#15 遊び人
12年前。
予算の5000円を握りしめ、お揃いの時計を買うために、新宿に繰り出した。
数少ない午後オフを使ってまで、なぜ彼らと会おうとしたのか。
それは未だに謎。
これが「遊び人」結成の経緯だ。
アイドルユニット並みの熱量で話してるけど、たかが中1の同じクラス、仲良し3人組。
そのたかが3人組が、僕にとっては心強かったりする。
埼玉栄という、圧倒的キチガイ集団の中で出会ってしまったわけで、そりゃ当然個性派。
認めざるを得ない社会不適合感。
性格の矢印はそれぞれ違う方向を向いてるし、違う出会い方だったら、一瞬たりとも重なってない自信がある。
そんな僕らの共通点と言えば、競技者と二足歩行の2つくらい。
バドミントン、陸上を主戦場としてきた彼らは、埼玉を代表する素晴らしい選手たち。
選手としてリスペクトなんてのは当たり前だった。
現在は一線を退いた彼らだけど、そのリスペクトが0になんてならない。
中高時代。
それぞれの誕生日は、必ずご飯を食べに行き、プレゼントを渡し合った。
制服で、オレンジジャージで、Babolatのラケットバッグを背負って、どれだけ遅くなっても、遠くても、駆け付けた。
毎年でなかったとしても、クリスマスだって、年越しだって集まった。
りんごのスパークリングジュースなんて持って来て、乾杯なんてしちゃって。
彼女より友達を優先しちゃうような僕らだから、大して長い恋愛にならない。
びっくりするほど優先度が高い。怖くなるくらい。
翌日の予定とか、かかる時間、費用を差し置いて、彼らのためならリソースを割ける。
こういう言葉ってのは、恋人にだけしか使わないと思ってたけど、運命の人みたいな類なのかも。腐れ縁、みたいな。
この前半年ぶりくらいに会ったんだけど、
これまで記したことを、そのまんまそっくり、一字一句思った。
そして、毎回話題になる。
出会い方が違ったら…の件。
彼らが良い…と言うより、彼らでも良い。
から始まった関係。
そこから好んで関わるようになり、いつしか彼らであれば何でも良くなった。
そうしたのは、出会い方や人間性、3人のバランスなんてのは二の次、三の次であって、これまで過ごした時間だと思う。
透明のショーケースにベタ付き、
同じ時計を選んだあの日から、
同じ時間を共有できてる今、とても幸せ。
掴みと結びの回収が満足にいき、友達自慢もできたところで。
それでは。
渡邉 宰