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みんな家族を求めてる ー 『メリー・アン・シングルトンの物語』
ある日、instagramでフォローしている日本の古本屋さんが熱烈プッシュしていたNetflixのシリーズドラマ『メリー・アン・シングルトンの物語』。文学や音楽、デザインなどいろいろ趣味の合う彼のおすすめだからきっと私も、と思い観始めました。やはり記憶に残る素敵なドラマでした。(※2021年5月28日現在フランスでは配信されていますが、日本ではどうだかわかりません、御免なさい)
アーミステッド・モーピンの1978年から2014年にかけて発表した連作小説「Tales of the City」が原作で、サンフランシスコのバーバリー・レーン28番地にあるシェアハウスが舞台のお話です。
メリー・アン・シングルトンは過去にバーバリーレーン28番地のシェアハウスの住人でしたが、約20年ぶりに家主のマドリガル夫人の誕生日パーティーを機に里帰りします。当時からの友人たち、過去の恋人や様々な未消化の出来事、、時間とともに変化した自分や周囲との関係、誤解や真実。それらを大きな愛で包む母のような存在のマドリガル夫人とその仲間たちの姿が生き生きと描かれています。
そんな中、マドリガル夫人の過去を暴露しようとする人物の存在が。それは一体誰なのか?
「LGBTQ」「クィア」という言葉やそういう人々が社会に受け入れられるようになってきたとはいえ、未だ彼らが苦悩し葛藤しながらも助け合い人生を精一杯楽しもうとしている様子。背景にあったHIVや差別問題も描かれていて、私もはっと目がさめるような感覚になりながら鑑賞しました。
「JUNO」の頃からエレン・ペイジが好きで、実生活でもレズビアンであることをカミングアウトした彼女。このドラマでもボーイッシュでタフな雰囲気の中にもか弱さがあり、とても魅力的な演技です。
もう一つ私のストライクポイントは、キャップが似合うこと!私もこんな風に被りこなせたらなぁ、と思っちゃいました。
鑑賞中「汝隣人を愛せよ」という言葉がふと浮かんできました。それぞれに生き方や主張が違っても、裏切りや仲違いの孤独を乗り越えて、家族にように人を愛して生きたい、そんな人間の滲み出る愛情への渇望を感じる作品でした。
そしてもう一つ本好き、書店好きの私を釘付けにしたのは、冒頭にもみんフォトの中から使わせていただいている「City Lights Bookstore シティライツ書店」の当時の様子が描かれていること。保守的な社会に異議を唱え、自由な世界を文学で表現したビートニクの拠点となった書店です。現在も世界から本好きの人々が訪れる場所です。(今年の2月に創始者であり詩人のローレンス・ファリンゲティが亡くなり、世界中からその訃報にSNSなどで哀悼の意を評しました。)
サンフランシスコという場所で、時代を超えて人間の自由を主張し、それを謳歌することを求める人々の強さと優しさ。
たとえはるか遠い理想郷だとしても、みんな違うことが美しく尊いと思える家族のような人間社会を作っていきたいな、と思ったよいドラマでした。
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