ミミと月のうさぎ【秋ピリカ応募作品】
ある年の秋、ミミはお月見の準備をしていました。ミミの毛と同じ真っ白なお月見団子をたっぷり作って、ススキと秋桜で飾り付けをします。
「今夜こそ、月のうさぎに会えますように」
ひとりぼっちのミミは、話し相手が欲しかったのです。
夜になると空に大きなまんまるお月様がうかびあがりました。「きれいねぇ」ミミがうっとりと見惚れていると、突然月の光が強くなり1匹のうさぎがおりてきたのです。
「こんばんはミミ。私は月のうさぎのルルよ」ミミは夢のような光景に瞳を輝かせました。「ルル!ずっとあなたに会いたかったの!」
ルルは月での生活や美しい星々について話してくれました。ミミはルルの話を夢中になって聞き入っています。
しかし楽しい時間はあっという間に終わってしまいました。「そろそろ月に帰る時間だわ」「いやよ、もっとルルと一緒にいたい!私も月に連れて行ってくれない?」「ミミを連れて行く事はできないの。だけど月に行く方法を教える事はできるわ。この紙を43回折った時、必ず月にくる事ができるはずよ」
そう言ってルルは、キラキラ輝く不思議な紙を1枚残すとまた強い光に包まれて月へと帰っていってしまいました。
またひとりぼっちになってしまったミミ。
しかしルルの言葉を胸に毎日一生懸命に紙を折り続けました。1回、2回、3回…回数を重ねるごとに紙は分厚く硬くなり、なかなか思うように折れません。しかしミミは決して諦めませんでした。
そんなミミの姿をみて、隣の家に住むきつねやたぬきが手伝ってくれるようになりました。3人で奮闘する姿をみてまた1人、2人、3人…いつの間にかたくさんの動物達が集まってきてくれました。みんなで紙を折っているうちにすっかり仲良くなって、どんぐりやきのみを交換したり、かくれんぼをしたり、とても楽しい時間を過ごすことができました。不思議な紙のおかげで、ミミはもうひとりぼっちではありません。
ルルが月に帰ってから、3回目の秋。ミミの耳はすっかり垂れて、真っ白だった毛もススキのような黄金色に変わっていました。たくさんの友達の力も借りて、あの不思議な紙を実はもう42回目まで折る事ができていました。だけど最後の1回は折らないまま大切に取っておいていたのです。
「もう十分、楽しい時間を過ごす事ができたわ。ひとりぼっちだった私に素敵な時間をプレゼントしてくれたのね。ありがとう、ルル」仲間と過ごした素晴らしい日々を思い出し、ミミの瞳から1粒の涙がぽたんと紙に落ちました。
その瞬間、紙がまばゆい光を放ちそのあたたかな光がミミを包みこみました。「ついに、月に行けるのね」ミミは、羽のように軽く柔らかくなった紙をパタンと1回折りました。ついに43回目です。紙はたちまち光の階段となり、ミミを夜空へと導きます。星々がキラキラと輝く中、やがてルルの待つ美しい月にたどり着いたのです。
「おかえり、ミミ」
「ただいま、ルル」
(1192文字)
この作品は、ピリカさんの「秋ピリカグランプリ2024」の応募作品です。
“ジャンルは問いません“の一言に背中を押されて、初めて応募させていただきました😊
普段は絵本テキストを平仮名のみで書いているのですが、この作品は絵本テキストではなく、絵本テキストと童話の中間のような感覚で挑戦しました🐰
「紙」がテーマと知って、私が思い浮かんだのは「紙を43回折ると月に届く!」でした。
新聞紙の厚さで計算すると、43回折ると約38万kmになるそうです。43回くらいなら頑張ればいけそう、、なんて思って小学生の頃に挑戦してみたことがあります。が、6回目で限界を感じ絶望を味わいました🤣
なので43回折ることができたミミはすごい🐰
今日も月をみあげると、ミミとルルに会えるかもしれません🐰🌕🐰
素敵な企画に参加させていただきありがとうございました😊✨
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