マックグリドルな朝
昨晩の夜勤は久々の、壮絶なシフトだった。
精神的、肉体的にも自分の限界を超えて追い込まなければならず、忙しさで時間がたつのが速く感じられる一方、あまりの辛さに一瞬が永遠に感じられる、といった全く真逆の2つの感覚を同時に味わった。
看護師の場合、日勤の方が忙しいことは間違いないのだが、普段は比較的、落ち着いて過ごせる夜勤が、慌ただしく、過酷になると、日勤の忙しさとは違ったキツさとなる。
これは、日勤に比べてスタッフが少なかったり、勤務している医師も若手が多いことにより、何か非常事態が起こると、時として、自分の職域・経験を超えたところで対応しなければならないという、サバイバルモードになってしまうのだ。
そんな夜勤が明けた朝は、一気に年を3歳ぐらいとってしまったような気になり、目に映るいつもの風景から、何だか切り離された気分を感じる。
(十分休んで寝て起きた後に、そうした感覚は消えるが、しばらく引きずることもある)
肉体的にきつかった場合、シフトが終わっても、逆に過剰なエネルギーが満
ちていたり、強烈な空腹感を感じたりする。
そんな時に、体が欲するのは脂っこい、ジャンクフード系のものが多い。
背油たっぷりのラーメンといった、中高年女が就寝前に決して食していけないものを、欲してしまうのだ。
若くて、普通の時間帯の仕事をしていた時は、日本の繁華街(というかドヤ街なのだろうか)にある、早朝営業キャバクラとかその周辺のビジネスの需要についてわからなかったのだが、ニューオーリンズの病院での夜勤明けに、24時間の営業のバーに早朝行ったことのある身になって、理解した。
私の心が、過酷な肉体労働系夜勤男子も寄り添った瞬間であった。
まあ、早朝営業ホストクラブがあっても行く気はないけれど…
北米で働いていると、早朝空いているバーや、ラーメン屋さんは、本当にごくごく限られた場所にしか存在しないので、そういった時に私が行くのが朝マックである。
そこで選ぶのは、ソーセージエッグマックグリドル一択である。
肉に甘いシロップをかけることに対する是非は、酢豚のパイナップル論争に似通ったものを感じるが、本人が美味しいと思えればそれが正義なのではないだろうか。
というわけで、ミートボールに添えられるジャムについても、肯定派である。
かすかな苦みを感じるハッシュポテトと一緒に、ノンカフェインでない普通のブラックコーヒーで流し込む。
それでも過酷な夜勤の後には、眠れるものなのだ。