カゴとクラフトテープとおばあちゃんと着物
実家に帰ると、母はいつも何かを作っている。
編み物をしていたり、籐で電気のシェードを作っていたり、
植物を育てていたり。
今回は、クラフトテープでカゴを作っていた。
もういらないのでは、と思うくらいたくさん。
父は絵に描いたような真面目なサラリーマンだった。
私は小さな頃から、仕事とはそういうものだと思っていた。
ものを作るような環境と縁がなかった家庭で育ったつもりだったけど、
大人になって、こうして見ると、
いつも何かを作っている母を見ていたのかもしれない。
子供の頃に亡くなった母方のおばあちゃんを思い出す。
いつも定位置に座って、ご飯を食べなっせ、と言っていたおばあちゃん。
自分はしいたけがとても嫌いなのに、しいたけをいつも食卓に並べて、
孫たちに食べさせようとしていた、おばあちゃん。
ずっと座っていた記憶しかなかったのだけど、
よくよく聞いてみると、生地を染めるところからはじめるような、
こだわったお客さんの着物を縫う仕事をしていたそうだ。
今になって、すごいなぁ、と感じ、
今になって、ちゃんと話をしてみたかったと思う。
今も生きている両親から、
聞き忘れることがないように、ちゃんと話をしようと思った。
離れて暮らしているので、最近は2週間に1度くらい電話をする。
猫が元気でかわいい、という話がほとんどで、
それはとても知っている。