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永遠に続く雨
降り止まない雨はない。それは、ほんとうだろうか?
何事も、はじまりがあるなら、終わりもある。だから、それは真実だと思う。
空からぴちょんぴちょんと滴っている無数の雫は、過去のある時に始まり、そして、未来のいつかの時点には、ぴたりと止む。
たとえ何十日と降り続こうと、雨とはそういうものだ。
と、思ってきたのだけれど、長い地球の歴史においては、200万年ものあいだ雨が降り続いた時代があった、そうな。
三畳紀のカーニアン期、2億3400万年前からの200万年間、地上にはひたすら雨が降り注ぎ続けた。そのころ地球には大陸はひとつしかなくて(つまりいまのような7つの大陸に分かれる前で)、かみさまが作った、まごうことなき唯一無二の大陸だった。
長くつづいた膨大な量の雨は、大陸の大部分を占めていた広大な乾燥地帯を湿潤地に変えた。いたるところが水に覆われ、それまで砂漠地帯に適応していた地上の多くの生き物が死に絶えた。さらに海でも、巨大な川の流入によって富栄養化が進み、さまざまな種が絶滅した。
降り続く雨に押し流され死んでいった、砂漠のちっちゃな爬虫類たちは、いったいいつになれば雨が止むのだろうと、恨めし気に空を見上げることがあっただろうか。
「あめ、やまないね」
「そのうちに、やむよ」
「そのうちって、いつよ。どのくらいすればやむのよ?」
「200万年」
なんて、分かりっこないけれど。
200万年続いたら、それはもう止まない。永遠に続く、といっていいのではないだろうか。
生き物の存在できる時間を超え、想像のおよぶ限界も超えて、ずっと続く長い時間であれば、それはもう終わりのない『永遠』の範疇。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーでもほんとうは、わかい時には、10年だって永遠みたいなものだと、思っていた気がする。
未知の、得体のしれない、やたらと長い、先の見えない時間を。
にんげんは、たったの10年でも、永遠だと思える存在なんだよ、
なんて可愛らしい生き物なんだろうね、と、天上で永遠を生きる天使が、わらっている。