東京外国語大学2021年度第1問・問8についてのメモ

主題:産業革命がすすむなかで紡績業がどのように発展し,さらに中国に進出していったのか
条件:5つの指定語句を使用する(紡績機械,女工,綿花,大戦景気,在華紡)


史料・設問には手がかりがなく,知識だけで構成することが必要である。


時期を区切りながら説明したい。
①1880年代後半,機械化が進展した時期
②1890年代,綿糸の輸入額をまず国産額が,続いて輸出額が上回った時期
③第1次世界大戦期,綿織物の輸出増加にともなって国産額が増加した時期
④(第1次世界大戦期から)1920年代,紡績会社が中国に工場(在華紡)を建設する時期
 在華紡が増加した背景を説明することが最も難しい。中国での紡績業の発展にともなって中国向け綿糸輸出が減退したことなどが背景だが,高校教科書ではあまり説明されていない。それゆえ,時期だけを明示して在華紡の増加を指摘しておけばよい。


解答例
紡績業は1880年代後半以降,民間企業が勃興した。蒸気機関を採用した紡績機械をイギリスやアメリカから,原料綿花をイギリス領インドなどから輸入し,出稼ぎにきた貧農の子女を女工として雇い,安い賃金で昼夜二交代で働かせた。その結果,国内生産が増大し,1890年代には輸入綿糸を抑えて国内市場を回復した。当初は国内の綿織物業者に綿糸を供給していたが,日清戦争後には中国への輸出が増加し,輸出産業へと転換した。第1次世界大戦が勃発すると輸出が急増して大戦景気が生じ,ヨーロッパ諸国のアジア市場からの後退にともなって中国向けの綿織物の輸出が急増したため,紡績業も成長した。ところが,中国でもヨーロッパ諸国の後退は好景気をもたらし,民族資本による紡績業が発展して品質も向上した。そのため,中国向けの綿糸輸出は伸び悩み,紡績会社のなかには中国に投資し,上海や青島などに在華紡と呼ばれる紡績工場を設立・経営する動きが広がった。
※太字が下線部


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