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【創作BL小説】あの日に帰りたい
※あらすじ
司法試験勉強に熱中するあまり、恋人をないがしろにし続けてきた受けくん。その恋人を事故で失い、失意と後悔の中で訪れたバー。そこでカクテルを飲むとなぜか恋人の夢が見れるのだけど…?
#メリーバットエンド
恋人の雄輔が死んだ。突然の事故だった。
その訃報を聞いたのは、僕の司法試験の合格発表の帰り道だった。
何年も頑張ってようやく受かって、さあやれやれこれから…って時のことだった。
勉強でいそがしかった僕はデートもロクに出来てなくて、最後に雄輔に笑いかけたのなんていつだったっけって…思い出せもしないくらいだった。
呆然としたまま雄輔の葬儀を終えて、喪服のまま僕はとぼとぼと歩いていた。
ぼたぼたと涙が流れ落ちて、でもそれを止める力すら残っていない。周りを歩いていく人たちになんとなしに見られているなとは思ったけれど、そんなことはどうでも良かった。
ふたりで暮らしてた家に真っ直ぐ帰ることなんて出来なくて、僕は喪服姿のまま繁華街を彷徨いた。何でも良い、慰めが欲しかった。
と、その時。見慣れない小さなバーを裏路地で見つけた。迷わず入った。チリンとドアベルが鳴る。
中には黒猫が1匹と、綺麗な顔した男のマスター。
他には誰もいない。
「何でも良いんです、ベロベロに酔いたいんです。強いお酒をください」
「お客さん随分お疲れになられているのですね。ではこちらをどうぞ」
そうして与えられるお酒を次から次へと飲んだ。
元々強くはない酒にあてられ、僕は気付けば潰れていた。
■■■
…夢を見ていた。一面の菜の花畑。そうだ、ここって僕が勉強で煮詰まっていた時、雄輔が連れ出してくれた時の…。
「亜樹!」
夢の中で僕が振り向く。え、とすると僕は…この視点は雄輔のものか。
振り向いた僕は随分顰めっ面をしている。うわ、こんな機嫌悪そうな顔してたんだ。
せっかく雄輔と出かけているのに、ソワソワとして早く帰りたがってるのがミエミエだ。勉強のことが不安なのだろうけれど。
それにしても僕は丸っこいメガネにそばかすだらけで、僕をチャーミングと評した雄輔の気持ちは、雄輔の立場になってしてもやはり分からない。
試験のことが不安すぎてついにうつ病に片足突っ込みかけた時に、雄輔が僕を気晴らしに連れてきてくれてたのに、ちっとも感謝すらしなかった僕…。
そんな僕を怒ったりせず、ただただ優しく励まし続けてくれた雄輔。僕も早く雄輔に並ぶ弁護士になりたかったのだ。
ばかだなあ。こんなに眉根を寄せなくて良かった。将来のことをあんなに心配しなくて良かった。ただ、菜の花が一面に黄色く咲いて綺麗で、爽やかな蒼い空の中、雄輔と一緒に過ごす時間を大切に生きれば良かった。
だって雄輔と出かけられたのは思い返せばこれが最後だったんだ。
…ただこの日をふたり穏やかに、楽しく過ごせば良かった…。
この日に帰れたら良いのに。
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月夜の性癖を詰め込んでいくマガジンです。4月はネトラレが3話、メリバエンドの話が1話です。読んでちょっと後悔する奴も混じるかもしれません。…
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