よくいるあいつのその後 2話
次の日、浩志が学校に行くと同じクラスの正志が駆け寄ってきた。
「浩志おはよー。色々大変だったな」
「おはよう。え?何が?」
「健二のブログに悪口書かれていただろ。あれみんな浩志に同情してたよ。あいつ美奈代と付き合ってから調子乗りすぎなんだよな」
「あーそのことか…。あいつに色々伝えたけど全く響かなかった」
「もう放っておいた方がいいよ。」
「そうだな」
どうやらクラスの皆は健二の事を軽く馬鹿にした雰囲気があるようだった。浩志はあまり気持ちの良い物では無いと感じたが、時の流れに身を任せようと深く考えるのは辞めにしていた。
その後、健二は部活を辞めた。大事な大会を控えていたが、浩志との一件以降一切部活に来なくなり、キャプテンの小笠原からキツく叱られた後退部届を出していた。
退部して一ヶ月後、健二と美奈代は別れることになった。
美奈代から健二に別れを告げた。健二は泣きながら別れたくないと申し出たが、美奈代からすっかり愛想を尽かされ、電話やメール、学校でも無視されて完全に無かった物として扱われていた。
別れた後、浩志は健二の事を気に掛けていたが、健二と元通りに仲良くなることはなかった。
中学三年になり、そろそろ進路も決める時期になっていた。
「健二、高校どこ行くか決めた?」
休み時間、教室には健二と浩志だけだった。
美奈代と別れて以降、健二はほとんど仲良い友人がいなくなっていた。
美奈代と付き合うことに夢中で、友人に対する態度があまりにも悪く、皆健二の前から消えていった。
浩志もそのうちの一人ではあるが、内心健二のことをずっと気に掛けていたので、久しぶりに声を掛けた。
「…あー、俺高校行く気無いんだよね」
「え?!どうして?」
「別にやりたいこともねーし。高校行ったからってやりたいこと見つかるかわかんねーし。適当にバイトでもする予定」
「…そう、なんだ。親には話したの?」
「反対されてる。渡辺にも高校はせめて出ろって。」
渡辺とは、健二や浩志の担任の渡辺という教師の名だ。
「長谷高行くつもりって前言ってたけど、それは良いの?」
「あー。長谷高行っても別に行きたい大学も無いし」
長谷高とは、健二が元々目指していた進学校である。
「俺、長谷高受けるつもりだよ。また一緒に部活やろうよ」
浩志はまた健二と高校で部活がしたかった。
「もうバスケ部なんて入んないよ。とにかく俺はもう人生適当にやることにした」
「そんな…」
一人の女のせいで、こんなにも人生振り回されるものなのか、浩志は気の毒やら励ましたいやらいろいろな感情が押し寄せてきた。
「俺のことはもう放っておいてくれ。お前に関係ないんだから」
また健二は浩志を突き放す言い方をした。
しかし、浩志は今回は諦めなかった。
「いや、放っておかない。俺お前の友達だし。美奈代の事で、盲目になってるときもっとハッキリ言えば良かったって後悔してる。」
「は?なんだよそれ。また余計なお節介かよ」
「ここでちゃんと言わないと、変な道に行きそうな予感がする。だから今回はハッキリ言う。美奈代のせいで人生棒に振るの辞めろよ。もう終わったんだろ」
「お前に関係ねえだろ。わかった口聞きやがって。」
「そう。別に適当な人生歩みたいならいいけど。少なくとも美奈代と付き合う前まで、お前は将来AIの開発に携わる仕事がしたいって言ってた事や、俺と一緒に県大会の優勝を目指してた事、クラス皆で最高の思い出作ろうって話してた事も一回思い出して考え直して欲しかった。それじゃあ俺先に次の教室行くから。」
そう言って、浩志はその場を立ち去った。
残された健二は悔しそうな顔をしたが、その顔は誰も見ていなかった。
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