先の見えない日々だけど
僕はとあるマジックサークルの部長をしているのですが、コロナの影響で勧誘ができず、そもそも活動自体を行うことが出来ていません。オンラインで活動をすることも考えましたが、そもそも活動目標がイベントでお客さんを呼んで披露することだったので、サークルで活動する意味も奪われてしましました。
2020年は本当に苦しい一年でした。始めは、どうにか活動する理由を作ろうと日々考え、オンラインでもマジックができるように勉強したりしていました。しかし、披露することが出来ない状況が続き、その間にもマジック業界そのものが悲鳴を上げているのを見て、努力する理由を見失っていきました。幸い、コロナで生活が苦しくなることはなかったけれど、精神的に追い詰められました。僕はマジックから多くの事を学んできましたから、今回のコロナで活動が全くできなくなって、今までの自分が否定されたような、そんな気分でした。
一時はマジックから離れました。現実を直視したくなくて、大切なものや大好きな場所が傷ついていくのを見たくなくて。世界からマジックが消えてしまうのではないかと怖かったです。
それでも、マジックを通じて見た人の笑顔や温かい気持ちを忘れることは出来ませんでした。もう一度、人の笑顔が見たい。もう一度、マジックをしたい。そんな想いが強くなった頃、一つ単純なことに気が付きました。
僕がマジックをしている限りは、この世界からマジックは消えない。
どんなにマジックという文化が衰退していったとしても、例えマジックを行う人がほとんどいなくなってしまったとしても、僕がマジックをしている限りはマジックが完全に消えてしまうことはありません。僕の大好きなマジックをする時間や場所は、確かに一時的に無くなってしまうかもしれませんが、諦めなければ再び生み出すことができる。
コロナ禍での一年を通して、僕の理想のマジシャン像ができました。どんなに苦しい状況でも、人の笑顔のために努力できるエンターテイナーでありたい。どんなに絶望的な状況でも、「この世界はまだまだ捨てたもんじゃないよ。こんなにワクワクするような面白い事があるよ、希望はあるよ。」みたいな想いが伝わるマジックをしたい。不可能を実現するのがマジシャンならば、どんな事があっても人の不安を吹っ飛ばすことに、人を笑顔にすることにチャレンジするマジシャンでありたい。
これからどんな事が起こるか分かりませんが、マジシャンとして自分でもできることがあることを信じ、今日も頑張ります。