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母性
子供をもたなかったので、自分が母としての経験がなく、子の立場としても、精神的に未成熟な母親のもとで育ったため、「母性」という概念が、頭ではそういうものかと思っても、実感として理解できていないと思う。
母が不在であったら、葛藤なく世間一般の母性の概念を受け入れられていたかもしれない。
しかし慈愛があって、無条件で愛してくれる、といったような、世間一般的な、母性の定義からかけ離れているような母だった。
そうすると、自分の中でも混乱が生じてくるし、さらに辛かったのは、私の母の人となりを知らない人が、母が普通の母性のある人間という前提で物事をみるので、そうすると母と私に問題が生じた場合は、私が悪いことになってしまう。
「お母さんは、あなたのことを思ってるからだよ」
どんな親でも、親がいないよりはマシ。
という言葉があるが、どんなに懐疑的であろうが、実際、「親がいない」という経験がない私には、疑念を示す資格はないのだろう。
そんな中で、とある曲を通じて、私なりの「母性」の概念を捉えることができた瞬間があった。
ローリン・ヒルの「To Zion」という曲。
長男の妊娠、誕生を巡る経緯と、その決断が、素晴らしい歌詞と、楽曲で表現されている曲だ。
サンタナ、フィーチャーリングのイントロのギターから、素敵で、
「いつの日か、わかってくれると思う。ザイオン…」、
という、彼女の万感の思いがこもっているような、息子への呼びかけの台詞が入って、曲は始まる。
どの歌詞をとっても、秀逸なのだけれど、私は、
But everybody told me to be smart
"Look at your career, " they said
"Lauryn, baby, use your head"
But instead I chose to use my heart
だけど、みんなが、賢明になれ、
「キャリアのことを考えろ」
「ローリン、頭を使うのよ」
って言う。
でも、私はその代わり心を使った。
このパートを聞くと、いつも、ぐっと来るものがあって涙ぐんでしまうし、
こうして、思い出すだけでも、涙がこみあげてきてしまう。
今生、私には縁のなかった母性だけれど、この曲から、その神聖さ、荘厳さの片鱗を、なんとか感じとれる気がするのだ。