(仮題:プロローグ)
キッカケが何だったのか思い出せない。
ただそこに美しいものが広がっていたから、という記憶だけが頭の片隅にある。
朝焼けや夕焼けが美しいと感じるのは本能なのか。
夜が明ける前の静かな朝、茜の空。
都会の喧騒が和らぐ夕暮れ、群青の空
ボランティアスタッフとして星空案内人を任されて一年。
天文台を訪れるたくさんの来館者とお話させて頂きながら気づいた事がある。
雲の間に間に光る星を見つけて「あったー!」と園内に響き渡る声。
街明かりに抗う星たちを探そう大作戦。
「あれ、UFOじゃない?」と航空機を指差して笑いあう瞬間。
東から星が昇り、西へと沈む星。
望遠鏡の中を動いてゆく星を見るかれらに「これがね、地球が動いてるね証拠」と体感する時。
今まで気付かなかった事に気付く。
星の楽しみ方は一つではない。
写真撮影一辺倒だった私の価値観は変わった。
望遠鏡の中に星が月が見えたあの時の驚きは忘れたことがない。
時を経て、その驚きを感じてもらう役を今担う。
晴れた夜空を眺める。
今日も誰かが眺めている空を。
いつか、月の見える夜に。
いつか、月の下で会いましょう。