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素敵な患者さんとの出会い
どなたも経験されているかもしれないが、折に触れて今の仕事がやってられない、と思うことがある。
それは、その日一日で消えることもあれば、一週間、または数か月ぐらい続くときもある。
実は今、まさにそう感じている時で、ここ数か月ずっと同じ気分から抜け出せないでいる。
「看護師やめたいな。やってられないな…でも、今さら他の業種に転職もできないだろうし…」
毎日、体を引きずるように職場へ向かい、勤務時間中、気が付けばそういう風に思ってしまっているのだ。
過去にも何回かあったのだが、そんな時に、とてつもなく素敵な患者さんを受け持つことになったりする。
コミュ障で、基本的に人間嫌い…というか、基本的に他人に興味を持つことができない。
そもそも、そんな人間が看護師をやっていること自体がどうか、という話なのではあるが、日々受け持つ患者さんの中で、こんな私でも興味をもたずにはいられない、患者さんに出会うことがある。
私が人に関心を持てること自体が一つの奇跡で、それは滅多に訪れることはない。
患者さんと看護師の関係なので、出会ったからといって、これ以上発展することはなく、その場限りで終わってしまうものであるが。
だが、そんな患者さんと過ごせたたった一日が、他の人との数十年の付き合いよりも、ずっと濃い濃度で、意義深いものになりえるのだ。
患者さんの人生に対する態度、シェアしてくれた話から多くを教わり、救われたことが幾度があった。
そして、看護師の仕事をしていなかったら、こうした患者さんと出会うことはなかったのだ、と気づかされるのだ。
昨日出会ったのは、上品なとても素敵な98歳の女性だった。
98歳よりずっと若く見えて、話をきくと、ドイツ出身で、結婚でアメリカへ来て、アメリカの看護資格をとって働いてきた、とのことだった。
私と似たような経歴で、大いに話が盛り上がった。
彼女も離婚して、女手一つで、異国の地でやってきたのだった。
年を取っていくことは怖く、絶望を感じずにはいられないのだけど、彼女のように98歳になってもしっかりしている方に会うと、そんな気持ちも少しはやわらいでくるのだった。
そして、看護師を続けていくのはしんどいけれど、何とかやっていかなければ…と思わせてくれるのだった。