#21 デビュー
やまびこ63号。
東北新幹線?って言うの?
最大限格好を付けて、新幹線でパソコンをカタカタと。
行き先は郡山。
今日は僕の講師デビュー。
始まりは去年だったと思う。
僕を慕ってくれているゼミの後輩がいて、彼が持ちかけてくれた話。
大学院生の傍ら、母校で数コマの授業を請け負っている彼の、新しい試みを聞かせてもらった。
これこれこうで、ああでもない、こうでもないと、何かに追われているかの如く、体温の乗った言葉を次々と投げかけてくれました。
そして、頼みたいことがあると。
「高校生に向けて、海外での経験を話して欲しい。」
きっと振り絞った言葉だっただろうな。
必要以上に、有り余るくらいのリスペクトを僕に送ってくれているから、恐れ多いとすら感じてるように見えた。
もちろん、二つ返事で答えた。
人前で話すのは得意。
大学時代、経済産業省が主催している、プレゼンを主体としたコンペに出場し、全国で優秀賞まで上り詰めた。
ゴリゴリの練習に練習を重ね、TEDばりに歩くプレゼンを作り上げた。
用意周到で臨んだそれは、たしかな手応えしかなかった。
あの時は見せるプレゼンを意識した中で、極めて演技に近しいものだった。
舞台俳優になった気分すらあった。
今回、あの再来を起こしたい気持ちと、最大限の親近感を得て欲しい気持ちとで、長いこと格闘した。
ハイブリッドな感じで落ち着くかと思ったけど、今の僕は後者を求めてることに気付いた。
僕は今、ワクワクしてる。
数時間後、どんな人と出会い、どんな時間を共有できるのか。
楽しみで仕方ない。
車窓に映る景色は、どんどんと知らない、緑が多い場所になってきた。
さあ、僕のデビュー戦だ。
渡邉 宰