
「・・・」
作った沈黙の最中、丁度運ばれてきたアイスコーヒーを俺はぐいぐいと飲んだ。落ち着かないとばかりに。
ふふと余裕の翼。
「・・葵ってどんな感じなの?」
「なにが」
「夜。する時、案外声大きい方?あんやだぁって」
「うるせえよ」
素でギリと睨みあげた。俺達はまだ深い仲にはなっていない。大事にしたかった。
ふうんまだなんだと嬉しそうな翼。
「堅いなー、葵は。亮くんも我慢するの大変でしょ。いつぶり?」
「お前良い加減黙れよ本当」
苛々が募る。ストローをがりがりと噛んだ。
ケラケラと翼は笑う。
「溜まってんだねー。男のコは発散大事だよ?・・してあげよっか?僕上手いよ。葵には絶対内緒にするからさ」
そう言って俺のアイスコーヒーを取り上げた。コップ側面を指先で上下にさする。
そしてストローをあむりと喰み・・俺を見上げた。
その様はまるで・・
服の隙間から白い素肌がチラつく。俺はじっと見つめた。目が離れないとでも言うように。
連れ込まれた翼の家は、どっかのインテリア雑誌にでも出てきそうな洒落た感じだった。
やけに広くて部屋数もある。なのにどこもかしこピカピカで、ホコリひとつなかった。
通された寝室には大きいベッドがひとつだけ。
翼は何も言わない俺の腕にするりと絡みつくと、頭を預けた。高そうなシャンプーの良い匂い。
「・・こっち来て」
引っ張られるままにベッドへ連れて行かれた。
翼はベッドに俺を座らせると、俺の膝に跨るように座った。
間近でじっと見つめ合う。意地悪さの潜む大きな瞳を綻ばせて翼はそっと囁いた。
「葵には出来ない様なこと、して良いんだよ・・?」
翼は俺の手を取って、人差し指を舐め上げた。
じっと食い入る様に見つめておく。
「いや、でも・・」
この後に及んで躊躇して見せる俺に、翼はじれたのか今度は腰を揺すって行為の真似事を始めた。
「あん、あ」
「んな、やめろって・・!」
翼はにんまりと笑った。俺の耳元でくすくすと囁いた。
『もしかして童貞?』
「・・!」
翼を乱暴にベッドに押し倒した。
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