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#25 僕はここで生き残る。


生きた心地のしない1週間が、ようやく終わった。

アウェー、ヴィエンチャンでの2連戦。
拠点のルアンパバーンから、中国ラオス鉄道で揺られること3時間。
すっかり景色は変わって、視界には高い建物。

宿泊する協会管轄のドミトリーは、お世辞にも整っているとは言えなかった。
リーグ戦を翌日に控える選手たちが、100%以上の力を出す準備をするための、相応の環境とは程遠い。

クラブに懇願し別でゲストハウスに宿泊。
これが承諾されたと同時に、また結果への厳しい目が追加された。

僕が生きる世界において、これは舞台裏としてカウントされる。
納得のいかない過程なんて、後々ネタになれば結果オーライみたいな感覚。
求められてるのは結果だから、それらは数字に反映はされない。

それに匹敵する特大のネタは翌日に訪れたんだけど、まさかの全外国人選手の登録不備。
キックオフ3時間前のミーティングで、知らされた欠場。

予想外だった、くそ!!!
なんてわけもなくて、それなりに想定内の範疇だった。

色々と危ういあれこれは聞かされていたし、何があっても驚かないチーム状況なのも否定はしない。

ただ、直前練習まで滞りなく進めていただけに、確かに期待を持って準備を進めていた。

試合の日は、決まって多めに摂取するビタミンたち。
身体の中でどう消化すればいいのか。
きっとビタミン自身も困惑してたと思う。笑

複雑な面持ちで観戦した開幕戦。
僕が出ていない試合で、味方に良いプレーをされたら都合が悪い。
僕が満たされていない状況で、人の幸せを素直に喜べるほどできた人間でない。

一方で、クラブの先行きを考えた時、勝ち点を1つでも重ねた方がいいに決まってる。
このクラブ2年目、という勝手に背負った期待とか責任みたいなのも相まって、もうわけ分からん。

サッカーになり切らない開幕戦を観て、コントロールできない問題に左右されることが、いかに、いかに腹立たしいか。

0-2の敗戦。

出れていればとタラレバを並べたけど、僕の中では、何より僕自身を安心させたかった。
別に居場所を失ったわけではないと。

中3日で訪れる次節までには、僕らの登録は間に合う。
そう言われていた矢先、翌日の練習。

スタメン組に、僕の名前はなかった。
明らかにスカッドを組んだ中で、自分がその真ん中にいないという事実。
これには発狂したくなったし、心中では発狂してた。

マイナスな感情や姿勢を、あえて出さないようにしている人生。
非力な自分を呪いたくなる瞬間なんて、何千回と経験してきた。

選手は都合が良いし、感情が交差して正常な判断はできない。
あくまでも決めるのは監督であって、評価するのは自分じゃないからね。

分かってはいるものの、俺の方が…なんて童心みたいなのはいつまでも存在する。
鋭く尖った矛先は、めちゃくちゃ他人に向けたい。めちゃくちゃね。

それでも、震える手でしっかり握って、鍬の先を自分の首元に向けた。
お前が圧倒的じゃないからだよ。
無理やりこじ付けるようにだけど、そう自分にも言った。

ローカルの選手たちより、それなりに高い額のお金をもらいながら、クラブを助ける選手として呼ばれた。
VISAや家が支給され、バイクを貸してもらい、こんなにも分かりやすい差別化をされた選手が、試合に出れない様。

それを想像したら恐ろしさ極まりなかった。

本当に、本当にストレスだった。

試合に出てナンボ。
プレーを見せて価値を見出すサッカー選手。
試合に出れる、出れない不安というのは、精神的に圧倒的な負担がかかる。

こういう時間っていうのは、進みが究極に遅く感じる。
絶対誰かが遅めてるでしょ、ってくらい。

何かを理解するにはエゴが伴うと思った。
だから、把握しようって思った。
誰かと何かを成し遂げたい、何かに向かおうとする時、ある程度の割り切りも必要。

この割り切りというのは、覚悟にも言い換えられる気がする。

いつ、どんなリスクや障壁があれど、全てを受け入れて進むこと、やり続けること。

ここまでやってダメなら、今は仕方ない。
何時も自分を使い切って、そう思えるかに尽きる感じがする。

そうやって2節までの日を過ごしてたら、登録の問題もクリアになって、スタメンでフル出場。
昨年の2位相手に4-0の勝利。

最高に興奮した。
タフだったけど、戦った、走り切った。

25歳にもなって、男同士が汗まみれで抱き合う世界線が、他であれば教えて欲しい。


ってなところで、さっきルアンパバーンに帰って来た。
今日のオフが変更になって、16時から練習らしい。

またスパイスがふんだんに使われ、これからどんな味がする生活なのかな。

それでもオフはくれ。

渡邉 宰

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