みんなが手話で話した島【90】
30年ぶりの再刊!
手話や要約筆記に関わる人たちには有名な本なのだそうです。そうとは知らず、あまりに素敵なタイトルだったので「タイトル買い」したのでした。
読み始めると、物語ではなくノンフィクションの、学術論文に近い内容でした。
丁寧な聞き込みによる様々なエピソードはどれも素敵で、心があたたかくなりました。異文化との共生。でも、それができたのは、この島には少数者である聾者が、ある程度多く存在したという恵まれた環境があったからとも考えられます。
訳者の言葉の定義が興味深い
【deaf】聾者(聴覚障害者・聞こえない人を示す。難聴者(程度は様々)も含む)
【Deaf】ろう者(ろう文化を持つ手話使用者)
*日本の「ろう者」は、Deafに対応するだけでなく、deafにも、[deaf/Deaf](手話を使用する聴覚障害者)の意味でも使われている。
*ヴィンヤード島の聾者(deaf)は、ろう者(Deaf)でもある。
【hearing】健聴者(「聴者」ではない。「聴者」は、単に「聞く人」にしかならず、「聞こえる人(聞くことができる人)」の意味をなさない。hearの中核的意味は「聞く」ではなく「聞こえる(ひとりでに耳に入る)」なので、hearingは、「聞こえる人」という訳になる)
*「聴者」は、ろうに配慮して「聞く人」という意味の言葉を無理やり「聞こえる」という意味にねじ曲げて使っている言葉であり、言語学的に正しいとは言いがたい。
言語の習得についての驚くべき調査結果
これは驚きでした。自分の特性に合わない言語を無理やり教え込まれても身にならないどころか、本来覚えなくてはならない母国語の習得まで著しく困難になるという結果です。そして、健聴の子供が言葉を使い始めるのと時を同じくして聾の子供が手話を使い始めるということは、手話が紛れもなく言語であることの証左ですね。一見、遠回りにも思えますが、日本の聾の子どもには、早いうちから日本手話に触れさせてやることが、その後の日本語習得も容易になるということです。ぜひ周知してほしいです。