小学校社会科の授業づくり ~地理的な学習内容で考える具体と抽象~

 お久しぶりに、小学校社会科の記事です。
 
 中学校でいえば地理的分野につながる学習…自分たちの都道府県や日本の国土等の特色を捉えることが目標となる学習ですが、子どもが地図などの資料から読み取ろうにも、イマイチ地域の特色を捉えていない…といったことがあるかと思います。

 今回は、小学校中学年から段階を整理し、どのように具体から抽象化されていくか、を少し見ていきたいと思います。


1 小学校社会科における地理的環境と人々の生活


 まず、前提として、小学校の社会科は「総合社会科」ですので、地理だけに区切るわけではなく、そこにおける人々の暮らしや歴史等がセットになっています。
 その中で、主として空間の広がりを軸に、人々の営み…産業や文化等を学んでいく、という感じです。

 そのような学習の中心となるのが、「どのような場所なのか?」という、地域の特色を捉える学習です。
 何年生でどのような場所について学習するのか、簡単に整理します。


3年生…身近な地域 や 市区町村の様子
4年生…都道府県の様子
5年生…我が国の国土の様子と国民生活
6年生…グローバル化する世界と日本の役割 ※日本とのつながりの中で、世界の国々について触れる


3年生が春に学習することの多い「身近な地域」では、自分が住んでいる小学校区がどのような地域なのかを学びます。
その後、範囲を広げて、自分が住んでいる市区町村について学びます。
さらに、4年生では、自分が住んでいる都道府県
そして、5年生では、我が国の国土の様子
その後、6年生では、世界の国々

と、並べてみると、なんだか整然とされており、段階的に学べるように配列されているように見受けられます。
(「系統性」と言われるものですね)


2 どのあたりから難しくなる?

 

 担当されている小学校教員の方々から、4年生・5年生の社会は指導が難しいという声をちらほら聞きます。

 そもそも、社会の指導は、他教科に比べあまり得意ではないとおっしゃる方が多いです(小学校は基本全科)
 とはいっても、皆さん教員免許はお持ちですし、学習指導要領の目標に沿っていますので、基本的には問題ありません。他に得意な教科や分野がある中で、社会科を得意とされる方が比較的少ない、といったイメージです。

 では、この難しさはどこから来るかというと、おそらく子どもの難しさと似ているのではないかと思います。
 3年生の春、自分が住んでいる小学校区の学習では、広い学区でない限り、おおよその全体像を把握できるでしょう。もちろん、学区内でも行ったことのない場所はあるかと思いますが、授業の中で「学区探検」「学区調査」といった名前で、ちょっとした見学が設定されることが多いです。
 小学校区に関しては、実際に出かけて、実際を見ることで知らない部分を補うことができます。


 しかしながら、この「実際に」ができなくなってきます。
 4年生の内容に着目すると、自分が住んでいる都道府県を扱うわけですが、よほどその都道府県が好きな人でない限り、例えば県内すべての市区町村を回った、という人はいないでしょう。
 しかも、県内全てを見学することも現実的ではありませんし、


 つまり、都道府県の学習をするあたりになると、子どもは「実際に見たわけではない地域の特色を捉える」学習をすることになります。


3 実は、3年生のあたりから「わからない」が潜在している?
 

 もしかしたらお気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが、場合によっては「自分が住んでいる市区町村」も、「実際に見たわけではない地域の特色を捉える」ことになります
 
 これは、市区町村の広さや地理的環境にもよるのですが、
例えば、子どもにとって行きやすい広さや交通環境の市区町村であれば、「実際に出かけた」「実際に見た」自分が住んでいる市区町村を学習することになります。
 しかしながら…多くの場合はこちらですが、広かったり、子どもだけでは全域の把握が難しかったりする市区町村の場合、子どもはやはり「実際に見たわけではない地域の特色を捉える」ことになります


 ただ、自分が住んでいる市区町村の場合、行ったことはなくても、「なんとなく特産品や特色は知っている」ことも多いため、断片的な既有知識を基にして、学習をしていく子どもが多いように思います。

 そうなると、実はあまり「わかった」という実感のないまま、なんとなく市区町村の特徴を捉えることになるかもしれません。

 実は、3年生のあたりでも、「実際に見たわけではない地域」を学ぶことから、「わからない」が生まれている可能性はあります。



4 地図や資料等から学ぶ必要性

 

 しかしながら、そうはいっても学年が上がるにつれ、実際に行っていない、見ていない地域をもとに学習することになります。

 そうなると、必然的に地図や資料等が重要となってきます。

 実際に見聞きした情報が一次情報、資料等から得る情報が二次情報と言われるのは、まさにこのような場合かと思います。

 実際に行った、見たという、とても具体的な情報から
 地図や資料等から情報を得るという、少し抽象化された情報へのステップアップが、子どもの「わからない」の原因かもしれません。


5 おわりに


いかがでしたか?

このように並べてみると、内容的には段階を追っていても、その段階によって主に活用する情報が異なることに気づかされます。

最後までお読みいただきありがとうございました^^


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集