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長い長いラブレター 1

親愛なる君へ

またこの季節が来ました。

凍てつく通りに冷たい暗い風が吹いてるよ。

今頃あの狭いコンビニのホットドリンクコーナーでカップルたちが

微笑みあいながらお茶を選んでるね。

僕たちもそんな二人だったね。

すれ違いが続いてどんどん心が離れて、気づいたら埋めることができなくなる暗い深い溝が生まれて、綺麗事ばかり並べては生きていけないね。

理想ばかり並べて、嘘ばかりついて、自分のことを正当化して生きてきた僕には

もうまぶしくてその季節戻るすべはありません。


1999年 秋 札幌

通りの喧騒を歩きながら、ヘッドフォンで音楽を聴きながら歩いていた。

J-POP全盛の時代。

狸小路の楽器店に入っていく。

ただここで僕は好きなバンドのスコアを見たり買えもしない楽器を眺めていた。

なぜかそんなことでお腹も心も膨れていった。


2020年 秋 札幌 

仕事の商談を終え、狸小路を歩く。

ワイヤレスイヤフォンからは、当時とは全く違う洋楽。

狸小路のあの楽器店は縮小されて、今ではほとんど昔の面影はなかった。

時代の移り変わりを寂しく思いながら、コートに手を入れて歩いた。


2010年 秋 札幌

彼女は甘えた声で、腕に絡みついた。

6つも年上なのにくったくない笑顔の似合うとても可愛らしい女性だった。

車の鍵をポケットでゴソゴソしながら、部屋までの運転時間を考えながら、音楽と

は決別した正解の世界を歩き出していた。

駐車場に停めた車に乗る中古車だけど新型の白いジムニーに近寄る。

エンジンをかける独特のエンジン音とカーステレオから彼女が好きなアーティストの曲がかかる。

昔なら聞かなかっただろうなと思いながらも幸せだと思う。


夏、高校横の公園、ベンチ、20時頃

『なんか涙止まらない』『なんか切ないね』『離したくない』

抱きしめ合う。夏の薄着の温もりが直にはだに染み込む。

あの時、君はどう感じてた?

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