【創作BL小説】【stardust番外編4】およめさん【モネ×ひかり】
本編『stardust』シリーズのifストーリー番外編4作目です。本編は以下のサイトで無料公開しています。
https://tsukiyo-novel.com/2021/11/29/stardust/
付き合い出してしばらくたった頃のモネとひかりの話。ひかり18歳。
ふたりでアジアのとある国に行くんだけどそこでひかりが行方不明になって、怪奇な双子のお嫁さんにされそうになる話です。
ふたりの距離が大きく縮まるきっかけ話。
ちょっと不気味でアングラな感じですので、そういうの苦手な方にはおすすめしません🙏
⚠️一応オメガバースなんですけど、あんまり本筋に今回関係ないです。
時系列的には、番外編2と3の間の話です。
・番外編2
↓
・番外編4(本作)イマココ
↓
・番外編3
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パスポートを探していた。今度モネと仕事で海外行くから。書類をがさごそやっていて、ヒラとふとこぼれ落ちたチラシを拾い上げる。
「あ……こんなのまだあったんだ……」
「なんだ、ひかり。あ。それ……」
後ろで別の作業してたモネが後ろから僕の腰を抱きながら、チラシを覗きこむ。
それはかつて異国の地でもらったチラシだった。
昔モネの海外出張に初めてついて行ったときに雑踏の中でもらった他愛もないものなんだけど。
「……念のためお焚き上げしとくか……」
「うん……」
ふたりとも言葉少なになってしまった。あまり縁起が良くないシロモノだから。
モネがチラシを取り上げてポケットにしまった。
夏になると思い出す。
僕が18歳の時。異国の地で怪奇のおよめさんにされそうになったことを……。
『およめさん』
歳上の恋人って、何か保護者っぽいんだよなあ。
18歳の夏。僕はモネの海外出張についていく飛行機の中でぼんやりとそう考えていた。行き先はアジアのとある国。
チケットの手配も荷物のパックも全部やってくれちゃうからさ。僕は『忘れもんないか?』ってチェックを受けるだけの存在。
「ひかり。飛行機の中結構冷えるから。これひざにやっとけ」
隣に座るモネに、そういって膝掛けまでかけられちゃった。
「ありがとうお母さん」
「ころすぞ」
僕のボケに結構冷たくツッコミしてくるけどね。まあでも僕より大分歳上の恋人はやさしいんだ。
僕って彼にとって何なのだろう?
年下の恋人というのはそうだけど。それ以外だとえーと。おんぶにだっこ。グリコのオマケ。バブちゃん。他に言い方あるだろうか。
「向こうに着いたら結構忙しいんだ。今のうちに寝とけよ」
そういって彼はパソコンを取り出した。うわ仕事するんだ。大変だなあ。チラとパソコンを覗くと、ファイル名にはドームがどうとか、契約金がどうとか、違約金がどうとか。
「おやすみ」
だけどありがたく僕は目を閉じた。朝早くて眠いし。疲れたし。
それにモネを遠く感じる時は目を背けるにことにしている。
僕は18歳の平凡なるベータで歌手志望。相手は30歳の有能アルファ。あとえらくハンサムなメガネのおじさんで、芸能事務所の社長。(ちなみにおじさんて揶揄するとちょっと怒られる)
僕らが釣り合ってるのかと言われると、分からない。
□□□
今回の出張の目的は、こっちでモネの事務所の所属の他のアイドルグループの人たちが今度ドームツアーやるから、その契約とか下見とか。
別に僕はミリも関係ない話なので来る必然性はないのだけれど。
『お前も来れば。異国の地を見ておくのも感性を磨く勉強になるよ』
そう言われてついてきたのだ。
実際、この異国情緒あふれる街並みは刺激になった。めっちゃ暑いけど。刺すような日差しのなか、麦わら帽子を被った人々が往来していく。
せっかくだし、写真いっぱい撮っておこう。作詞のイメージ作りに使えそうだ。あと普通にもの珍しくてなんかうれしい気持ちだった。
「ねー見てあれ!すごいおもしろ〜い」
はしゃいでパシャパシャやってる僕を見て、モネは少し笑った。
「?何よお」
「子供か」
「18歳!」
「今度動物園でも連れてってやろうか。象、パンダ、ペンギンだぞって」
「それで喜ぶほど子供じゃないってばあ……!」
ぶははとモネはまた笑った。
「何?なんなの?」
ちょっとイラ〜ッとしてしまった。
このおじさんは僕を時折子供扱いしておちょくってくる。
「いやお前、青春とかあんまりなかったから」
「……!」
「高校辞めて毎日毎日歌のレッスンばっかり。子供らしいというか、青春がもうちょっと欲しかったとか遊びたかったとかあるんじゃないのかと思ってな」
無作法な運転のバイクが横をブウんと通っていった。
「ま、俺が色んなところ連れてってやるから。な。もっと遊びたかった!とか後悔するんじゃないぞ。たまに羽を伸ばして良いから。
あ、ほらひかり。あの屋台でアイス売ってるぞ。買ってくれば」
そしてチャラ、と小銭をくれた。
木陰で、きつい着色料のアイスをあむと食べる。
別に僕は遊べなかったのを後悔とかしてないのになあ。でもそんなことまでモネは気にしてるんだなあ。今回わざわざ出張に着いて来させたのはそういう意味もあって?大人だなあ。
ふと思った。
それかあれかな、『俺の手を取ってここまできたことを後悔するんじゃないぞ』とか、そういう意味もあったりするのかね。
別に後悔なんてしてないのになあ。
モネってお父さんみたい。いや違うか。
過保護な恋人?だな。
いつも何やかんやと護られている気がする。思えば知り合った頃からそう。
最初かなり?強引なひとだなって思ったけど、でもモネに出会わなければ下手したら僕は身投げでもしていたかもしれない。
そんな彼に僕ができる恩返しってなんだろう。
歌でメッチャ売れるくらいしかない。けど全然駆け出しだし。でもなあ。カラダで恩返しを謳えるほどこっちは麗しい裸でもないんだよな……。
「……」
「ひかり?どうした急に止まって」
「あ……アイスいる?こんななるけど」
べ、とべろを出して見せたらモネは失笑していた。きつい青色だったのだろう。
「どれ」
「!」
僕が出したべろに、モネは指先ちょんてして味見した。
「ほんとは舌直接舐めたいけどね」
ははとモネは笑った。
僕を1人にしておくのは心配だということで、僕もモネの仕事回りにあっちこっち連れ回された。
モネの鞄持ち。お偉いさんとの会議では現地の言葉を駆使しているので何を喋っているのか一ミリも分からない。
でもモネのデキる感じを見てるのは好きだった。渋くてカッコいい歳上の恋人の横顔をチラと見上げた。えへへ、かっこいいでしょって自慢したくなる。
参考までにとドーム周りを写真に撮っていた時。
「お前もいつかこのドームに立たしてやるからな」
そう言われて、ちょっと泣きそうになった。
僕の将来までいつも一緒に考えてくれている。
□□□
やっと現地での仕事も終わり、夕食となったとき。適当にレストランに入った。僕には異国の言葉が何一つ分からない。モネは店員さんと流暢に喋ってオーダーを通している。
店員さんが去ったあと、残されたメニューを指さして適当に聞いてみた。
「ねー、これなんて読むの?」
「これはなあ……」
すらすらと教えてくれた。モネは何でも知っている。学校の先生みたいだ。僕はいつも教わってばかり。歌も、教養も、一般常識も全部。
すごすぎて、やっぱり時折遠い存在に感じてしまう時がある……。
運ばれてきたちょっと辛い麺を啜りながら言ってみた。
「……あっちの美人なオネーサン達、モネのことさっきから見てるよ」
「あっそ」
目もくれないのすごい。美人なお姉さんたちがモネを期待に満ちた感じで見てるのは本当なんだけどなあ。
「興味ないの?」
「つまみ食いしにいくほど飢えちゃいないさ。ノーサンキュー」
こんなくだらない試し行為をしてしまう僕を、一蹴してくれるやさしい恋人。
それから、今晩宿にするつもりの場所へ向かった。
荷物を置いて、周辺の夜の街をふたりでしばらく散策した。
小さな屋台や出店が沢山出ている。見慣れないお菓子や食べ物が色々売っている。
異国情緒あふれるこの街は、楽しいけれど少し怖くもあった。分からない言語に知らない人たち。
海外なんて来ること中々ないし、異国の色彩に飲まれてしまいそうだ。僕はキュッとモネの大きな手を握った。握り返してくれてホッとする。
雑踏の出店でチラシをもらい、ふとお店に目をやる。裸電球の下、売られている置物を見つけた。
「……あ、ねえねえ。見てこれ」
2対の動物がくっついて並んでいる小さい焼き物だった。シーサーみたいなやつ。これは猫みたいに耳がぴんと立っていて、細い目で笑っている。現地の信仰の類かなあ。
「わあ、なんか仲良しみたい。かわいいねえ」
ちょっと焼き物の頭を撫でてみた。細い瞳はもっと撫でてと言わんばかりだ。
「気に入った?ひかり。買ってくか?」
「うん、いる」
頭上から声をかけてきた恋人に頷いた。
仲良しな焼き物ってなんかかわいいから。それに僕らもこんな感じでずっと一緒にいれたらいいなって、ふと思ったから。
会計を済ませて店を後にする。
「モネ、ありがと!」
「ああ」
えへへとくっついた僕をモネは優しく抱き寄せた。良いんだ。この通り暗いし。誰も見てやしない。
それから少し歩いたところで、僕はトントンと後ろから誰かに背を叩かれた。振り向く。
「え?あ……」
◾️◾️◾️
雑踏の中をひかりと歩く。
ひかりに俺たちの今後のことを話そうと考えていた。
一緒に住まないか?お前の部屋もつくるから。仕事とプライベートは別だから、たとえ俺と別れてもお前が歌える限りは雇ってやるさ。気まずく考えるなよ。
なんて極めて軽い提案かの様に。
ひかりに気負わせない様にするフリして、実際は自分が傷つかない様にしていると、ちゃんと内心気づいている。
こんな異国の地でふと思いついた提案みたいにしないと切り出せないくらい、重たい感情を俺はひかりにむけている。
「……ひかり、あのさ……」
意を決してと、ようやく話しだしたその時。しっかり握っていたはずのひかりの手がスルリと抜けた。いやぬるりとと言うか、妙な感覚だった。
「ひかり?……ひかり!!」
振り向いた先には、誰もいなかった。
広がっているのは異国情緒あふれる色彩の街並み。
それに着飾った女たち、夜の街。
ただそれだけ。
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