長すぎた1月/Barで本の話をする2月
毎年、1月がすごく長い。体感3か月ぐらいで、年初のことが遠く遠く感じられる。冬のどまんなかということもあり、この時期はなんとなく鬱々とした気分になるので苦手だ。やっと1月が終わり、少しほっとしている。春は少しずつ近づいているはず。
気分が重めな1月だったけれど、振り返ってみるといろんなことをした。(仕事はあんまり進んでいない)備忘録的に振り返ってみる。
・正月。年末から実家に帰り、おせち料理を10種類以上作る。80代になった母が「おせちは買ったものではなく、手作りが好き。でも、もう疲れるので自分では作りたくない」と言うので、母がまとめているレシピを見て、アドバイスをもらいながら作った。1つ1つはそんなに難しくないけれど、この品数を毎年作っていた母は本当に大変だっただろうなと実感。もっと何年も前から手伝えばよかった。3日に兄と弟、いとこの家族が集まり宴会。母を気遣い、兄夫婦や弟夫婦が積極的に皿洗いなどをしてくれる。高校生・大学生の孫たちに囲まれて、父が楽しそうにしているのがよかった。
・1月9日の夜に蔵前の透明書店でトークイベント。『こじらせ男子とお茶をする』に登場いただいた夏葉社の島田潤一郎さんと、『かざらないひと』に登場いただいた「北欧、暮らしの道具店」店長の佐藤友子さんと、私とで、「こじらせたから成長できた」というテーマでお話しする。島田さんと佐藤さんには、「20代で働き方を迷っていた」「一方で、どこへ行っても重宝された」「30歳過ぎに起業した事業で、独自の世界観が多くの人に支持されている」という共通点があった。イベントでお話しされる様子を見て、お二人とも自分の言葉を持っているなあと感服。終了後に近くのお店で打ち上げをした際、親の話になり、同世代として似たような思いを抱いていることに癒やされた。
・翌日、ある出版業界紙の30代前半の女性記者さんから、仕事についてのインタビューを受ける。事務所近くのタリーズで3時間ほどお話しした。定型の質問ではなく、知りたいと思ったことを根掘り葉掘り聞いてくれる方で、その質問で初めて引き出してもらえた思いもあり、とてもありがたい機会だった。最後はインタビューというより雑談のような感じになり、セクハラやルッキズムと言われていることについてお互いに思うことを話した。1対1でリアルで話すからこそ得られる会話の深みだなあと思った。
・3連休の最終日に、本郷の弥生美術館で開催されていた「上條淳士LIVE展」へ。10代の頃、兄の部屋にあった漫画のなかに上條淳士さんの『To-y』があり、「なんだこのカッコいい絵は」と衝撃を受け、何度も読み返した。トーイというパンクバンドのボーカルが敏腕マネージャーに見いだされてスターダムを駆け上がる、という話なのだけど、トーイをとりまく女性たちがどこか中性的で魅力的だった。当日何気なく行ったら、なんと上條さん本人が元アシスタントの方と一緒に展示を見ながら話すというギャラリートークをしていた。展覧会のコンセプトでもある「男はエロく、女はカッコよく」という言葉はまさに上條さんの絵の魅力を言い当てている名コピーで、その言葉への思いなども直接聞くことができ、サインもいただき、感無量だった。10代のときに影響を受けたレジェンドのような人に、30年以上たって不意打ちのように会うことができ、直接話ができるというのは、自分を形成してきた何かがバグりまくるような、すごく不思議な体験だった。
・1月半ば、Zepp Divercity でGinger Rootのライブを観る。仕事で付き合いのあるカルチャー好きの若者を誘ってみた。オールスタンディングのかなり大きい箱に、観客がぎゅうぎゅう。いつのまにかGinger Root人気が高まっている。Ginger Root=キャメロン・ルーは中国系アメリカ人、日本の80年代のポップカルチャーに影響を受けている人で、映像にもその要素が満載でとにかく楽しい。おそらく意識的に演出されているナードっぽい見た目で、洗練された音楽を奏で、ときどき顔をしかめながら歌う、そのギャップがものすごくかっこいい。たまたま同じライブに行っていたことが翌日わかった夏葉社の島田さんは、キャメロンが「感謝しかない」という日本語を使いこなしていることに感動していた。確かにあの日本語の使い方。みんな好きになっちゃうよなあ。
・1月後半、前職の会社から受けた執筆の仕事で、ある大手デベロッパーの女性役員をインタビュー。ほどよく力が抜けていて、本当に「いい仕事をしたい」という思いだけでここまで来たのだろうなと思える素敵な人だった。着ていた洋服が、バッグとコートを含めて白と黒でコーディネートされていたのだけど、クリーム色に近い白を選んでいるので全体の雰囲気に柔らかさが出ていた。洋服やバッグやアクセサリーがどこのブランドのものか全部聞きたい(聞けなかったけれど)と思うような人とひさびさにお会いした。
・1月後半、前職の同期でいまフリーランス編集者のK君と、青山ブックセンターのトークイベントに参加した後、奥渋谷のBar Bossaへ。バーテンダーの林伸次さんが本を書く人なので会ってみるといいかも、とK君が誘ってくれた。Bar Bossaは「いい気が流れている」感じの気持ちいいお店で、林さんは私がこれまで出会ったどのバーテンダーよりも腰が低く、事前に読んでいた著書から勝手に抱いていたイメージがいい意味で覆された。私がひとりで出版社をやっていると言うととても興味を持ってくれて、翌日以降、すぐに『こじらせ男子とお茶をする』を読んでくださり、Xでつながり、「お店でトークイベントをやりませんか?」というオファーをいただいた。そのスピード感にびっくりしつつ、「いい本とは何かをずっと考えている」という林さんとお話しするのはとても楽しそう。イベントは2月24日(月曜・祝日)の午後。以下の林さんのnoteから申し込みができるので、よろしければ。
・1月末、最近親しくなった書店の人に誘ってもらって、人生で初めてプロレスを観に行く。今まで全く興味を持つことのなかった分野だけれど、経験したことがないものは経験してみたい、と誘いに乗ったところ、「編集者ですね」と言われた。実際に観て思ったのは、プロレスは、お笑いに近いようなエンタメであること、「勝ち」だけでなく「負け」の美学も演出されていること、など。観客には意外に女性が多く、客層を見ているだけで学びがある。隣に座っていた若い女の子は、大きな望遠レンズがついた一眼レフで、ときどき選手の写真を撮っていた。あのレンズを通して選手の何を見ていたのだろう。
・「中居くん」とフジテレビについて、みんないろんな思いがありすぎてカオスな状態になっている。おそらく元SMAPのなかでも最も多くの国民から「くん付け」で呼ばれていた人だと思う。まるでかつての自分の同級生かのように。そのことが象徴するように、「中居くん」のことをよく知っているつもりになっている人がいかに多かったか(私も含めて)、ということをしみじみと感じる。