歩いて
ただ外に出て歩き回ることがこんなに不健康なことのように思えたことは今までになかった。
家の中に閉じこもる毎日の中で、外を歩く時間はとても健康的なはずなのに、涼しい朝も、冷える夜も、家の窓を開け広げて深呼吸をすることを躊躇ってしまうのは、目に見えない空間に僕を殺すウィルスが含まれているように思えてならないからだ。
子供のころからずっと思ってた。
冬は休み時間になったら教室の窓を開けて換気をしましょう。
それなのに、外から帰ったら手洗いうがいをしましょう。
結局、外は綺麗なの? 汚いの? って。
朝日に照らされた空気よりも、埃に塗れた家の中のほうがよほど汚い。
夜に冷やされた水蒸気よりも、僕が吐いた二酸化炭素のほうがよほど汚い。
それでもタバコを吸うよりも、排気ガスに浸かるよりも、そのへんの道を歩くことのほうが身体に悪いことをしているような気分になるのはなぜだろう。
外の空気が、なんだか汚い。
スーパーマーケットの籠の取っ手がなんだか汚い。
自転車に乗りながらストロングゼロを飲んでるおっさんは、もとより汚い。
一分、一秒と寿命が縮んでいくような幻想に惑わされながら、僕は歩く。
歩いて、見渡す限りの綺麗な未来を探す。
つきこ
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