2023年度の阪大日本史について

2023年度の阪大日本史について簡単にコメントしておきます。
詳しくは,
つかはらの日本史工房をごらん下さい。

1.摂関政治の特徴

定番の出題でした。
平安時代前期までの政治と比べれば,摂政・関白が政治を主導した点が特徴であり,平安時代後期以降の院政と比べれば,天皇との外戚関係が権力基盤である点が特徴である。
条件として「太政官機構にも触れ」ることが求められており,天皇・太政官が国政を行うというしくみと摂政・関白との関係をうまく表現できるかどうかがポイントだが,最低限,摂関政治のもとでも太政官の公卿による協議に基づいて国政が運営されていた点が書ければよいだろう。

2.室町幕府の収入源とその特徴

収入源について用語とその内容を説明するとともに,その「特徴」を説明することが求められている。土地からの収益を主とする鎌倉幕府と比べ,流通や金融,貿易に注目した課税が中心であったことが指摘できればよい。なお,それらが必要に応じた臨時の課税であったことが説明できると,よりよい。

3.糸割符制度

制度の内容にも触れつつ理由を説明することが求められているが,字数が不足ぎみだった受験生が多かったのではないか。理由が求められたときは目的とともに背景に注目すればよいことを念頭におきたい。
問題は,背景をどこまでのスパンのもとで書くか。
16世紀半ばに日明勘合貿易が断絶して以降,ポルトガル船が日明間の中継貿易に従事していたこと,そのことがポルトガル船が生糸貿易で多大な利益をあげる基礎になっていたことを説明すれば,字数も確保でき,うまく構成できる。

4.明治期における新聞の展開

テーマが難しい。特に新聞のあり方そのものに注目すると,1870年代=金属活版印刷の発達→日刊紙など新聞が多数発行される,1890年代=輪転印刷機の普及→大部数を発行する商業新聞が登場する,という技術的な背景を軸に時期区分できれば最もよいのだろうが,この視点は山川『新日本史B』(新課程ではなくなり,一般書で販売されるようになった)にしかなく,一般に対処できる知識ではない。
政治との関わりにもふれるという条件を念頭におくと,自由民権運動の高まり,甲申事変で朝鮮情勢の緊張,井上馨外相による条約改正交渉,そして日露戦争をめぐる世論などに即して具体的な新聞名を列挙する,という対応が考えられる。


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