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ショートショート。のようなもの#52『心と言葉と嘘と恋』

 私は中学のときに、産まれてから嘘しか話したことがないという不器用な男に告白をされました。
「あなたのことを心から愛してます。だから僕と付き合ってください」
 もう一度言うけど、彼は、産まれてから嘘しか話したことのない人なのです。
 でも、発した言葉は嘘かもしれないけれど、心の中は実際どうなのだろう…?
 ひょっとして言葉とは裏腹に、心の中では私のことを…?いや、そんなはずない、やっぱり嘘…なのかな…?…何よ!バカにして…!
 そう思わせてくれた彼は、今の私の旦那です。

 30年前に告白をされたとき、私は、胸を締め付けられるような思いをしながら、叫ぶようにこう返しました。
「何よそれ!そんな嘘つきのあなたなんかと付き合えるわけないじゃないの!二度と私に近づかないで!大嫌い!大嫌い!大っ嫌い!」
 
 当時の私は、あなたと同じ、嘘しか話したことのない不器用な女だったから。

               ~Fin~
 

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